40話 『残党共の悪巧み』
翌日になっても颯太は目を覚まさなかった。
だが医師たちの話によれば、2日くらい寝ておけば魔力は回復するそうだ。
「今日の訓練は昨日の魔獣大量発生に出現したコカトリスの部下の残党狩りを行います! 数も少ないし平均魔獣危険度も7ぐらいで高くないのでそこまで危険じゃない訓練ですが、くれぐれも油断のないようにしてください‼」
ソマリの指示にクラスの全員が返事した。
「しっかしまあ随分と派手に戦ったもんだなあ」
トムの言葉にポトフもうんうんと頷いている。
颯太とコカリスクの戦いによって合宿場の敷地は悲惨な状態になっていた。あれから1日もたっているはずなのだが、未だに颯太の黒い力が残っている。
「リーナ、あの後コカリスクの残骸はどうなったんだ?」
ロゼの質問に全員がリーナの方を振り向いた。コカリスクとの戦いを現場で見ていた学生はソマリとリーナ、敦だけだった。
「ああ、あれは王国軍に回収されたよ。魔獣界の魔獣はなかなか興味深いって研究機関の連中が言ってたぞ!」
リーナの答えに全員が納得した。
「でも魔獣界の魔獣の残骸を回収することが出来たのは今回が初めてらしいぞ! ミノタウロスの残骸は決闘の翌日になくなっていたらしいからな!」
リーナの言葉にトムは固まった。エリーサも何かに気づき、顔をしかめさせた。
「おい、それはちょっとまずいかもしれないぞ!」
「ん、どういうことだ?」
トムの発言にリーナは首を傾げた。そしてエリーサが代弁して説明を始めた。
「これは私の推測なのですが、魔獣界の魔獣たちの死体に何か特別なものがあると仮定して、それが敵のもとに渡ったら……もしリーナ様がやつの仲間だったとしたらどうしますか?」
「そりゃあ全力で阻止するぞ」
「その通りです! これが本当のことだとすれば魔獣界の魔獣の残党共のとる行動は……」
「「「「王国軍の護送の阻止‼‼」」」」
エリーサの言葉に全員が理解し意見が一致した。
「だとしたら王国軍が危ない!」
「王国軍の1部隊の戦力じゃあいつらにかなわない!」
ロゼとキャシーの言葉に全員が頷いて行動に出た。
コカリスクの残骸を運んでいる護送用の馬車を遠くから狙っている連中がいた。
「ケッケッケー! やつらの戦力だったら俺達でもなんとかなるな!」
「ああ! さっさとやつらを抹殺してコカトリス様の死体の処分をしなくちゃな!」
連中を仕切っている2体の魔獣が部下たちに指揮を執って、数体で馬車を襲わせた。
すると、その数体の魔獣は突然の雷撃により、一瞬にして感電し焼け焦げた。
「やっぱりここにいた! 覚悟しなさい、残党ども‼」
馬車の前に立ちはだかるリーナに魔獣たちは注目する。
「ウケケ!? 俺たちの作戦がばれた!?」
「やべーぜ、どうする? 結構腕の立つやつもいるぜ!」
2体の残党のリーダーっぽい魔獣が額に汗を流していた。
「簡単なことだろ!? この中には‶王の騎士団〟や‶プラチナランク冒険者〟のようながいないんだぞ! 俺たちで倒すに決まってるだろ!」
2体の魔獣の後ろから巨大な魔獣が現れた。
リーナはその強靭な角と大きな体つきに‶あの時の‶ミノタウロス〟と似た雰囲気を感じていた。
「あいつ、強いぞ!」
「でもあいつの取り巻きの2体もなかなか強いと思う」
この中では強い組のリーナとロゼが警戒しているので後の人たちにも緊張が走った。
「残党はあと何人いる?」
「ざっと見て10体くらい。そしてそいつらダースウルフよりちょっと強いくらい」
ロゼは魔獣を指しながら数えていた。
巨大魔獣はニヤニヤしながら数えているロゼに言った。
「お前ら魔獣界の魔獣の使役能力を知らないわけじゃあないよなあ?」
そして巨大魔獣は大きく息を吸い込んで雄叫びを上げた。
シュニーーーーーーーーーン‼‼
巨大魔獣の雄叫びによって、隠れていたこの世界の魔獣たちがぞろぞろとやってきた。
「さあお前らは7人、だがこっちは……200だ!」