11話 『絶望に満ち溢れた学校生活』
一週間後
颯太は初登校の日を迎える。本来なら颯太は決闘の翌日から登校するはずだった。しかし魔獣の襲来によって、マリアネス王国はかなりの混乱を招いたのである。
実は魔獣は大決闘場だけではなく、国全体に大量発生したのである。そのため王国軍の兵士や各地の学校の教員たちで魔獣の討伐をしていたのである。
颯太は登校初日からブルーな気持ちになっていた。なぜなら颯太はミノタウロスの討伐後にリーナからパーティの加入を要求されたからだ。
今までも他の冒険者からのパーティの誘いを受けていたことはあったのだが、颯太はそれを全部断っていた。しかし今回は決闘で、颯太が敗北したということになっているから、リーナの言うことを聞かなければならない。そのため颯太はリーナのパーティへの加入を受け入れなければならないのである。
「はぁ~、なんでこんなことになったんだろ~」
こんなに絶望しながら初登校をする人間を見たことがあるだろうか?
「うっせー! 語り手、黙ってろ‼‼」
颯太は私に向かって怒りをぶつけてきた。
はい……すみません……
その後颯太はしぶしぶ学校に登校すると、正門の前にはたくさんの女子生徒がいた。そしてそこには一台の豪華な馬車がやってきた。
馬車から降りてきたのはなんと、リーナ・マリアネスだった。
颯太彼女の存在に気付くと急いで木の裏に隠れて様子をうかがった。
リーナが正門を渡ろうとすると、
「「「「キャー! リーナ様ー!」」」」
という黄色い声援がうるさく聞こえてくる。
その黄色い声援の中には、「決闘の勝利、おめでとうございます!」や、「あの巨大な魔獣を倒すなんてさすがです!」という言葉が聞こえてきた。
実は颯太が倒したミノタウロスも彼女たちはリーナが倒したと思い込んでいる。
だが〝プラチナランク冒険者〟ということを知られたくない颯太にとって、この誤解は都合がよかった。
リーナに声援を送っていた連中らがいなくなった隙に颯太はこっそりと校内に侵入した。
しばらくして颯太は学長室に入ると、レージス学長と一人の青年がいた。
颯太はこの青年を見ると、高い魔力を感じて少し警戒した。
(コイツ……強い!)
「こらこら、そんな驚かなくても。紹介しよう! 彼はこれからお前さんが入る1年1組の担任……フリック・メイナード先生じゃ!」
「何だ、担任の先生か……」
レージス学長の紹介によって颯太は警戒を解いた。
「こんにちは! 僕のことは気軽にフリックと呼んでくれ!今から僕たちの教室を案内するからついてきてくれ!」
白髪で狐目の美青年は颯太を教室まで案内した。
「いや~すごいね! あのミノタウロスを倒したのは君だろ?」
「あんた、よく俺が倒したってわかったな?」
颯太はフリックの方を向きそう聞くと、
「ミノタウロスの残骸に残っていた魔力を調べればすぐにわかることだよ!」
と髪をワサッと靡かせながら答えた。
「ウゲッ! こいつナルシストかよ! だがイケメンだからか、それが様になっているのが余計にムカつく!」
颯太はフリックに聞こえないように毒を吐いた。
「さぁ! ここが君の教室だ! 準備はいいかね?」
「あの~、ミノタウロスのことは黙っといてくれないか? 俺はこの学校で静かに過ごしたいんだ!」
颯太がそう頼むとフリックはワサッと髪を靡かせて承知しドアを開けた。
「みんなー! 編入生の紹介をするから座って!」
とフリックが言うと、全員席に着き始めた。
(俺はこのスクールライフを静かに過ごしたいんだ! そのためにもあいつと一緒のクラスにはならないことを祈るぜ!)
颯太はそう思いつつ教室の中へ入った。
「初めまして! 新しくこのクラスに入ることになった雨宮颯太です。よろしくお願いしまビデボブフゥ!?」
颯太はあまりの驚きで舌を力強く噛んでしまった。
颯太の目の前にいたのは、マリアネス王国第三王女……リーナであった。