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麻友が出て行って数時間が立ったが私は何も考えられなかった。ショックが大きすぎて何も頭が働かなかった。こんこんと玄関の扉をノックする音が聞こえる。誰だろう、こんな夜遅くに、もしかして麻友かもと期待をして急いで玄関へと向かう。
覗いてみても誰もいない。
しかし、そのノックの音は止まらない。「え、なんで」と疑問に思うも誰もいない外からのノックの音に徐々に恐怖を覚えていった。意を決して扉を開けてみる。しかし、そこにあるのは誰もいない廊下であった。
「開けてくれてありがとう」と耳元で声がした。
その瞬間、額には嫌な汗が流れ、恐怖で体が震え始めた。急いで布団の中へと避難し、何も見ないよう何も聞こえないよう布団にくるまりながら耳をふさいだのであった。
しばらくするとウトウトし始め、どうやら寝てしまっていたようだった。恐る恐る寝室から部屋に向かうと先ほどまでと打って変わったようにいつもの日常が戻ってきていた。
すると、いきなりメッセージが届いたことを知らせる音が鳴った。
見てみると想思さんからであり、「困ったことがあれば、明日までにはお越しを」とだけ書かれていた。もう行くことなんてないかなー、なんて思いながらスマホの電源を落とすと、その暗くなった画面には私の顔以外にもう一人の顔が映っていた。
くびをつったかのように不自然に伸びた首、顔は不気味に微笑んでいる見たことのない男の姿であった。
その顔を見るや否や私の意識は深い闇へと落ちていったのであった。
「やっぱり、スト―カー君が憑りついたね。なかなかに強いんじゃない、霊にはなりたてだけど想いの強さが尋常じゃないからね。ねぇ、どうすんの?」
真魅はいいおもちゃを見つけたかのごとく、とても楽しそうにしている。普通は楽しそうにする状況じゃないけどなーとは思ったが深くはかかわらないよう聞かないようにした。
「一応、メッセージは送っておいたが、あの様子じゃ気を失ってるな。こっちにはこれないだろうし、何とかしてやるか。仕方ないが乗り込むぞ。」
真魅にそう言うと俺は巫子の家に向かうために準備を始めた。するとちょうどよく部屋に入ってきた人物がいた。
「出かけるのかい?何があったんだい?」と部屋に入ったのは吟子であり妖艶な笑みで微笑んでいる。
間の悪い女だなと悪態をつきたい思いだったが急ぎのために手短に、「これから、祓屋としての仕事に行くんだ。」と返事をした。
「へぇ、それは興味深いな。私も同行しよう。」と吟子の隣には小柄で目つきの少し悪い女が立っていた。探偵研究会の梓だった。梓は続けて、「拒否はさせないよ。借りがあるはずだ。」と自信満々である。
「ない胸を張るな。悲しくなってしまうからな、吟子並みにデカくなったらやるんだな。それに、借りがあるのはお前らのほうが多いはずだ」というと、梓は険しい顔をして今にも飛びかかってきそうである。そんな梓を制止し、吟子は話し始めた。
「この前の依頼は、梓もかかわってるんだ。晴屋は祓屋も兼ねてるし、見せてもらうのだってかまわないだろう。」
「わかったよ。俺の言うことはちゃんと聞けよ。吟子はまだしも、梓、お前だけは確実に守るんだぞ。死ぬこともあるからな。」
奇妙な一団になってしまったなとつぶやくと、大勢で楽しいじゃんと真魅は楽しそうにしていた。奇妙な一団は巫子の家に向かうのであった。
今回は少し短いです。すみません。