メリーチャイム【冬の詩企画】
♢ 一
救急車のサイレンが鳴った
遠ざかっていく赤色灯は街の電飾に溶けていく
その時、僕は大切だった彼女の事を思い出していた
彼女が近寄って来る
その手を握ると何時も冷たかった
きっと此奴は雪女に違いない
電子レンジのチャイムが鳴った
彼女はホットミルクを冷ますのを手伝ってくれる
心配する僕の方を見て悪戯に笑うと表面に出来た膜をペロリと口にした
あぁそれ楽しみなのに
そう言って二人で笑った
♢ ニ
除夜の鐘が鳴った
ホットミルクが冷めるのを待っていると救急車のサイレンが鳴った
きっと彼処にも誰かの大切が在るのだろう
空虚は心地が良かった
大切が無ければ大切を失う事も無いから
自然に溶かされた彼女は本当に雪女だったのかもしれない
玄関のチャイムが鳴った
また誰かが、僕の大切になってしまう気がする
晴と褻のだらしは曖昧となった
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)