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晴屋~あなたの想い、晴らします~  作者: 晴屋
第一章 嫉妬
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3

 吟子さんに扉を開けてもらい中に入ったが仕切りがあり、中の様子が十分には見れなかった。

 

 「なるほど。其れに関しては私の方でもう少し何とかしてみますね。」

 

 「ありがと。お礼は言われた通りにすればいいのよね。最後までよろしく。」

 

 仕切りの先からは男と女の声が聞こえきた。すると、仕切りの先から派手な格好をした若い女性が表れ、こちらを見ると小さく舌打ちをし、不機嫌そうに部屋から出ていった。


 すると吟子は「失礼な奴だねぇ。」と呟きながら笑っていた。すると突然、

 

 「どちら様かな。」

 

 優し気な声が奥から聞こえてきた。すると吟子は部屋の奥へと進み巫子は遅れじとその後をついていくのだった。


 「想、あんたにお客だよ。じゃあ、お嬢ちゃん。私はこれで失礼するよ。長居はしたくないんでね。」

 吟子はやることはやったしという雰囲気を出し部屋を出ていった。


 巫子は彼女の後ろ姿に、「案内ありがとうございました。」と声をかけると、彼女は振り返り優しく微笑みながら立ち去っていった。巫子は吟子に「想」と呼ばれた人物を見ると、想はバツの悪そうな表情で微笑んでいた。


 「気を使わせてしまったかな。吟子とはいろいろとあってね。僕はこの『晴屋』の主人である想思というものです。あ、主人と言ってもただのサークル長だよ。君は?」


 「私は巫子です。突然、来ちゃってしまってすいません。」

 お互いに吟子が作り出した気まずさを消すかのように自己紹介をした。


 なんだか、吟子さんは嫌っていたみたいだけど普通にいい人みたいだな、と呑気に考えていたら、想思さんにソファに腰掛けるように促された。


 「それで、巫子さんは一体、どうして晴屋に来たのかな?ここに来るということは何らかの気持ちを晴らしたいってことかな。」


 「はい…、誰にも相談することはできないことがあって。五月末から視線を感じるんです。大学にいる時も通学の電車や歩いてる時も。でも、誰もいないんです。ストーカーなのかなとか思ったんですけど、何もしてこないんです。ただ、見てるだけ。自意識過剰とかきのせいとかじゃないんです…絶対」

 

 思い切って言ってしまうと次々と言葉が溢れ、感情が言葉と一緒に高まってしまった。想思さんはどんな反応をするんだろう。はじめて人に打ち明けたため、どんな反応をされるのか分からなく想思さんの顔が見るのが怖いと感じた。そっと想思の顔を見ると優しげな表情を一切崩さずにソファに腰掛けていた。


 「なるほど視線を感じるか…。女の子にとって気味が悪くて怖いし大問題だね。巫子さんはその問題がどのようになれば心が晴れるのかな?」


 想思の反応は余りにも感情がなく事務的ではなく温かみが感じられた。しかし、どこか違和感があるが、助けてくれる人であると考えたら気にはならなかった。相思は柔らかな表情をし、こちらを見つめている。そしていくつかの質問をして答えたりをしたが終始、優しそうな表情をしていた。

 

 そして、ついに本題と言わんばかりに想思さんはこちらに身を乗り出し質問してきた。


 「私は視線の原因がなんなのか、あとはその行動をやめてくれるだけでいいです。」


 「そうか、視線の原因を突き止め、そして止めさせることが今回の巫子さんの依頼だね。すぐ解決とはいかないし、ボランティアなんかじゃないからお金をいただくことになるけど構わないかな。」


 やっぱり、お金はかかるか、でも早く解決されるなら仕方ないか。想思さんに早く解決してもらおう。そう考え想思の話に承諾の意を告げた。


 「依頼は受けたよ。初めに視線の正体を調べないとだから数日の時間を頂こうかな。そうだなぁ、五日後にまた連絡するよ。其れまで気を付けてね。」

 

 そういうと想思は巫子と連絡先を交換し安心してねと声をかけた。

 

 晴屋にきてよかった。五日後まで想思さんが頑張ってくれるみたいだし、安心して待ってよ。単純に信じすぎているかもしれない。だけども、追い詰められた今では藁にも縋る思いに近いのだ。


 「それでは五日後にね。」と想思に言われ、晴屋を出た巫子は期待を胸に膨らませながら部屋を出ていったのであった。


 「ちっ、めんどくせーなぁ」

 

 思わず口に出してしまった。ビッチが上手く彼氏と別れる様にしてやったってのに舌打ちして出ていっただけでイライラするのに、吟子が変な奴を連れてきやがった。何も詰めた会話をしてねーのに安心して信頼してますって顔で出ていきやがった。


 視線が気になるか……。ストーカーとかだろう、めんどくせぇ依頼を受けてしまった。まぁ、何か重い想いがまとわりついてそうだったからな、面白そうではあるか。ぐちゃぐちゃした強い感情を感じたし、いい暇つぶしにはなるか。


 「想。いい人演じてんだからもっと徹底したほうがいいよ」


 「分かってるよ、真魅。ストーカーの件、探偵研究会の奴らに頼んでおいてくれ。貸しは大きくあるはずだからな。」


 真魅に頼んでおいたし、梓が調べてはくれるだろう。とりあえずは調査がおりてきたら行動が開始かな。しかし、視られるね。想いもまとわりついてたし、ただのストーカーの話で終わるというわけでもないかもしれないな。


「想、さっきの彼氏さんと別れたいですって依頼はどうする?まだ、解決していないって言ってたけどさ。」


「それはもうじき何とかなるだろ。たぶん、彼氏に振られるだろうな。今頃、あの女の浮気の証拠とか彼氏が入手しているはずだしな。」


「そっか。でもいい人演じてるんだからそんな手法以外に解決手段あったよね?」


「あんな態度されたんだ。こっちの気も少しは晴らしてもらうさ。因果応報とはいい言葉だとは思わないか?」


 俺は笑って真魅に言うが真魅はそっかぁと気にしていないようだった。 まずは、巫子とやらの心、晴らしてやるか……


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