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38話 『恩返し』

「何だあ? 俺とやろうってんのか? ただでさえコカトリスだったころの俺に勝てていなかったくせに」


 コカリスクは自分の前に立ちふさがった颯太を煽っていた。

 颯太はコカリスクの言葉に聞く耳を持たず、倒れている敦を心配していた。


「大丈夫か? 敦!」


「うるせぇ、ハァ……ハァ……お前に心配される筋合いはない!」


「そんなことを言うなよ! 俺が来なかったらお前今頃確実に死んでいたぞ!」


 颯太のその一言によって敦は激怒した。


「お前のその態度が昔から気に入らなかった! ‶大和村〟にいたころも俺はお前に1対1の勝負に勝ったことはなかった。そして俺はお前に勝つことを目標としてたくさんの魔獣を倒していった。ある日俺は魔獣の群れに戦いを挑んで負けた。俺は死を覚悟した。だがそんなときにお前が俺を助けた……屈辱だった。俺はお前に負けてさらにお前に助けられた。俺はお前に完敗してしまったんだ! いいか! これは俺に対する侮辱なんだぞ! お前のせいで俺のプライドはズタズタだ! 消えろ‼‼ 俺の前から!」


 敦は内心とてもうれしかった、颯太に助けられることが。

 ‶大和村〟にいたころも颯太に助けられたことに感謝している。

 しかし助けられたことに対して恩に着てしまうと、そこで自分の成長が止まり一生颯太の敗北者になってしまう、敦はそれを恐れていたのだ。

 そして今回も颯太が自分を助けることによって颯太も自分の巻き添えで死んでほしくないのである。


 颯太は敦のそんな思いを分かっていたのか、


「いいのか? お前、このまま死んでしまうと永遠の敗北者になるぞ! 今はまだ助けられてもいい、いつか俺を倒せばお前の勝ちになるじゃねえか! だから、()()()()‼‼‼」


 颯太の熱い説得によって敦は頭の中にあったもやもやが取れたような感覚になっていた。


「だから今は俺に助けられておけ! だが、俺はお前に負ける気は毛頭ない!」


 颯太はそう言うと、コカリスクを睨みつけた。


「話はもう終わったのか? ていうかなんでお前俺に勝った気になっているんだ? ああ!」


 コカリスクはどっかのチンピラみたいに颯太に脅しをかけた。


「くたばれ! カス野郎! ‶ビークインパクト・、マシンガン〟‼‼」


 コカリスクは颯太に向かって連続でくちばし攻撃をしかけてきた。


 颯太は‶疾風脚〟と‶風流し〟を同時に使って何とかコカリスクの攻撃をかわしている。

 受け流したくちばし攻撃が一発地面に直撃した。そしたら地面に巨大なクレーターができた。

 このまま続けても一向に当たらないと思ったコカリスクは颯太にくちばし攻撃をするように見せかけて、首を伸ばして颯太の背後に顔を合わせて‶魔獣砲〟を発射した。


「しまっ‼‼」


 ズドォーーーーーン‼‼‼


 颯太は至近距離で危険度27の‶魔獣砲〟を受けてしまった。


「コケケケケ-‼ 死んだかぁ?」


 コカリスクは‶龍斬りの雨宮〟を倒せたことで喜びを隠せていなかった。

 しかし颯太の魔力は消えていなかった。

 煙の中から、服がボロボロで腹筋バッキバキの上半身が露わになっている颯太がまるで生まれたての小鹿のようにふらふらと立っていた。


「へーよく耐えたな! だが次俺の攻撃を受けたらお前、確実に死ぬぞ!」


 さすがの颯太もこれ以上強がりを言う気力が残っていなかった。


「何か言うことがねぇのならもう死ね! じゃあな‶龍斬り〟‼‼」


 コカリスクは颯太をくちばしで思いっきり突き刺そうとすると、


「ビッグ・サンダーボルト‼‼」


 ズドォーーーーーーーン‼‼


 コカリスクの頭上に巨大な雷が落ちた。


「コケーーーー‼‼」


 コカリスクは感電して颯太にとどめを刺せなかった。

 颯太の前に赤いドレスの少女が立っていた。


「リーナ……なぜここに?」


 颯太は息切れしながら目の前に立っているリーナに聞いた。


「決まっているでしょ、あんたを助けに来たの!」


「何をしている! 早く逃げろ‼‼ こいつはまじでやばい!」


「私が時間稼ぎをする。だからその間に逃げろ!」


「バカ言え! 死ぬ気かよ! 第三王女がこんなところで死んでいいわけないだろ‼‼」


「だったら早く立ちなさいよ‼‼‼」


 リーナの言葉に颯太は固まった。


「いつまでも格好つけないでよ! 私たちを頼ってよ! どうして一人で何でも背負おうとしているの? そんなの悲しいぞ! 私たちは……仲間だろ‼」


「リ、リーナ……お前……」


「お前はいろんな人を助けてきた。だから1人くらいに恩返しされてもいいだろ?」


 ――俺は何かを失うことを恐れていた。ソロ冒険者をしていたのもそれが原因だった。

 人はみんなもろいものだと思っていた。

 でも一番もろかったのは……失うことを恐れていた俺の心だったのかもしれないな。

 俺も誰かを頼ってもよかったのかな!




「うぉぉぉぉぉーーーー‼‼‼‼」


 颯太は声を張り上げながら立ち上がった。もうこれ以上あいつを悲しませないように。


「颯太! 忘れものよ!」


 リーナはそう言うと、颯太の黒刀を颯太に投げた。


「サンキュー! リーナ!」


 颯太は黒刀をキャッチして鞘を抜いた。


「コケケケケー! 今頃立ち上がったところでお前に何ができるんだ?」


「少し黙れ」


 颯太はコカリスクの腹を思いっきり切り裂いた。

 コカリスクの腹から血しぶきが上がった。


「コケーーーーー‼‼?」


 コカリスクは腹を斬られたことにもがき苦しんでいた。


「お前によっていろいろな人たちが傷ついた。その罪は重いぞ! くそ鳥やろう‼‼」


 颯太の怒りは爆発していた。

 颯太の黒いオーラはコカリスクよりも大きく黒く輝いていた。





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