13話 『監視だらけデート』
「おねーぢゃん! ごわがっだよー!」
ルリが大泣きをしながらロゼに抱き着いてきた。
「まったく……一人でどこかへ行くんじゃないよ!」
とロゼがルリに注意をしたら、ルリがまたさらに大泣きをした。
そのあとロゼはリーナの方を見て、
「リーナ様、ルリを助けてくれてありがとう! 何かお礼をしたいけど何がいい?」
と言うと、リーナは急いで否定した。
「違う違う! この子を助けたのは、こいつ!」
とリーナは颯太を指さして言った。
「お前がルリを助けてくれたのか?」
とロゼが颯太に聞くと颯太は軽くうなずいた。そして颯太はルリの頭をポンと撫でて、
「ケガがなくてよかった! だけどこれからは一人でここを歩いたりするんじゃないぞ」
と言うとルリも「分かった!」とかわいらしい返事をした。
「何かお礼をしたい。何か欲しいものはあるか?」
とロゼは颯太に尋ねた。
「ん? 何もいらねえよ。人を助けるのは当たり前だからな!」
と颯太は二カッと満面の笑みでそう言った。ロゼは颯太の心の広さと人のよさに気持ちが昂揚して、
「じゃあ私がおいしい店に連れてってあげる! お前この町あまり知らないんでしょ? ついでに教えてあげる!」
と人が変わったかのように明るく言った。リーナはロゼの態度の変わり様とその発言に驚愕していた。そして颯太は、
「まあ、確かにこの町のことはあまり知らないのは確かだし……そうしてもらえるのは正直助かるよ!」
と照れながら言った。ロゼは嬉しそうに、
「決まりだな! じゃあ明日の午後1時にこの場所で待ち合わせな!」
と言うと、リーナが口をはさんできた。
「まて、颯太。町案内ならこの私がしてやるぞ」
するとロゼは、
「私の方がリーナ様よりも颯太君を楽しませることができるわ!」
と颯太に目配せをして、ルリと手をつないでスキップをしながら帰った。
(ぐぬぬぬぬ、ロゼめー! 私の颯太をーー!)
と怒りをこらえているリーナに颯太は、
「どこ連れてもらおうかなー!」
と浮足立てて呟いていたので、リーナは颯太に誘拐犯と同じ鳩尾を殴った。
――翌日
昨日の事件現場にはロゼが自分の髪色と真逆の青色のドレスを着用していた。
それから10分後ぐらいに庶民が来てそうな服に所々に穴の開いたズボンを履いた颯太が到着した。するとロゼは、
「もー! おーそーいー! 颯太君! レディーをいつまで待たせるのよ?」
とプクーとふくれっ面して颯太を怒っていた。颯太は、
「いやー悪い悪い、道端で魔獣に襲われている子を助けて来たから遅れてしまった!」
「も〜、理由がカッコイイからゆーるーす! でもちょっと服がボロボロだよね? だから今から颯太君に似合う服を探しにいきましょ!」
「お、おう」
颯太がしどろもどろに返事をするとロゼは颯太の腕にしがみついて歩き始めた。
この2人のやり取りを少し後ろで変装しながら隠れて盗み聞きをしていたリーナは、
「ムッカー! 何なのアイツら! イチャイチャしやがって!」
と颯太たちに声が聞こえるくらいの声で怒っていた。
隣で覗いていたミーアは、
「リーナ様〜、声が聞こえちゃいますよ〜!」
とリーナを宥めていた。
「それに……ロゼってあんなキャラじゃないでしょ!」
とリーナが嫉妬をし続けていると、
「おねーちゃんは、好みの男性に対しては冷酷な女からかわい子ちゃんになるの!」
とリーナとミーアの間からルリが顔出した。
「ルリちゃん!? ってかそれぶりっ子じゃん!」
とリーナはルリの登場に驚いた後、ツッコミを入れた。
「あぁ、美しい! ロゼさん! だけど僕の方が美しい! あぁ、ロゼさんロゼさんロゼさん!」
とさらにミーアの背後から2人の男が現れた。突然現れた男たちにミーアは
「わぁ〜! ビックリさせないでよ〜! トム、ポトフ!」
と2人に文句を言っていた。
トムは橙色の髪の毛にシルバーのスーツを着こなした残念イケメンのナルシストである。
もう1人のポトフは、体重200キロの太った男で暑い日でも寒い日でも常に汗をかき続けている。
ロゼは学園のマドンナ的存在であり、トムとポトフのような熱烈なファンはたくさんいるのだ。
「ぐふふふふー! ロゼどんは私生活だとあんなに萌え萌えキュンな女の子なのでふか?」
とポトフが"冒険者アイドルキララちゃん"のフィギュアを頬に擦りつけながら言った。
冒険者アイドルキララちゃんとは世界中を駆け回ってLIVE活動をするアイドル兼ゴールドランク冒険者である。
そして2人はロゼと一緒に歩いている颯太を見て、
「あいつー! 誰の許可でロゼさんとデートしてんだーーー!!」
「ぶっ潰してあげるんでふ!!」
と殺意のオーラをだだ漏れになっていた。
リーナ、トム、ポトフの3人の負のオーラにミーアは押しつぶされそうになっていた。
(誰か〜! この役変わって〜!)