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12話 『隣の席』

「リ、リーナ! なぜおまえ、ここにいる!?」


「なぜだと! 私は校内ランキング第5位なんだぞ! だから私が一番優秀なクラスにいて何がおかしい?」


 そう、この学院は3年制で各学年1組から5組ある。そして若い番号の組ほど実力のある生徒が在籍している。

 颯太は編入試験で満点を取ったから当然この1組に入ることになる。


 リーナの言葉に颯太は何も言い返せなかった。クラスのみんなは颯太のリーナに対する態度に頭に来ている。颯太はその空気に耐えられなくなり、


「あ! 俺教室間違えたのかもしれない! それじゃあ失礼しました!」


「何言っているんだ、君は間違いなくこのクラスだ! 諦めなさい!」


 フリックは自然な流れで帰ろうとする颯太の襟を掴んで止めた。


「じゃあ颯太君、君は一番後ろの空いている席に座りなさい」


 颯太はフリックに言われ後ろの席に座った。そして颯太は隣の席の桃色のロングヘアで胸もリーナと同じくらいの巨乳のかわいらしい顔をした女の子に話しかけた。


「俺の名前は雨宮颯太、よろしく! 君の名前は?」


「女子風呂を覗く変態に名乗る名前はない」


 かわいらしい顔に似つかぬキツイ態度に颯太はかなりショックを受けた。


(おいおい! マジかよ! ふつうあの顔の女の子は、「はーい! 私〇〇といいまーす! 〇〇ちゃんて呼んでね! キャピッ!」とかするタイプじゃないのかよ! ていうか俺の風呂場の事件そこまで広まっていたのかよ!)


 隣の席の女の子は、変な妄想をしている颯太を汚物を見る目で見ていた。


「今から全員に渡したいものがあるんだ」


 フリックがそう言うと、手のひらサイズのデバイスを配り始めた。全員にデバイス配り終えると説明を始めた。


「この装置は〝危険レベルチェッカー〟と言うんだ。これは魔獣の危険度をレベル1からレベル40までの間で数値化して表す仕組みになっているんだ。そしてこれには通信機能も備えつけられているんだ」


 颯太たちは〝危険レベルチェッカー〟を見つめながらフリックの話を聞いていた。


「例えばゴブリンやスライムなどの小型魔獣のレベルは大体一桁台で〝ゴールドランク〟の依頼対象魔獣のレベルは10台、〝プラチナランク〟の魔獣はレベル20台とこの世界の魔獣のレベルは1~30までで設定されているんだ。でもこれから現れるだろう魔獣界の魔獣がどれくらい強いのかわからないから、さらに上の30台を設定しているんだ。」


「魔獣の危険度なんかを知ってどうするんだよ?」


 颯太がデバイスを見ながらフリックに問いかけた。


「それはもちろん自分にこの魔獣を倒すことができるかを見計らうためだよ。自分よりもはるかに強い魔獣が現れたら、このデバイスで増援を呼び確実に仕留めるんだ」


「……そうか」


 フリックの言葉に颯太は何か言いたそうな顔をしたが、面倒臭かったから一応納得した。




 初日の授業が終わり、颯太はリーナと一緒に帰宅していた。


「初日からクラスの俺に対する印象最悪だなー」


「それはお前が私の裸を見たり無礼な態度をとっていたりするからだろ。この変態」



「うぐっ!」


 颯太はリーナの最後の一言がグサッと刺さった。何せ颯太は朝も見ず知らずの隣の席の女子に言われたばかりだったからだ。


 そのようなやり取りをしながら帰宅していると、どっかから叫び声が聞こえた。


「だれかー! 人攫いだー!」


「「何!?」」


 颯太とリーナがその声を聞き、誘拐犯に視線を向けた。誘拐犯は単独犯で子供を袋詰めにしていた。


「あいつか?」


「そのようだな……ここは私が!」


「まて、リーナ! お前、魔法を使う気だろ!? ここで使ったら被害が大きすぎる」


「じゃあどうすればいいのだ!? あいつも魔法が使えたらすぐに逃げられてしまうぞ!」


「ここは俺に任せろ!」


 そう言うと颯太は一瞬で誘拐犯に追いついてみぞおちを軽く殴って気絶させた。リーナは颯太の凄まじい速度に唖然としていた。


 そのあと誘拐犯は王国軍に捕まった。

 颯太は袋詰めにされていた子供を解放すると、


(このかわいらしい顔どこかで……)


と思ったその時だった。颯太達の方へ女性が走ってきた。


「ルリ! 探したのよ!」


「あ! お姉ちゃん!」


と水色の髪の女の子が指さした桃色のロングヘアのかわいらしい顔の女性は、颯太も知る人物だった。


「お前は……ロゼ!」


 リーナがそう言うとその女性は、


「リーナ様と変態? なぜここに?」


「誰が変態だ!」


 颯太をそう呼ぶ女性は彼の隣に座っている生徒だった。


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