50話 『錬金術師の奇才者』
「お前らこんなことをしてただで済むと思うなよ!」
「キッキッキー! 何のことだかさっぱりだなあ?」
‶ザ・ワイルド〟のボスと思われる人物は人を馬鹿にしているような感じでとぼけ始める。
「バカ言え! お前らのせいでどれだけの財産魔獣が絶滅した? ゴーレムもまた体が再生できるように、核だけは残しとかなければならないっていう法律があるっていうのに、お前らはゴーレムの核も売り飛ばしている!」
「キーキッキッキー! ゴーレムの核が一番売れるだろ! 生きのいいゴーレムの核ほど強ぇ武器が作れるんだぜ!」
「お前らー!」
颯太は自分たちの利益のことだけしか考えていない‶ザ・ワイルド〟に怒りが爆発し、黒いオーラを全開にする。
「おまえら覚悟しろよ! 今の俺は最っ高に怒っている! 怒りすぎて、火傷しそうだぜ!」
「キーキッキッキー! ここにいる奴らはみんなブラックランク冒険者だ! だから少なくともブロンズランク冒険者以上の実力を持っている!」
ボスはその後両手を大きく広げ、部下に命令を下す。
「さあ! お前達、‶龍斬り〟を叩き潰せ!」
命令を受けた部下達は声をそろえて意気込み、颯太に襲い掛かる。
しかし颯太はそんな雑魚共の襲撃など、恐るるに足らないからか、涼しい顔をしながら黒刀を構えた。
「雑魚が何体来ようと関係ねぇ! くらえ! ‶黒鴉旋風〟!!!」
颯太は黒刀を振って巨大な旋風を巻き起こす。その旋風に呑み込まれた部下達は、洗濯機のようにグルグルと掻き回されながら切り刻まれていく。
そしてあっという間に‶ザ・ワイルド〟はボスただ1人になってしまった。
「どうだ? お前もあいつらと同じようにされたいか?」
「キーキッキッキー! あいつらは所詮ただの捨て駒! お前なんか俺一人で充分なんだよ!」
ボスはそう言い、颯太の方へと走っていく。
「素手で俺に挑もうってか? やめとけ、血を見るぞ! お前のな!」
「誰が素手で戦うって言った? 俺の武器は俺の体全部だ!」
ボスはそう言うと、自分の手が急にミスリルのドリルになり、そのまま颯太を突き刺そうとする。
颯太はボスの手が変化したのに驚いても、避ける暇がなかったので黒刀でドリルを受け止める。
「グッ! なんだこれ!? だんだん重くなってきた!?」
ボスのドリルの回転速度が段々と速くなっていき、どんどんと颯太を押し込んでいた。
「どうだ‶龍斬り〟? ドリルなんて初めて見ただろ?」
「ああ! んなもん初めて見たぜ! だがそこまで警戒するもんでもねぇな! ‶波動旋風〟!!」
颯太は右手に力を込めて左手を自由にさせると、その手をボスの方に向ける。そして手のひらからは大きな衝撃波が発射され、ボスを凄まじい速度で吹き飛ばす。
遠くに吹っ飛ばされたボスはすぐさま受身をとりドリルを解除する。
「一体なんなんだ? お前の能力は?」
颯太は刀身をボスに向けて威嚇するも、彼は高らかに笑いながら口を開く。
「キッキッキー! 俺が何者かって? いいだろう、教えてやるよ! 俺は‶無の奇才者〟、トロンだ!」
「‶無の奇才者〟?」
「そうだ! 俺は無属性を扱う奇才者であり、その能力は‶錬金術師〟だ!」
「れ、‶錬金術師〟だと!?」
颯太はトロンの一言に驚愕して、黒いオーラが消えてしまった。