32話 『王の騎士団』
「何事だ!?」
リーナたちが爆発音を聞いて颯太のもとへ駆けつけてきたのだが、リーナたちは驚きのあまり声が出なかった。
颯太と敦の周りは焼け野原になっていたのだ。
「これはひどい! 颯太、何があったんだ?」
とリーナが颯太に聞くと、
「手を出すなよ! これは俺とあいつの真剣勝負なんだからな!」
と颯太がきつい言葉で返した。
颯太と敦は互いににらみ合って、
「「いくぞ‼‼」」
と言って両者ともに攻撃を仕掛けた。
颯太の蹴りを敦は腕でガードをして、敦の膝蹴りを颯太は手で押さえた。
その後も両者の攻防は続くのだが、颯太も敦も自分の攻撃がなかなか決まらない。
この2人の戦いを見ていたロゼは、
「あの2人、戦い方が似ていると思わない?」
とリーナに聞いてきた。
「確かに言われてみれば似ているかも……、でもなんでだ?」
リーナが首をかしげていると、旅館の中からソマリとフリックがやってきた。
「あれは‶大和流派〟と言ってね‶大和村〟で伝わる武道流派よ。でもあれは‶大和村〟に長い間暮らしておかないと身につけられない幻の流派ともいわれているの。だから少なくともあの2人はそこの出身ね!」
とソマリがリーナとロゼに説明をすると、
「‶大和村〟!? それってルビナンス王国の隣にある島‶魔獣の島〟の中にある村のことですよね? そこは確か凶悪な魔獣がうじゃうじゃといて誰も近づけない恐ろしい島だと聞いたことがあります」
とロゼがびっくりしていた。
「そう、颯太君は子供のころから魔獣と隣り合わせの生活だったから、あそこまで強くなったんだと思うよ。そして彼と闘っているあの子はね、円城敦くんと言ってねマリアネス第二魔法学院の校内ランキング第1位にして14歳で‶王の騎士団〟に選ばれたんだよ」
「く、‶王の騎士団〟!?」
リーナはフリックの言葉に驚きが隠せないでいた。
‶王の騎士団〟とは、マリアネス王国のみで取り入れられている制度である。
普通の王国軍の騎士団は志願して所属し、常に国に忠誠を誓うのに対して、‶王の騎士団〟はあまりの強さで、国王からその実力を買われて国を守る代わりに多額の賃金をもらうという契約のもとで成立した騎士団である。
‶王の騎士団〟は10人いて、その10人だけで国の全戦力の7割を占めているともいわれている。
‶王の騎士団〟のメンバーは匿名で入団しており、国王以外はだれも知らず、普段は別の仕事をしていたりする。
「‶王の騎士団〟、確かお父様以外の人間は知らないはず! てことは先生も‶王の騎士団〟なの!?」
とリーナは恐る恐るフリックに聞いてみると、
「そうだよ! そして彼女もその1人だよ!」
とフリックはソマリを指さして言った。
「ちょっと先生! 口が軽くありませんか?」
とソマリが頬を膨らませながら言った。
「いやーごめんごめん! でも彼女は第三王女、そしてロゼさんも有名貴族の娘、言っても問題はないだろ?」
とフリックは焦りながら言い訳をした。
そしてフリックは、
「早く2人を止めないと、これ以上続くとこの旅館が危ないよ!」
とソマリに止めてくるように言った。
「しょうがないですね! 私に任せてください‼」
とソマリは渋々フリックの頼みを受けた。
「チッ! お前、腕を上げたな!」
「てめえこそ! 見たことのねぇ技ばっかりしやがって!」
颯太と敦の喧嘩は次第に激しさを増した。
「これで終わりにしてやるーーーー‼‼‼」
「それはこっちのセリフだーーーー‼‼‼」
颯太の風をまとった拳と敦の炎をまとった拳がぶつかり合おうとしたとき、
「‶アイスウォール〟‼‼‼」
と颯太と敦の間に巨大な氷の壁がそびえたった。2人はいきなり現れた氷の壁に反応して攻撃をやめた。
「喧嘩はやめなさい‼‼」
とソマリは魔力の圧をかけて叫んだ。2人には魔力の圧は効いていなかったのだが、ソマリの叫び声で気が静まった。
「あなたたち! ここで喧嘩したら旅館がめちゃくちゃになるじゃない!」
「「!?」」
2人はソマリの言葉を聞いて我に返ったが、2人は互いを睨み合っている。
それを見ていたソマリはハァとため息をつき、
「じゃあこうしましょう! 今日の午後ごろに魔獣が大量発生するという報告を受けました。ですのであなたたち名その魔獣の討伐をお願いします。そしてより多くの魔獣を討伐した者が勝ち! これならどうでしょう?」
ソマリの提案に2人は首をかしげていたが、その提案が魅力的に感じて気合が入った。
「その話乗った‼‼‼」
「魔獣討伐は俺の専門職だからなあ‼‼‼」
颯太と敦はそう言うと再び睨み合った。
「「勝つのはこの俺だぁ‼‼‼‼」」