29話 『支え合い』
リーナたちはソウチョーウルフの魔力を感じなくなりほっとして緊張を解いた。
「颯太……勝ったんだね」
リーナはけがを負っているのにもかかわらず、バスを出て颯太の方へ向かって行った。ロゼも後に続いて走った。
「こら! あなたたち、まだけがは治っていないのよ!」
と言ってソマリも2人を追いかけていった。
3人が颯太のもとにやってきたとき、リーナとロゼは衝撃を受けた。
颯太のいる目の前に底が見えないくらい地面に大きくて深い穴ができていたのだった。
「ソウチョ―ウルフはどうしたの?」
とロゼが颯太に聞いたら、颯太は苦笑いしていた。
「あいつは俺の攻撃で消滅させてしまっちゃった。メンゴ!」
3人は颯太の態度に唖然としていた。
「いやー参った! やつを消してしまったから誰の差し金で動いていたのか聞けなかった!」
と颯太は笑って自分の失態をごまかしていた。
しかしそんな颯太を誰も責めることはなかった。
「気にするな! なんせ私たちはお前に助けられたのだ! 誰も文句を言うやつはいない! もしそんなことを言うやつがいたら、私が鉄拳制裁してやる‼」
と言ってリーナは自分の拳を颯太に見せつけていた。ロゼもソマリもうんうんと頷いていた。
颯太はリーナの言葉を聞いて、良い仲間を持ったと思いニッと笑った。
颯太は黒いオーラを解除すると、どっと疲れが現れ膝をついた。
「「「!?」」」
3人は膝をついた颯太に驚き、心配して駆け寄った。
「颯太君、大丈夫!?」
ロゼはいち早く颯太に駆け寄って肩を貸した。その後にリーナも反対側の肩を貸した。
「ハァ……ハァ……、すまねぇ。この黒いオーラは体に結構負担をかけてしまうんだ。長時間使用してしまったからかなり体力を消耗してしまった」
と颯太は息を切らしながら言った。
「では早く旅館に向かわないといけませんね! 休息をとったら体力を回復できますよね?」
とソマリがにっこりとした顔で颯太に聞くと、
「ああ! 上等な酒をがぶ飲みしたら俺は元気100倍になるぜ!」
とニヤニヤしながら答える颯太に、
「酒で回復できるわけないでしょ‼」
とリーナが颯太の頭をスパーンと叩いた。
「ちょっと! 瀕死状態の人叩いちゃダメでしょ!」
とロゼがリーナを注意した。
「うう、お前が叩いたから俺の寿命縮んだ」
「ええ! 大丈夫!? ごめんなさい」
「ウッソーーー‼‼」
「もう!こんな時まで冗談言わないでよ!」
「だから叩いちゃだめだって言っただろ!」
しばらくこのようなやり取りをしながら颯太たちはバスへと向かった。
――魔獣界……魔獣軍本部
「レオメタルさまー‼‼ ご報告があります!」
と1~2メートルほどの魔獣が執務机に座っている10メートルを超える巨大な銀のライオンの魔獣に報告をしに来た。
「何事だ? そんなに焦って」
レオメタルは頬杖を突きながら話を聞いた。
「実は‶龍斬り〟の抹殺命令を受けていたクミチョーウルフの部隊が壊滅したとのことです」
「それであいつらはどうなったんだ?」
「はい、サンボーウルフの3頭は‶龍斬り〟によって消滅させられました。そしてクミチョーウルフは致命傷を負い昏睡状態になっています」
「クミチョーウルフは一応生きているんだな? だったら集中治療室に運んどけ! 意識を取り戻したらでかい戦力になる」
「はい!」
レオメタルは部下に命令を出して部下が部屋を後にすると、
「‶龍斬り〟……。やはり一筋縄ではいかんか」
と腕を組み、首をかしげながら言った。