学校へ行こう 後編
今日から楽しいスクールライフだ!
なんて1ミリも思ってません、本当に
熱でも出てくれないかな
「おはよう、なんか調子悪いみたい」
「おはよう、仮病だな。甘えるな」
「どうしても行かなくちゃダメ?」
「行ってみたら楽しいかもしれないぞ」
厳しい...
かなり時間をかけて服を着替え、大きなリュックを持ちうなだれながら階段を降りる
「おはよう、サフィラ、グリム」
「おはよう、お父さん」
「ういー」
適当に返事をするグリム
挨拶はちゃんとしてほしい
「おはようございます」
よしよし、しっかりした挨拶は大事だよね!
それだけで印象も良くなるし
テーブルには4人分の食事が並んでいるが、座っているのは父だけだ
母はもう少し遅い時間に来るはず
「マルクスお兄さんは?」
「まだ寝てるんじゃないかな」
「そっかぁ」
「サフィラは学校に行くのは初めてだし、今日は2人で行ってね」
「はーい」
余計に行きたくなくなった
「場所なら知ってるし、オレとサフィラだけでも行けるよ」
「必要な書類をマルクスに渡してあるんだ」
「ふーん...」
そういう事なら仕方ない
不機嫌そうなグリムを膝に乗せ、椅子に座る
朝は出来るだけみんな揃って食べる、というルールがあるので母とマルクスが来るのを待つ
待つこと10分ほど
2人はほとんど同時に起きてきた
「おはよう、2人とも」
「おはよう、お母さん、お兄さん」
「おはよーございまーす」
「おーはーよー...」
「...おはようございます」
母はいつもどおり眠そうに、マルクスは無愛想に返事をする
「お兄さん、今日はよろしくお願いします」
「ああ」
嫌そうに返される
ほんとなんなんだコイツは!
仲良くする気ゼロじゃん!
あんなやつ、
「えい」
「ひゃああっ!?」
「うわっ!」
何かぷにっとしたものが私の唇に触れた
「悲鳴あげることないじゃん、傷つくー」
言葉とは裏腹に、顔は笑っている
グリムが鼻を押し付けてきたらしい
「元気出た?マルクス、お前謝れ」
「僕は何もしてない」
「サフィラは仲良くしようとしてくれてるのに、態度が悪すぎる」
「...気をつけるよ」
「そんなにしょんぼりするなよー」
そんなつもりは無かったが、かなり落ち込んだ様子に見えたらしい
頬ずりをしてきたグリムを撫でながら、マルクスの方へ目線を向ける
気まずそうに目をそらされた
「私は気にしてないよ」
「...」
「へーんーじーはー?」
「ごめん!なさいっ」
グリムに脅され、声が裏返っている
ちょっと面白い
そんな私たちの様子を、両親はそわそわしながら見ていた
「じゃあ、行ってきます」
「「行ってきまーす」」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「行ってらっしゃーい」
大きな不安を抱えつつ、私は初めての学校へと向かった