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晴屋~あなたの想い、晴らします~  作者: 晴屋
第一章 嫉妬
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 若い女子大生の二人組が帰っていった。片方は能天気に、片方は沈んだ表情で店を後にしていった。店内いた人も少なくなり落ち着いた雰囲気を出し始めていた。

 

 すると奥の方から細身の青年がやってきてカウンターに座ったのだった。座ると同時に、「適当に頼むわ。」とずいぶん勝手な注文をしたのであった。

 

 遊人はその様子になれたもんだと言わんばかりに黙々と作り始めるのであった。作り終え出すとともに遊人はカウンターに座っている想思に声をかけたのだった。


 「お前、ずいぶんと外面はよくしてるみたいだな。さっきの二人組はお前の依頼者みたいなやつらだろ?どっちだ、あー、不安そうな表情してる女の子の方か?」


 「あー、晴屋ん中にいる時はな。そっちのほうが人受けがいいだろ」とぶっきらぼうに答えるのであった。話したとおりに彼は笑顔ではなく不機嫌そうな表情であった。


 「しかし、麗子ねぇ。ストーカー問題だけかと思ったがまだなんかありそうだなー。意外とめんどくさそうで何よりだよ。」


 「また、いつもの暇つぶしっていうつもりなのか?そんな慈善事業ばっかやってないでちゃんと本業もこなしたらどうだ?」


 会話から二人の付き合いが長いことが伺えた。しばらく雑談をしていると、チリンと鈴の音が聞こえた。店内に誰かやってきたようだと分かると遊人はすぐさま、「すいません。今日はもうクローズなんです。」と声をかけた。


 「想には飲ませるのに私には飲ませる酒はないのかい?」


 どうやら店内には言いてきたのは吟子だったようだ。吟子と分かるやいなや、想思はバツの悪そうな顔をして店から逃げようとした。しかし、遊人はすかさず想思が逃げないように声をかけるのであった。


 「想、今日は吟子の話をちゃんと聞いてけ。わざわざ、お前を探してここまで来てんだぞ。」


 想思はちっ、と舌打ちをしつつも渋々、カウンターに座りなおした。そして、「用件は?」とぶっきらぼうに吟子に尋ねた。


 「『晴屋』のあんたではなく、祓い屋としてのあんたに依頼だよ。今度、私たちとある場所に行ってほしんだよ。あの可愛い嬢ちゃんの依頼が終わってからでいいんだよ。あんたの力を借りたい。あんたとしてはしたくない稼業かもしれないけどここはどうか頼む。梓もかかわるんだ。」

 

 なんだよ、いつも違って真剣に頼んできやがって。断りづれぇなー、遊の野郎も見て楽しんで笑顔でいやがる。祓い屋関係か、かかわりたくはないが昔のよしみでもあるし恩を売っておくということも大事だよな。


 勝手に自分で納得してしまったが悪い決断ではないだろう。


 「分かった、その依頼受けてやるよ。あの巫子ってやつのが終わったらな。」


 「恩に着るよ。ありがとう」というと吟子は遊人と話し始めたのであった。


 しかし、麗子か。ストーカー問題と何らかの関係があるのやらないのやら。とりあえずは真魅の報告待ちか。よくありそうな好きな人の取り合いとかではなさそうだしな。


 一番、わかんねーのが見てるだけってとこなんだよな、危害を加えるまでいかなくても、接触すらしてないとこが不思議だ。気づいてほしいわけではないのに毎日見ている。どっちにしろ碌な奴じゃねぇな。

 

 想思は真魅の報告に期待しつつも何とも言えない不安が頭をよぎる。




 昨日は吟子に依頼もされるし散々だったな。しかしここは、相変わらず薄気味悪い場所だな。晴屋に向かう廊下を歩くときにいつも感じる。大体、胡散臭い名前しかねーからしょうがないか。そう考えたら晴屋もかなり胡散臭いなと自嘲気味に考えながら廊下の突き当りまで進んだ。


 日の高い昼間であるのにもかかわらず薄暗い道を進んでいると「探偵研究会」と書かれた扉のドアが突然開いた。


 すると、空いた扉から手だけが出ると「これが真魅に頼まれたもの。確かにわたしたからね。」とだけ言い、紙袋を想思に手渡すと扉をしめたのだった。


 「相変わらずだな。ありがとよ。なんかあったらお互い様な」と閉ざされた扉に向かって言った。


 これで何とかストーカー問題は解決するだろ。と考えながら晴屋と書かれた看板のある部屋に入っていった。ふう、と息を吐きつつソファに座った。「じいちゃんみたい」と突然、声が聞こえた。


 「真魅、お使いご苦労さん。これで解決するだろ。問題解決で心が晴れるなんて楽だな。金はいくらにしとく?」


 「想思が決めたらいいんじゃない。」とぶっきらぼうに答えられた。真魅は興味なさそうにその長い黒髪を弄んでいた。今度、飯でも連れてくかと考えつつ、渡された紙袋の中身に目を通すことにした。


 

 巫女の視線に関しての報告


・視線は総宗大学芸術学科の二年の男性であると考えられる。

・ストーカー気質であることが一年時から判明しており、巫子の視線を感じたという時期から、彼のSN

 Sでの投稿にストーカーが疑われるものを発見。

・彼がどうやって巫女を発見したかは不明。自宅特定だけが行われ、接触が何もないことの理由は不明。




 一通り大事なとこは目を通したかな。こいつで決定か。後はどうやってこいつに辞めさせるかだな……


 「おい、真魅。」と声をかけると髪を弄ぶのをやめこちらに視線を移した。「なに?」と聞き返した。

 

 「今日の夜に巫子をストーキングするぞ。ストーカー君がいたら直接対決だ。」


 まぁ、行き当たりばったりだが仕方ない、やるかと考えていると、真魅は「楽しみだね。」といい、口元を綻ばせていた。


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