暇な1日
バルクベアが追いかけてくる
逃げようとするが、何かに邪魔をされてうまく走ることが出来ない
すぐ目の前まできた
太い腕に殴られ体が宙を舞う
感覚が麻痺しているのか痛みは無い
このまま食べられてしまうようだ
だれか、たすけて
部屋が暗い
朝まではまだ時間がありそうだ
先程の夢のせいですっかり目が覚めてしまった
枕元ではグリムが丸くなり、すうすうと息を立てて眠っている
ひっくり返して抱きしめる
「ふがっ」
うっすらと目を開け、眉間にシワを寄せているが振りほどかれる様子はない
「嫌な夢でも見たのか?」
ずいぶんと察しが良いようで
私は無言でグリムをさらに強く抱きしめた
今眠ると夢の続きをみてしまいそうだ
「寝るのが怖いなら、子守唄でも歌ってやろうか?」
からかうように言われてしまった
ちょっとムカッとしたので頼んでみる
「お願いします」
「しょーがないなー」
小さな子どもをあやすように、優しく歌いはじめるグリム
ドラゴンの言葉だろうか?
どこか懐かしい旋律を聴きながら、私はもう一度眠りについた
部屋はもうすっかり明るくなっている
グリムのおかげでよく眠れた
体を起こし、伸びをする
「おはよー、サフィラ」
「おはよう、グリム」
「もう日が真上まで来てるぞ」
「へぇっ!?」
窓の外を見ると、眩しいほどの日差しが目に刺さった
マズイぞ
こんな時間までゴロゴロしていたなんて、マルクスに余計な嫌味を言われるかもしれない
ただでさえ気まずいのに、これ以上印象が悪くなってはこの家に居づらくなってしまう
慌てて服を着替え、バタバタと洗面所に向かう
「誰も居ないみたいだな」
「マルクスも?」
「学校に行ってるんじゃないか」
そういえば昨日の夜に3人でそれっぽい事を話していたような気がする
「怒られなくて良かったー!」
学校なら毎日行くだろうし、昼間だけでも気まずい思いをせずに済みそうだ
「サフィラも明日から行くんだぞ?」
「聞いてない」
「今日言われるだろ」
「いじめられるから行きたくない」
「行く前から不登校!?」
前世では友達なんてほとんど居なかったし、容姿が原因で軽いいじめを受けることが多かった
はっきり言って、学校にはいい思い出が無い
「オレも付いて行くから、1日だけでも頑張ってみようよ」
「1度行ってみてダメだったら行かなくてもいい?」
「その時はあの2人に相談だな」
前世の話なんて出来ないし、大人しく行った方がよさそうだ
そんな話をしていると誰かが帰ってきた
玄関に続く廊下の扉から顔を出す
「おかえりなさい」
「おかえり」
「...」
返事しろよ!
ってかマルクスかよ!
がっかりだ!
「返事ぐらいしたらどうだ?その口は飾りなのか?」
「...ちっ ただいま」
舌打ちしやがりましたよアイツ!
やっぱり嫌いだ!
「本当に気に食わんな」
マルクスはリビングのテーブルに座り、宿題をやり始めた
苦手な相手と無理に仲良くする必要なんて無いよね、うん
ということで私は再びグリムを抱えて部屋に戻った
「もういい!アイツむかつくし昼寝する!」
「夜寝れなくなるぞ」
「何か紛らわせるような事無い?」
「お!駒取りあるじゃん、やろうよ」
「よっしゃ!」
「負けたら罰ゲームな」
ネット対戦でかなり得意だった、オセロと同じルールのボードゲームだ
絶対に勝ってやる!
「グリムさん強すぎ、手加減してください」
「罰ゲーム何がいいかなー?サフィラちゃーん」
「痛いのはやめてください」
結果は惨敗
5戦5敗で一度も勝てなかった
かなり悔しい
「とりあえず明日1日この服着ようか!」
「どこから出した」
「ヒ・ミ・ツ★」
黒い生地に、白いエプロン
ご丁寧にヘッドドレスやガーターベルトまで用意されている
どう見てもメイド服ですね!ありがとうございます!
...これを学校に着ていくのはレベルが高い
「帰ってからでもいいよ」
「本当に!?」
「その代わり1週間な」
「家だけなら、まあ...」
明日から帰ったらすぐ部屋にこもろう...
グリムと遊んでいると、すでに夕方になっていた




