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「まずは麗子からだな」と言いつつ、よっこいしょとつぶやいて立ち上がりパソコンを巫子の前へと持っていった。後ろからは真魅が「おじいちゃんじゃん」と笑いながら言っているが無視しようと決めた。
「まず、探偵研究会の連中に頼んで麗子と連絡とれるようにした。」
そう言うと巫子にパソコンを見せた。画面の向こうには黒髪のお嬢様がこちらを見つめていた。
「巫子!それに晴屋の想思さんですね。こんにちは」
「なんで、麻友に対して何も連絡を取らなかった?」
そう聞くと麗子は疑問を浮かべながら、「私は話しましたよ。麻友に。巫子に言ってくれてるはずですけど。スマホが壊れたので麻友にしか連絡できなくて。」とはっきりと答えた。
その様子にうそをついているという気配は一切ない。
「ありがとう。あとは二人でよろしくやっておいてくれ」というと、麗子と巫子は戸惑いつつも徐々に笑みをこぼしながら楽しそうに会話をしている。
やはり、今回の件はあいつが主犯だったってことだ。どうするか、巫子の判断に任せるか。
「お二人で楽しんでいるところに悪いが、少し話を聞いてくれ」と言うと、二人はこちらを真剣な表情で見つめてきた。
「犯人という言い方があっているかわからないが、今回の件の主犯は麻友で間違いない。自殺したストーカー君も犯人だったわけだが、あいつは誰かに教えてもらったといっていた。」
「それだけじゃ証拠にはなりませんよ。」と麗子は厳しい表情だ。友達が疑われているなら仕方ないだろう。
「ストーカー君と麻友は知り合いだったことが分かった。というのも、ストーカー君が麻友をストーカーしていた。そこを上条先輩に助けられたってことがあったようだ。ここは話しても面白くもないし割愛するぞ。ストーカー君はその時はまだまともだったんだな」俺は話しを続ける
「自殺の後にストーカー行為が続いた、しかも悪化したようになったのも、部屋に入れる麻友だからできたんだ。そのせいで、視線は巫子が一人の時に多かった。一人になったからではなくて、一人の時にしかできなかったんだよ。いつもは麻友が隣にいたからな。」
「麻友が巫子、お前を気にして守っていたんじゃない、お前を見張っていたんだよ。巫子がほかの友達や知り合いにストーカーのことを相談しないかな。しかも、あいつはお前に知り合いが寄り付かないようにいろいろしてたみたいだな。」
そう断言すると巫子と麗子は黙り、言葉も見つからないようだった。
「あとは二人がどうするかだ。状況証拠しかないといわれたらそれまでだ、否定はしない。よく考えろ。」
いうだけ言ったな、そう考えるといつの間にか隣にいた真魅が「お疲れさん」と声をかけてくれた。さぁ、あの二人はどうするのだろうか。
こじつけに聞こえるだろうが、麻友という女を俺以上に知っているのはあの二人だ。決めるまで待っておくか。
しばらくたってから巫子は「ありがとうございました。」といって晴屋から出て行ったのであった。二人が決めた決断は意外なものだった。
「なぁ、真魅。まさかの結末だな。『友達は疑えない。彼女は何も悪くない』なんていうとは思わなかった。人ってのはいろいろな想いにむしばまれてるもんだな。面白い。」
「そうだね。でも、後悔することになってしまうよね。特にあの巫子って女の子はいろいろと強いよね。」
「そうだな。」と返すと、俺はこれから巫子に襲い掛かるだろう未来に思いをはせたのだった。