22話 『魔獣による通行止め』
あまりの大きな音にバスは急停止をした。クラスのみんなは焦っている者もいれば、ただただキャーキャーわめいている者もいた。
颯太たちは何事かと思い窓から外の様子を確かめたのだが、外には魔獣の群れが待ち伏せしていた。
「魔獣の群れ!? しかも何で私たちがここに来るのがわかっていたの~?」
「おそらく指揮官がいるんだろ」
魔獣の群れに戸惑うミーアにトムはさらっと答えた。
「おい! 奥にもたくさん待ち構えているぞ!」
とロゼが言って‶危険レベルチェッカー〟で確認した。
魔獣名: ダースウルフ
特徴 : 必ず12頭の群れで狩りをする
全長 : 1~2メートル
危険度: 1個体で6
デバイスにはこのようなことが書かれていたのだが、明らかに12頭以上の数がいる。
「やはりトムの言う通り、指揮官の魔獣がいるんだろう」
「その指揮官ってまさか……」
颯太の言葉にリーナが恐る恐る聞いた。
「ああ、魔獣界の魔獣だ!」
と颯太は舌打ちをしながら言った。
「でも大丈夫でフ‼ なんせここには生徒会長がいるから一瞬で凍らせてくれるでフ!」
ポトフがでかい腹を突き出して威張っていたが、ソマリはきょとんとした顔で言った。
「何言ってんの? 私戦わないよ」
「「「「エーーーーーーーー‼‼」」」」
ソマリの一言にクラス全員が驚愕して声を張り上げた。
「だって私が参戦したらみんなのためにならないもん! もう訓練は始まっているのよ!」
とにっこりした顔で恐ろしいことを言い出したソマリに颯太は若干引いていた。
「仕方ない、だったら俺たちで討伐するぞ!」
「待って!」
とソマリが言って颯太を引き止めた。
「雨宮君、あなたは私のボディーガードをしなさい」
とソマリが言ったので颯太は「はあ?」と呆れた顔で言った。
「何で俺があんたのボディーガードなんかやんなきゃならねーんだ? それに自分の身は自分で守れるだろ! この最凶雪女がバビデボブフゥッ!?」
颯太の言葉を聞いたソマリはにっこりとした顔で颯太の腹に強烈な膝蹴りを入れた。
(この蹴り、あのドーピング野郎の蹴りよりも断然つえ~!)
颯太は心の中でそう思いながら腹を抑えていた。
「言葉に気をつけなさい、クソガキ」
ソマリの冷たい言葉に颯太は黙って「はい」としか言えなかった。
「しょうがない、私達だけでなんとか切り抜けるぞ!」
「「「「オォーーーーー‼‼」」」」
リーナの掛け声とともにクラス全員が走り出した。
森の奥でダースウルフの群れとリーナたちの戦いを見ている魔獣がいた。その魔獣は不気味な笑みを浮かべながら颯太を見つめた。
「‶龍斬り〟、ミノタウロスを倒した人間か……。食ってみてーなー! どんな味がするのかなあ?」