05話 『風の奇才者と雷の奇才者』
「ハーーーーーーーー!」
リーナの魔力がどんどん膨れ上がり、その大きさは観客席の方まで伝わってきた。
「すごいっ! これが本当に一年生なの?」
ルージュが顔を伏せながら言った。
エリーサもルージュと同じ体勢で自慢げに、
「すごいです! リーナ様。これならあの男も一瞬で片付けることができるぞ!」
「さすがマリアネス一族じゃな! 王家の血筋は伊達じゃないのう」
観客席の中で1人、リーナの魔力に涼しい顔で耐えている者がいた。レージス学長である。
颯太は膨張する魔力を感じ取ってニッと笑った。
「すげぇ魔力だ!」
「じゃあ私から行くぞ! 〝サンダーランス〟‼」
リーナは自分の身長より少し短い槍を突いた。そしたら槍頭から電気を帯びて、颯太に向かって槍型の電撃が発射された。
「むっ、無詠唱魔法ですって!」
ルージュは目を丸くして言った。
普通の魔導士は最初に詠唱を唱えてから魔法を発動する。しかし、凄腕の魔導士やベテランの魔導士なんかは無詠唱で魔法を唱えることができる。
「普通の魔導士が無詠唱魔法を使えるようになるには何十年とその魔法を唱えないと発動できんのじゃ。」
「じゃあなぜリーナ様は無詠唱で魔法が使えるのでしょうか?」
レージス学長が無詠唱魔法のことを説明していたら、キャシーが質問をしてきた。
「彼女はおそらく……‶雷の奇才者〟じゃのう」
「「「「きっ、〝奇才者〟!?」」」」
4人が一斉に動揺した。
「まずこの世界には火、水、土、風、雷、氷、光、闇属性の八つの自然属性と無属性、九つの属性の魔法が存在しているのは存じておるじゃろ? 普通の魔導士は生まれつきの適応属性の魔法を詠唱することによって発動できるじゃろ?」
「そうね、人間は皆生まれつき一つの属性の魔法しか使うことができない!」
レージスの質問にエリーサは冷静に答えた。
「それと中には自然属性の魔法と無属性の魔法を両方使える天才もいるって聞いたことはある」
「確かにその通りじゃな! ばってん、奇才者というのはその生まれつき使える属性の魔法を全て無詠唱で発動することができるんじゃ! それだけじゃなく、奇才者はその属性の自分だけにしか使うことのできない、オリジナルの魔法を生み出すことができるんじゃ。そして奇才者は1000人に1人生まれるか生まれないかぐらいの希少な人間なんじゃ!」
「「「「!?」」」」
レージスの言葉に4人は驚愕した。
「あのお嬢さんが使えるかどうか分からんが奇才者はもう一つ特別な力を持っておる……」
「特別な力?」
レージスの独り言にキャシーは首を傾げた。
――バリバリバリバリバリバリーーーーー‼‼
槍型の電撃が颯太に迫ってきているが、颯太は不敵な笑みを浮かべながら、足元に力を入れ始めた。颯太の足元から旋風が巻き起こっている。
「いくぜ……〝鎌鼬〟‼」
颯太は足を振り上げて、風の斬撃を飛ばした。
そして風の斬撃は〝サンダーランス〟と激突して、大爆発を起こした。
「まさかあの男も奇才者なの!」
「そのようじゃのう」
レージス学長は驚くエリーサに冷静に対応した。
「その技確かにツエーが、技を発動させるのに時間がかかりすぎてるなあ。そんなじゃあ魔獣が相手だとすぐにやられてしまうぞ‼」
颯太が指摘するとリーナは頭に来たのか、顔をしかめて舌打ちをした。
「うるさい! そんなこと、私に勝ってから言いなさい!」
リーナはそう言うと颯太に向けて、連続突きをしかけてきた。
颯太はそれをすべて素手でガードしているが、颯太の腕には傷一つついていない。
「なんであんた、私の攻撃を受けて平然としているの!?」
「俺の筋肉は、鉄並みに固いからな!」
「この化け物めーー‼」
「いや、本当は無属性魔法、〝ハードボディ〟を発動して、俺の体を金属並みに固くしてんだよ!」
颯太の言葉に、リーナはこれ以上攻撃しても意味がないと思い、連続突きをするのをやめた。
「こうなったらあれを使うしかないわね」
「何をだ?」
颯太はリーナの発言に首をかしげた。
「雷鳴よ、鳴り響け‼‼ 〝魔導神装〟‼‼‼‼」
彼女の真上に雷雲が現れた。そしてリーナの体が放電し始めて姿を変えた。