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36話 『蒼炎と王女の覚悟』

 コカトリスは颯太の攻撃を簡単にかわして細長い足で颯太を蹴り飛ばす。

 颯太は必死にガードしようとするのだが、間に合わず何回も攻撃を受けてしまう。


「くそっ! あの速度に加えてあの攻撃力、このまま戦いが続いたら確実に俺は負ける!」


 颯太は背中に背負っていた黒刀がどれだけ大事だったのかやっとわかったようだ。今までの敵は黒刀がなくても問題ない敵ばかりだったのにコカトリスは黒刀がないと絶対に勝てない敵だ。


「コケケケケ―! そろそろ楽にしてやるよ! ‶ビークインパクト〟!!」


 コカトリスはくちばしを光らせて首を10メートルぐらい伸ばして颯太をくちばしで突き刺そうとした。

 颯太はこれ以上攻撃を受けるのはまずいと思い、


「‶風流し〟!!」


 颯太はコカトリスのくちばし攻撃を風で受け流した。


「これで終わりだと思うなよ!! ‶波動旋風〟!!!!」


 さらに颯太は‶疾風脚〟を使ってコカトリスに一気に詰め寄り最大パワーの旋風を巻き起こしてコカトリスを天高く吹っ飛ばした。

 波動旋風はただ相手を吹き飛ばすだけの技ではなく、至近距離で発動させると強い衝撃波を生み出して10メートルを超えるような巨大な魔獣でも思いっきり吹っ飛ばすことが出来る。


「コケー!! い、一体なんだー!?」


 コカトリスは何故自分が高く吹っ飛ばされたのかわかっていない感じだ。

 しかしコカトリスはニヤッと笑って羽を広げて体勢を立て直した。


「そ、空を飛んでいる!?」


 颯太はコカトリスは鶏がベースの魔獣だから空は飛べないと思っていた。


「コケケケケケー! さっきのは結構効いたぜー!まあ死ぬほどてもないんだかな!」


「効いていない!? 今のはミノタウロスくらいなら一撃で倒せる威力だぞ!」


 颯太はコカトリスの余裕の表情を見て、打つ手がないかと思った。


「コケケ、じゃあ今度はこっちの番かな?」





 ――敦の炎の攻撃は全くバジリスクには通じていなかった。


「俺の攻撃を受けても平気な顔しやがって! ムカつくぜ!」


 敦の炎の攻撃をバジリスクは受けてバジリスクの体は焦げるのだが、バジリスクはすぐに‶無限脱皮〟をして焦げた皮を脱ぎ捨てて回復をする。


「シュルルルルルル! お前がどんなに俺を焼こうが俺はすぐに脱皮をして回復をする。それと俺は元々熱には強いんだよ」


 バジリスクはニヤニヤしながら敦の体を自分の尻尾で巻き付けていた。


「くそ! だが、この距離での攻撃はさすがに効くだろ? ‶炎天滅却砲〟‼‼」


 敦がそう言って両手から火球を飛ばそうとしたのだが、バジリスクは敦をとらえていた尻尾を振り回して敦を地面に叩きつけた。


「ガハッ!?」


 敦は地面に叩きつけられた衝撃で‶炎天滅却砲〟は不発に終わった。

 地面に叩きつけられた敦はもうボロボロで立っていられるのもやっとの状態だった。


「ハァ……ハァ……まだか? あいつの連絡は!」


 敦はバジリスクが現れる前にソマリに電話で‶魔導神装〟の許可をもらうように頼んでいた。

 ‶王の騎士団〟の‶魔導神装〟はあまりにも強力なため、国王からの許可をもらわないと発動してはいけないという約束を結ばれている。

 だから敦は安易に魔導神装ができないのだ。


 プルプルプル……


 敦はポケットから鳴り響く音に気がついて即座にその機械を取り出した。


「――敦だ……‶魔導神装〟の許可が下りた!? よっしゃー!」


 敦はそう言うと、礼も言わずに電話を切って魔力を上げ始めた。


「シュルルルルルル! 何か俺を倒す秘策でも残ってんのか? だがわざわざ待っておく義理もないよなぁ?」


 バジリスクはそう言い自分の尻尾に猛毒をまとわせて、敦に振りかざしたその時……


「蒼炎よ熱く燃えろ! ‶魔導神装〟‼‼」


 敦の体から青い炎が燃え上がって、バジリスクの攻撃をはじいた。

 攻撃をはじかれたバジリスクは変わり果てた敦の姿に驚いて口を開けていた。

 敦の髪の毛は青い炎に変化していて、腕や足も青い炎が常に出ていた。


「シュルルッ!? まさかそれがお前の魔導神装なのか?」


 バジリスクが恐る恐る敦に聞くと、


「そうだ! この姿になった俺はお前程度じゃあ手も足も出ない!」


「ほーざーけーーー‼‼ ‶魔獣砲〟‼‼」


 バジリスクは敦の挑発に乗りぶちぎれて口を開いて青白い閃光を発射した。

 敦は落ち着いた表情で青白い閃光が接近してくるのを見ていた。


「‶蒼炎天滅却砲〟」


 敦は右手を青白い閃光に向けて青い巨大な火球を生成して発射した。そして青白い閃光と青い火球は衝突して高温の熱を放出した。

 しかし青い火球は青白い閃光の熱を吸収して巨大化してく。


「俺の蒼炎はこの世界に存在するあらゆる熱を吸収してでかくなる。少しでも熱を持っている魔法は魔力ごと全て吸収してしまう!」


 敦の言葉を聞いたバジリスクは青白い閃光を放つのをやめて急いで地面に潜って攻撃を回避した。

 敦はバジリスクを見失ってしまった。しかしバジリスクが地面の中に潜んでいることはわかっていた。


(おそらく奴は俺の魔力を感じて俺の真下から攻撃を仕掛けるのだろう)


 敦はそう思いバジリスクの攻撃の仕方を予想して真下に注意を払っていた。


(シュルルルルルル-! やつは俺が真下から襲うとはわからないだろう。だから真下から毒の牙で噛みついて毒殺してやる!)


 敦が自分の立っている足元を警戒していると、案の定そこからバジリスクが現れてバジリスクの噛みつく攻撃を敦はいとも簡単にかわした。


「かわしただと!?」


「考えが甘いんだよ! 馬鹿野郎!」


 かわされたことに驚いているバジリスクに敦は勝ち誇った顔で言って、飛びあがったバジリスクに狙いを定めて、拳を握り締めた。


「覚悟しな、化け物‼ くらえ、‶蒼炎天鳳凰拳〟‼‼」


 敦は拳から巨大な青い火の鳥が飛んできた。青い火の鳥は魔獣の群れで使った‶炎天鳳凰拳〟の火の鳥とは比べ物にならないくらいの大きさだった。


 ボガーーーーーーーーーン‼‼‼


 空中に飛んでいたバジリスクは何もできずに火の鳥に直撃してしまい火の鳥は大爆発を起こした。

 黒い煙の中から、黒焦げのバジリスクが降ってきた。

 そしてバジリスクから魔力を感じることはなかった。





 旅館の中で颯太とコカトリスの戦いを見ていたリーナは


「あの魔獣……とんでもなく魔力が高い‼‼」


 と言って颯太を心配していた。


「颯太をあそこまで追い詰める魔獣は初めて見た。でもなんで颯太はあの黒い力を使わないの?」


 リーナは颯太が黒い力を使っていないことに疑問に感じた。


「確かに体に負担がかかる技であっても、命の危機に瀕したら絶対に使うはずだ。でもなんであいつは使わないの?」


 リーナは颯太の行動が全く理解できなくて頭を悩ませていたら、


「まさか、あいつ!」


と言って颯太の部屋に直行した。

 リーナが颯太の部屋に来ると、リーナは思わずズッコケた。


「バカァーーーー‼‼ 何で持って行ってないのよ! あいつは自分の力に過信でもしているの? それとも大事な場面で忘れ物をするただの馬鹿なの? いや絶対にただの馬鹿だ~‼‼」


 リーナは頭を抱えて自問自答しながら叫んでいた。


(このままだと颯太が死んでしまう……私はいつもあいつに助けられてばっかりだ。だから……)


 リーナはしばらく思い悩んだ後、何かを決意した顔で颯太の刀を持って旅館を飛び出した。

 旅館を出て森に入ろうとするリーナに、


「どこに行く? 待ちなさい!」


とフリックが呼び止めた。


「急いでいるんです先生!ここを通してください‼」


 頭を下げて懇願するリーナに、


「颯太君のところへ行くんでしょ? だめだ! 危険すぎる!」


とフリックは厳しい言葉で否定した。


「彼に大事な刀を渡しに行くんです! これがないと彼が死んじゃう!」


「じゃあ僕が行く! ‶王の騎士団〟として君を危険な目には合わせたくはない!」


 フリックはそう言って刀を渡すように手を差し出した。しかし……


「それじゃあダメなんです‼‼」


 リーナが泣きながら訴えた。


「それじゃあダメなんです。私はいっつもあいつに助けられてばっかりです。……昔、お父様に言われたんです。人に助けられたら恩返しをするんだと、そしてやらないで後悔するよりやって後悔しろと、それが王族としての心がけだと。もし私がこの刀をフリック先生に渡してしまったら私は……あいつに顔向けできない! そしてお父様にも顔向けできない‼‼ ……国民にも顔向けできない‼‼‼」


 リーナの訴えにフリックの体に電撃が走った。

 フリックは‶王の騎士団〟でり、同時に教師でもある。‶王の騎士団〟として王女を守らないといけない。しかし教師として生徒の成長を見守らなければならない。そんなフリックにとってこの選択は非常に難しい。


 葛藤の末に出したフリックの結論は……


輝く星(トゥインクル・)一つ(レーザー)


 フリックは剣を抜いて、剣先から巨大な光線を発射して深い森に道を作った。


「これで颯太君のところまで一直線で行けるよ」


「先生……」


 感激するリーナに、


「ただし、ちゃんと()()()()()()()()()()()()()()。でなければ私はあなたの覚悟を認めません!」


とフリックは忠告した。


 その言葉を聞いたリーナは真剣なまなざしでフリックを見つめて、


「はい‼‼‼」


と返事をして森の中を走っていった。


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