15話 『流水のロゼ』
――私には仲間と呼べる人がいなかった。
私は子供のころから他者に対して不愛想な性格だったから、友達なんてできるわけがない。
そして異性からは性的な目でみられるか、サンパリアの伯爵家の娘という理由だけで交際を迫られたりした。
私は男なんて自分の地位が欲しいだけの生き物でしかないのかと思っていた。
でも……彼は違った。颯太君は私をサンパリアの娘としてじゃなく、ロゼという一人の女の子としてみてくれた。そしてこんな私を仲間と言ってくれた。
ロゼは自分を助けようとしている颯太を見て涙が止まらなかった。
颯太は泣きついているルリの頭をなでて、
「大丈夫、絶対お姉ちゃんは助けるから」
と言った。
ルリが他の人たちの方を見てもリーナはにっこりと頷いて、ミーアもトムもポトフもグッと親指を立てた。
「よっしゃー! 助けるぞ! ……ていうかお前ら誰だ?」
と颯太はトムとポトフを指さして聞いた。
「安心しろ! あのクズどもをぶちのめした後は君の番だ!」
「ぶっ潰してやるんでフ!」
と2人は中指を颯太に向けて立てた。
「でもロゼが人質に取られている以上、私達はむやみに動くことができないぞ」
とリーナが言うと、トムが自信満々の顔をして言った。
「安心しろ! ここは僕に任せてくれ! 悪いが君たちは目をつぶっていてくれ」
トムはそう言うと、自分の右手の人差し指に魔力を込めていた。
「光よ! その力で相手の目ををくらませ給へ! 〝フラッシュアウト〟!」
トムが人差し指を空に上げると、指からまぶしい光が照らされた。
リーナたちは目をつぶっていたから光を見ることはなかった。
〝ヤマネコ団〟の連中はトムの光で目をくらんだ。
その隙に颯太がロゼを助け出した。
「大丈夫か? ロゼ!」
「うん、ありがとう!」
「なにー! あいつ! おいしいところを持っていきやがって!」
トムは颯太がロゼを助け出したことにショックを受けた。
〝ヤマネコ団〟はロゼを手放したことに気づいた。
「お前らー! 今すぐあの女を取り返せ―‼」
連中のリーダーと思われる2メートル近くある剛腕の褐色肌の男が部下たちに指示を出した。
部下たちはロゼに襲い掛かるのだが、ロゼは全く顔色を変えなかった。
「さっきは油断して捕まってしまったが、もう捕まらない! くらえ! JET スプラッシュ‼」
ロゼが放った水滴が、散乱銃のように部下たちに打ち込まれた。
「無詠唱魔法! あいつも奇才者だったのか!?」
「そうよ! 彼女は校内ランキング第8位、〝流水のロゼ〟よ! 実力は私と拮抗しているのよ!」
驚いた颯太にリーナは説明した。
「さあ! 覚悟しな! 〝ヤマネコ団〟‼」
啖呵を切ったロゼに大男は、
「おもしれぇじゃねーか」
と薄ら笑った。