24話 『最速の魔獣』
深い森の中で超速戦闘が繰り広げられている。クミチョーウルフはすでにこの前戦ったザックの最高速度を超えていた。しかし颯太はそのクミチョーウルフの速度に普通についていっている。
「くそ! 何でだ!? 魔獣界でもトップレベルのスピードを誇るこの俺が、てめえなんかと互角だと!? てめえはドーピングしたザックの速度についていけてなかったはずなのに?」
「やはりお前あいつらとつながっていたか……。俺はザックとの戦いの後、もっと早く移動することができないかと試行錯誤をして、‶疾風脚〟という魔法を編み出したのだ!」
颯太はクミチョーウルフの疑問に的確にこたえて、クミチョーウルフの速度を圧倒した。
「さらにこの‶疾風脚〟を使うことによって空中歩行を可能にしたんだ!」
「フン! だったら上手によけてみな! ‶ピストルスクラッチ〟‼‼」
颯太の言葉が癇に障ったのか、クミチョーウルフは鋭い爪から高速の斬撃を飛ばした。
颯太が高速の斬撃をぎりぎりでかわすと、その斬撃は森の木を次々と伐採した。
「なんて威力なんだ!」
と颯太が思うとクミチョーウルフは続けて攻撃を仕掛けてきた。
「どんどん行くぜ! 頑張ってよけろよ? ‶マシンガンスクラッチ〟‼」
クミチョーウルフは連続で‶ピストルスクラッチ〟を発動し、無数の斬撃を飛ばした。
「だから当たらねーよ! ‶風流し〟‼」
颯太は無数の高速の斬撃を風の力を使って受け流していたのだが、受け流した斬撃が森の木をどんどんと斬り倒していったから‶風流し〟をやめた。
「チキショー! 環境破壊してんじゃねー‼ ‶鋼筋武装〟からの‶疾風螺旋乱舞‼‼」
颯太の両拳を鋼のごとく硬くし旋風をまとわせて連打した。そして無数の斬撃を全て相殺して、クミチョーウルフとの距離を一瞬で詰めて‶疾風螺旋拳〟でクミチョーウルフの頬を思いっきり殴った。
クミチョーウルフは颯太に殴られ地面に叩きつけられた。
颯太がクミチョーウルフに近づくと、クミチョーウルフの頬はめり込んでいて、自慢の牙もボロボロになっていたがかすかに意識は残っている。
「さあ! 誰の命令で俺たちを襲いに来た? 答えろ! 答えなかったらお前に特大の‶魔獣砲〟をくらわせてやる‼」
と颯太は青白い閃光を倒れているクミチョーウルフに向けて構えている。
しかしクミチョーウルフは余裕の笑みを浮かべていた。
「ハァ……ハァ……。てめえ、こんなところで道草食っていていいのかよ。今俺の部下にてめえらのバスを襲わせに行かせているんだよ」
「何言ってるんだよ! 今ここで俺がお前を殺せば、そいつらもお前の支配が解けるだろうが?」
クミチョーウルフの言ったことに颯太が反論するのだが、クミチョーウルフの笑いは止まらなかった。
「ハッハッハー! あいつらは俺の支配を受けていない。なぜならあいつらも魔獣界の魔獣であり、俺の直属の部下だからなあ! この意味が分かるよなあ? 今ここで俺を殺してもあいつらはバスを追い続ける!」
クミチョーウルフの衝撃的な一言に颯太はクミチョーウルフにとどめを刺すのを諦めてリーナたちの乗っているバスを追いかけ始めた。
(間に合うはずがない……。俺があいつと闘い始めたときから追わせているからな)
そう思いながらクミチョーウルフは気を失った。
「チキショー! 間に合わねー! このまま追いかけていてもらちが明かねー‼‼」
そういった颯太は背中から黒刀を抜いて、漆黒のオーラを体全身にまとわせた。すると颯太は‶疾風脚〟を使わずに通常の十数倍の速度で走り始めた。
――バスの中
「リーナ様! 後ろから巨大な魔獣が追いかけてきます! しかも3頭もいてものすごい速度で、このままだと追いつかれてしまいます!」
エリーサがリーナに険しい顔で報告をした。
「おい、運転手! もっと速く走ることはできないのか!」
とリーナが運転手に大きな声で怒鳴ると、
「ひー! もうこれ以上はスピード出せませ―ん!」
と運転手は泣きながら答えた。
リーナは苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、‶危険レベルチェッカー〟で3頭の魔獣を調べた。
魔獣名: サンボーウルフ
全長 : 3~5メートル
危険度: 10
「危険度10の魔獣が3体!?」
と言ってエリーサは気が動転してしまった。
3頭のサンボーウルフはバスにめがけて同時に‶魔獣砲〟を発射した。