23話 『上からの刺客』
「みんな! 陣形を崩さないで!」
リーナはクラス全員がばらつかないように指示を出している。
「1対1をしようと思わないで! 1頭当たりに3人から5人で相手をして! 残りは私とロゼが確実に仕留める」
リーナの指示でクラス全員が頷いて、ダースウルフ1頭に数人でかかった。
「リーナ、あいつ人を動かすの上手だな!」
颯太の発言にソマリはリーナの様子を見ながら、
「彼女は大国マリアネス王国の第三王女、これくらいできなければ人の上に立つことなんてできないわ」
と厳しいことを言った。
リーナは戦いの様子を見ながら、ロゼに指示を出した。
「ロゼ! みんなの援護をお願い!」
「分かった!」
ロゼはそう言うと剣を抜いて叫んだ。
「絶海よ孤独に唄え! ‶魔導神装〟‼」
ロゼの周りから渦潮が巻き起こって、その渦にのまれながら人魚の姿へと変身した。
ロゼは剣から変化したハープを弾き始めた。
「‶マーメイドソング・やすらぎ〟」
ロゼはそう言うと、美しい声で歌い始めた。その歌を聞いた魔獣たちはすやすやと眠ってしまった。
「知能のない魔獣には催眠術が効果的なのよ! みんな、今のうちに魔獣たちを徹底的に仕留めるのよ!」
リーナの指示でクラスのみんなは眠っているダースウルフに攻撃を始めて、何頭か討伐することに成功した。
「さすがね! ‶流水のロゼ〟。ダースウルフの数が一気に減ったよ……颯太君!?」
ソマリは颯太に話をしていたのだが、颯太はロゼの魔法によって爆睡してしまったのである。
「お前も寝ているんじゃねー!」
リーナは爆睡する颯太に腹を立てた、
「むにゃ……? もう朝か?」
颯太は寝ぼけながら頭に大きなたんこぶを作って起き上がった。
颯太が起きたころには、ダースウルフの群れもほぼ全滅していた。
「さすがです皆さん! ではバスに乗り込みましょう!」
ソマリがそう言うと、「ちょっと待った!」という颯太の声が聞こえた。
「どうしたの?」
「かなり強い魔力が急速接近してきている」
「「「「!?」」」」
颯太の言葉にクラス全員が驚愕した。
そして森の奥から、青白い閃光が飛んできた。
「これは、‶魔獣砲〟!?」
飛んでくる閃光にリーナは死を感じた。
「マズイ! ‶波動旋風〟‼‼」
颯太は手から巨大な旋風を巻き起こして、青白い閃光とぶつけて見事に相殺させた。
そして森の奥から魔獣が姿を現した。
その魔獣はオオカミのような外見でありながら二足歩行をしていた。
クラスのみんなはすぐさま‶危険レベルチェッカー〟を起動させてその魔獣を調べた。
魔獣名: クミチョーウルフ
体長 : 1~2メートル
危険度: 15
リーナは今まで出会ってきた魔獣の中で一番高い危険度だったので震えおののき、後ずさりをした。
「よう! てめえが‶龍斬り〟か?」
クミチョーウルフが颯太の方に指をさして聞いてきた。
「だったらなんだ?」
「上からてめえの抹殺命令を受けたんだ! だからいっぺん死んでくれやあ!」
クミチョーウルフがそう言うと、高く飛びあがってバスに向かって‶魔獣砲〟を撃とうとした。
「みんな! 俺を置いてさっさとバスを走らせろ‼ こいつの狙いは俺だ!」
「そ、そんなことできないだろ!」
「いいから早く行け!」
颯太の突然の叫びにリーナとロゼは驚いて渋々承諾し、クラスのみんなをバスに誘導してバスを走らせた。
クミチョーウルフは舌打ちをしながら走っているバスに狙いを定めてから‶魔獣砲〟を発射した。
「させねーよ! ‶魔獣砲〟‼‼」
颯太は超速移動でバスの後ろに回り込み、クミチョーウルフと同じ青白い閃光を発射した。
ズドドドドドドドドォーーーーーン‼‼‼‼
2つの青白い閃光が衝突して大規模な爆発を起こした。