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17話 『絶海のマーメイド』

「何!? あいつ、どうしたの?」


 戸惑っているリーナに颯太は苦虫を噛み潰したような顔でザックを睨みつけながら説明した。


「あれは‶ストロング・D〟と言ってな、自分よりも遥かに強い魔獣が現れたときに使用するものなんだ。あの丸薬を服用すると、一時的に戦闘力が倍増するんだ。俺は飲んだことは無いから分からないが、あの丸薬の副作用で体全身に激痛が走るらしいから基本的には1錠しか飲んじゃいけないんだよ。……それをあいつは3錠も飲みやがって」


「そうだ! この丸薬は飲むと2の丸薬の個数乗倍に戦闘力が上がるんだ! つまり俺は今3錠飲んだから、俺の戦闘力は今までの8倍になったのさ!」


 ザックは険しい人相でリーナに補足をしていた。


「覚悟しろ! ‶龍斬り〟!」


 ザックはそう言うと、凄まじい速度で超速移動をした。


(これくらいなら俺も……)


 そう思った颯太はニヤッと笑って超速移動をした。

 颯太は一瞬でザックの速度に追いついた。


 颯太とザックの攻防が始まった。

 しかしリーナ達には颯太とザックが速すぎて見えていなかった。


「私達も加勢するぞ!」


とリーナが言ったら、


「やめた方がいいわよ、下手に加勢しても邪魔になるだけよ!」


とロゼが否定した。


(このまま時間が過ぎていけば、颯太君の勝ちは確定だけど……。でもザックっていう男はこのままやられる奴だとは思わないんだけど……)


とロゼは颯太を心配そうに見つめていた。


「くらいやがれ! ‶鎌鼬〟!」


 颯太は足から風の斬撃を3発飛ばした。

 しかしザックはそれをひらりと躱して颯太を斬り飛ばした。


 颯太はザックの斬撃を見て、


「マズイ! ‶ハードボディ〟!」


と魔法で腕を硬くし、ザックの斬撃を受け止めたが、8倍に増したザックの斬撃はとても重くて、颯太は遠くまで飛ばされた。


「どうした? ‶プラチナランク冒険者〟っていうはそんなもんなんか?」


「‶ギロチンのザック〟、思い出したぞ! たしか元々‶ゴールドランク〟冒険者だったが、ほかの冒険者の手柄を殺害して横取りしていたことが冒険者ギルドにバレてギルドから追放された‶ブラックランク冒険者〟か!?」


 瓦礫の中から颯太が顔を出してザックの素性を暴露した。


「そうだ! そしてこの‶ヤマネコ団〟に所属している者は全員‶ブラックランク〟の冒険者か犯罪者のどちらかだ! さあ! 馬鹿ども! さっさと起き上がって‶ストロング・D〟を飲みやがれ!」


 ザックの言葉に部下たちも全員‶ストロング・D〟を服用し始めて、魔力が倍増した。


「くそっ! あそこの方まではカバーしきれない!」


と颯太がまた苦虫を噛み潰したような顔をしていたら、


「こっちは私達に任せて! あんたはあの男に集中しなさい!」


とリーナが言った。

 颯太はリーナを信じてザックとの戦いに集中した。


「いいのか? お前の仲間たちがボコボコにされても」


とザックが颯太を煽ったのだが、颯太は不敵な笑みを浮かべながら、


「あいつらなんかにリーナ達は負けないぜ!」


と言った。


「それとこの勝負、お前の負けだ! ‶疾風螺旋拳〟‼‼‼」


 颯太はそう言って右拳に魔力を注ぎ込むと、右手から旋風が巻き起こった。


 ズドーーーーーン‼‼‼‼


 颯太の旋風をまとった拳はザックの腹部に直撃した。ザックも疾風のパンチは躱すことが出来なかった。


「ガボボボボ!!!!!」


とザックは反吐を吐いて超速でぶっ飛ばされた。





 ――一方その頃、


「「「「ウォーーー!!」」」」


 ザックの部下たちは一斉に飛びかかってきた。

 しかしリーナとロゼは落ち着いた顔で魔力を上げ始めた。


「雷鳴よ鳴り響け!! ‶魔導神装〟!!」


「絶海よ孤独に唄え!! ‶魔導神装〟!!」


 リーナとロゼ2人の奇才者は‶魔導神装〟をして、リーナは赤い美しいドレス姿になって、ロゼは足が綺麗な紅色の尾びれになって武器も剣からハープに変わり、美しい人魚へと変貌して、大空を美しく泳いでいる。


 リーナは高く飛び上がって部下たちの真上から、‶サンダーランス〟を連射した。


 ロゼはトビウオ並みの速度で空を泳いで、部下たちの背後に回った。


「もがき苦しみなさい! ‶マリンボール〟!!!」


 ロゼは部下たちを巨大な水の球体に包んだ。

 部下たちは息ができなくて苦しみながら次第に意識を失ってしまった。


 その後もリーナとロゼの圧倒的な力によって部下たちは次々にやられた。


 颯太は部下たちが全滅する頃を見計らって、ザックが飛ばされた方へ歩いていった。


「残念だったな! お前の部下たちもみんなやられたぜ! 大人しく捕まれば……」


 颯太が喋っている最中にザックが飛び出して、颯太の顔面に膝蹴りを入れた。


「ブグッ!!」


 颯太の“ハードボディ〟は砕けて吹っ飛ばされた。颯太はすぐ受身をとったが、顔から蛇口から水を出したかのように鼻血が出ていた。


「お前………まさか!?」


「ウォーーー!! 力が! 力がみなぎってくるぜーー!!」


 なんと、ザックは4つ目の‶ストロング・D〟を服用したのである。

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