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依頼を受け二人は廃校の何かを解決するために群馬へと向かった。道中で梓と吟子にも合流し、小旅行のように穏やかな旅路であった。
運転中の梓、隣で遠くを見つめている吟子、お菓子を食べている真魅、そして寝ているのに起こされてしまった俺、なかなか、統一感のない奇妙でバラバラなメンバーであった。
「それで、例の祓屋はどこにいるんだ?」と聞くと、「少し早くついているはずだよ。明日、現地で合流の予定だね。」とだけ言われた。
祓屋、俺も祓屋と言われたりしたが、それはあくまでも晴屋の中で霊を扱うときにだけ言ってるだけで、専門の奴らとは違う。流派の違いや信仰の違いが多々あれど、大きく仏教、神道、キリスト教と主要な宗教にわけられる。
相手するのは怪異や悪魔なんてのが主だ。日本なら神道、いわゆる陰陽師系か仏教だろうなとは思いつつも話を待った。
「なんだい、神妙そうな顔をして。祓屋のことかい?今回は神道だよ。安心しなさいな。」
吟子は笑いながら言うが、神道系は宗派こそ少ないが流派、いわゆる家同士の名誉争いが強すぎて、逆に厄介な連中なんだよ。出世欲名誉欲ギラギラって感じだし。
しかも、坊さん連中みたいに見た目、落ち着いてる感じを装う仏教系連中とは違って、見た目も中身もバリバリ実戦向けの連中が多いし……。有名どころだと困るんだがなぁと思い「名は?」と聞いた。
「弓削家の者だって聞いただけだから名前は知らないな。」
と梓はほかにもなにかいっていたが、俺は自身の悪い予感が見事に的中してしまったことに、ショックを受けて最後まで聞こえていなかった。
悪すぎる、弓削家と言ったら古株で力のある家だ。家長レベルの奴はまず出て来ないだろうが、それなりに力のあるやつなのは間違いないな。嘘で名乗れるほどやさしい看板ではない。
一気に憂鬱になってきたなと、気分が落ち込んでいる想思に比べ、他の三人は明るく旅路を楽しんでいるのであった。
「ついたぞ」と梓がいうと、確かに車は停車していた。しかし、不気味な廃校が姿を表すわけではなく、飲み街ともみられる駅前のホテルであった。
「このホテルが宿になる。個室だから十分に疲れをとってくれ。明日の午後から例の学校に向かう。」とだけ言うと、車を止め吟子と一緒に中へと入っていった。
部屋に入りしばらくすると、真魅が部屋を訪れてきた。
「女性が簡単に男の部屋に来るのはよくないらしいぞ?」と冗談っぽく言ってはみたが、真魅は何も気にせずベッドに寝転がるのだった。
「弓削家ってあの弓削だよね。」と真魅にしては珍しく機嫌が悪そうである。
真魅は基本的に祓屋の連中が嫌いだ。まぁ色々あったから気持ちもわからなくもないが。しかも、神道の名家の弓削の人間なんて真魅からしたら最悪だろう。真魅の気持ちを察して、「気にすんな」とだけ言っておいた。しかし、真魅はまだ不貞腐れたようにぶすっとしている。
「弓削の者だろうが、俺らは特に何もしなければ大丈夫だ。最悪、来る火の粉は祓うだけだしな。そんなに気にしても仕方ないぞ。仮に、弓削と徹底抗戦になってもしっかりと逃げずに最後まで暇つぶし付き合えよ。」
一応、守ってやるからなと言うと、真魅は満足したように嬉しそうに笑いながら、「合格」とだけ言った。
何が合格だよと思ったが嬉しそうにしているので、まぁなんかよかったんだろと適当に考えていると、真魅はベッドの上で寝てしまっていた。
「人のベッドで寝るなよ。まぁ仕方ない。おやすみ。」
真魅に聞こえているかはわからないがつぶやき、一緒の部屋で寝るわけにもいかず、部屋を出ようとすると「甲斐性なしのチキン」とつぶやく声が聞こえたが、何も聞こえなかったことにして、「寝ろ」とだけ言って部屋を出るのであった。