02話 『魔法学院と金髪の少女』
転移魔法「エスケープ」を唱えて、何とか地下迷宮から脱出できた颯太は、「真実の魔法」を習得するために、学校を探すことにした。
そこで颯太は、冒険者ギルド本部があるマリアネス王国の学校に行くことにした。
冒険者ギルドとは、世界中から殺到する依頼に難易度を付けて、その依頼を管理する組織のことである。さらに依頼だけではなく、冒険者も管理している.
冒険者ギルドで定められている依頼の難易度は、5段階に分けられている。
まず一番下の段階は、「ノーマルランク」である。薬草の採取や、人より小型の魔獣の討伐することなどがこのランクにくくられる。
「ノーマルランク」の一つ上の段階は、「ブロンズランク」と呼ばれている。人ぐらいのサイズの魔獣や小型魔獣の群れなどがこのランクの討伐対象だ。
さらに上の段階で「シルバーランク」がある。このランクは大体2~3mの魔獣の討伐する依頼が該当する。
二番目に高い段階は「ゴールドランク」だ。このランクの依頼は極めて危険で、討伐対象の魔獣は不特定多数の死者を出すほどだ。
最後に一番高い段階の「プラチナランク」がある。このランクの討伐対象の魔獣は一国家を滅亡させるほどの危険度を持っているのだ。
冒険者ギルドは、世界各地に支部があって、ここ、マリアネス王国には巨大な本部があるのだ。
「冒険者をしている身であるから、本部がある国の学校に通ったほうが色々と都合がいいぜ」
そう考えた颯太は早速、マリアネス王国の王族が通う「マリアネス第一魔法学院」の編入試験を受けることにした。
マリアネス王国には高等魔法学院が2つあってそのうちの1つの学校がマリアネス第一魔法学院。
この学校では魔法についての専門的な勉強ができて、卒業したら王国軍の騎士団や魔導部隊などの将来有望な職業が約束されている。
男子生徒は黒のジャケットに黒のズボンのブレザー、いわゆる都会の男子高校生のような制服で、女子生徒は白色のジャケットに黒いミニスカート、太ももまであるハイソックスを履いている。
しかし颯太はそのような下調べも編入試験の対策も全くせずに試験に挑んだ。
一週間後、「マリアネス第一魔法学院」の編入試験が終わった。幸いにもこの試験は実技試験だけだったので、颯太は満点で編入試験を合格したのだった。
そして今から颯太は編入の手続きをするために学長室へ行った。
学長室の中には白髪のつんつん頭のガタイのいい老人とスーツを着た黒髪ロングヘアの若い女性がいた。
「やぁ! よく来たのう。わしはマリアネス第一魔法学院の学長、レージスじゃ! ガァッハッハッハー」
陽気なノリで歓迎した老人……レージス学長を見て、颯太は少しひるんだ。この陽気なノリに強靭な筋肉を見て、とても70を過ぎている老人とは思えなかった。
「あ、あんたがこの学院の学長なのか? ジジイのくせにやけに陽気だなぁ」
「あなたっ、口には気をつけなさい」
そう注意した女性に対してレージス学長は、
「なんじゃ、わしゃそぎゃんこと気にせんわい! しっかしまぁ、今日もルージュちゅわんはピッチピチのスケベなスーツば着とってから~。わしゃ興奮しすぎてどぎゃんかなりそうじゃけん!」
とニヤニヤと下心を丸出しにして彼女のの太ももを触ろうとしたのだがその瞬間、学長の顔面に向かって回し蹴りが飛んできた。
――バキッ‼‼
レージス学長の顔面が鼻血で真っ赤に染まっていた。
何故かこの女性はレージス学長にだけ当たりがとても強い。
「いや暴力はいいのかよぉーー‼‼」
颯太はルージュの言っていることとやっている事の矛盾に対して思いっきりツッコミをいれた。
「いえ、私はセクハラをされたので……そしてこれは正当防衛です。申し遅れました、私はこのくそジ……レージス学長の秘書をしています、ルージュ・ラフォリアと言います」
(今絶対くそジジイって言おうとしてたよなぁ)
絶対にこの人だけは怒らせないようにしなければならないと思った颯太は、ルージュに恐る恐る聞いてみた。
「あの~、この学校やけに女子多くないですか?」
すると机の下で鼻血まみれで伸びていたレージス学長がよぼよぼのおじいさんのようなトーンで話し始めた。
「そうじゃ、この学校は元々女学院じゃった。じゃけど今年から男女共学にしたんじゃ。じゃけんこの学校は圧倒的に女子の割合のほうが高いんじゃ。じゃからと言って、女の子にいたらん事したらいかんけんのう」
「いやあんたが言うなよ! エロジジイ!」
颯太は即座に再びキレのあるツッコミを入れた。
一時間ほどで編入手続きの作業は終わった。もう外は暗く夜になっていた。
颯太が学校から出てきた瞬間、空から大トリが飛んできた。どうやらこの大トリは光る者に目が無いらしく、颯太の背中に携えていた刀を鷲掴みして奪い去っていった。
「おいっ! 何をする!」
そう言って鷲掴みしている刀に向かってジャンプしてぶら下がった。大トリは重くなったのか、翼をばたつかせている。
「はやく刀を返せ、そうすればてめえは焼き鳥にならなくて済むぞ」
颯太が大トリを威圧的な眼光で睨みつけた途端、大トリは颯太に戦慄し、彼ごと刀を落としてしまった。
ヒュウゥゥー……ガシャン‼
颯太はそのまま落下していき、銭湯の屋根に頭から突っ込んでしまった。そして屋根を突きぬけ、そのまま大浴場にダイブしてしまった。
あたり一面は湯煙でよく見えない。しかし手には何か感触があった。それも滅多に触ることの出来ない感触。男性に限ったことであるが。
(ん? この感触……俺の刀じゃないぞ。っていうか柔らかい! ゴムボールよりも触り心地がよくてまるでマシュマロ……ん、これってまさか……!?)
「キャッ!」
突如女の子の声がした。しかも目の前で。颯太は恐る恐る手を放し、その場から立ち去ろうとしたのだが、
「あなた、誰っ!?」
と女の子の声がした。湯気でよく見えなかったのだが、声の主はその湯気から見えるスタイルの良いシルエットだろう。
そして湯気が消えると、颯太の目の前には金髪のショートヘアで可愛らしい顔の胸の大きな女の子がいた。髪の毛から滴る雫が胸に垂れて、そこから流れるその姿はより艶かしさを引き立てた。
「あんた、こんなことして生きて帰れるとは思わないことね!」
「俺はフラグを回収してしまったのか?」
颯太の頭の中には、レージス学長の言葉がよぎった。