20話 『最強で最凶の生徒会長』
事件の翌日、マリアネス第一魔法学院では全校集会があった。学生たちや先生たちは全員が集会場に集められた。
颯太たちやほかの生徒たちだけではなく、先生たちも何で集められたか理由は聞かされていないが、颯太は何となく集められた理由はわかっていた。
ステージの奥から黒髪のロングヘアの大人びた女子生徒が歩いて来た。しかし彼女がステージに立ったというのに、生徒たちのしゃべり声が止まらない。
黒髪の女子生徒は大きく息を吸い込んで叫んだ。
「静かにしなさい!」
彼女の叫び声とともに強力な魔力の圧力がかかった。そして彼女の魔力の圧力によって、各学年の3~5組の生徒たちの大半は体が耐え切れなくなって気を失っていった。
「エーー! あいつ本当に黙らせちゃったよ‼」
颯太は倒れてしまった生徒を抱えて驚愕していた。
「さすがの魔力ね……。生徒会長」
「いや、何平然としているんだよ! てか何で耐えられた私すごいっていう顔になってんだよ! 非常事態だろ!」
と冷静を装っているリーナに颯太は思いっきりツッコミを入れた。
「あの人の前では会話できるのが精一杯。あの人はエリートとしか会話しない」
「それ生徒会長失格だろ! お前らあいつのやっていることに少しもおかしいと思ったことねーのかよ!」
とリーナと同じような表情をしているロゼにも颯太はツッコミを入れた。
「あの人は2年生で校内ランキング第1位、ソマリ・アンタレス会長だ。全く恐ろしい魔力だよ!」
「まったくでフ! 俺もビビッて冷や汗流しちゃったでフ!」
「だからお前ら本当に何なんだよ! 俺か!? おかしいの! てかポトフ、お前はいつも汗かいてんだろ! もういいわぁ‼‼」
周りの人たちの態度に颯太はあきらめた。
その光景を一部始終ステージから見ていたソマリが颯太に話しかけた。
「すごいわねあなた。私の圧力を受けながらこんなにもバカ騒ぎをしているんだもの」
「だからあんた何強者ぶっているんだよ! こんなことしたら伝えるの二度手間だろ!」
ソマリは颯太がギャーギャーわめいているのに耳を貸さず本題を話し始めた。
「今日みんなに集まってもらったのには私から言いたいことがあるからだ。最近強い魔獣や‶ブラックランク冒険者〟が現れていることは皆知っているな? しかしはっきり言おう!今の君たちには到底奴らを倒すことはできない!」
ソマリの演説に生徒たちがひそひそと話をし始めた。
「まっ、そいつらはみーんな俺が倒したんだけどな!」
と颯太が鼻を高くして言うと、
「「「「うるさい」」」」
とリーナたちは颯太を黙らせた。
「そこでだ、私から提案がある! 来週から学年ごとに4泊5日で対魔獣強化合宿をしようと思う!」
ソマリがそう提案をすると、全校生徒から非難の声が聞こえた。
しかし、
ズガーーーーーン‼‼
と天井が破壊された音が聞こえ生徒たちの声も一瞬で静まった。
「何事だ!?」
と颯太がリーナに聞くと、
「どうやら魔獣のようね、しかもしゃべる魔獣」
と答えてポケットから、‶危険レベルチェッカー〟を取り出した。
魔獣名: ‶ギガンテス〟
全長: 6~7メートル
危険度: 10
デバイスを見たリーナが焦りながら、
「こいつ、この前のミノタウロスと同じくらい強いんじゃない!?」
と言った。それを聞いた颯太は、
「じゃあお前ら、他の生徒たちを避難させてくれ! 俺はこいつを一撃で倒す!」
と‶波動旋風〟の構えをしたら、
「その必要はないわ!」
とソマリの声が聞こえた。
颯太たちがソマリの方を振り向くと、
「‶フリーズキャノン〟‼‼」
とソマリが手のひらから、冷気の砲弾を発射された。
冷気の砲弾を受けたギガンテスは1秒もかからず、凍結してしまい、数秒後に粉々に砕けてしまった。
他の生徒たちはソマリの強さに声も出なかった。
「話を戻すわね! みんな、合宿に行くよね?」
とソマリがにっこりとした顔でまた生徒たちに魔力で圧力をかけた。生徒たちは黙って「はい」としかいうことができなかった。
この光景を見た颯太は、
「これ、ただの独裁政治じゃん!」
と驚きあきれていた。