犬猿の仲
「「ただいまー!」」
「2人とも、おかえり」
家に帰ると、すでに父と母が帰っていた
そして知らない少年がいる
歳は私より少し上ぐらいだろうか
軽くウェーブしている金色の髪に、つり上り気味の緑の目
なぜかこちらを睨んでいる
うーわ、感じわるっ!
第一印象から最悪だ
コイツとは仲良く出来そうにない
「シャーッ!!」
ほらもう、グリムなんて威嚇しちゃってるじゃん
「お母さん、話したいことってその人の事?」
「そうよ。自己紹介してくれる?」
少年が立ち上がり、お辞儀をする
「...はじめまして。僕の名前はマルクスです。これからよろしくお願いします。」
「はじめまして、私はサフィラです。よろしくお願いします。」
「オレはグリムだ!サフィラの番だ!お前とはよろしくしたくない!!」
ちょっと怒りすぎじゃない?
「だってアイツ、何もしてないのに睨んでくるんだぞ!気に入らないに決まってる!」
「僕もお前とは仲良くしたくない」
マルクスがグリムを煽る
初っ端から険悪すぎる
比喩ではなくバチバチと火花をたてるグリムを見て、部屋に逃げたくなった
「マルクスは、サフィラの婚約者だったの。でも、サフィラにはもうグリムが居るから養子としてうちに来てもらう事になったのよ」
「サフィラが学校に通うようになれば話すつもりだったんだけど...」
知らないうちに婚約破棄しちゃったから、睨まれてたのか
ってことは向こうは以前から私を知ってたって事?
「会ったことあるのに、忘れちゃってるんだね」
マルクスは皮肉っぽく言った
「それだけ印象に残らなかったんだろ」
私ではなくグリムが嘲るように答えた
空気が重い
「とにかく、マルクスは今日からサフィラのお兄さんになるわけだし、あまりケンカしないようにね?」
「努力はしますが、保障は出来ません」
「気が合うな、オレもそう思うよ」
険悪なムードに耐えられなくなった私は、まだ火花を散らしているグリムを捕まえて部屋へと逃げ込んだ
ベッドに寝転がり、グリムのお腹に顔を埋める
素晴らしいさわり心地、癒されるわー
私グリムと結婚する!あ、もうしてたんだった
「今日は早く寝よう」
「お風呂とご飯は?」
「あー...お風呂だけ入る」
着替えを持って一階に降りる
リビングでは3人が何か話をしている
私達に気づいたマルクスがまたこっちを睨む
「お母さん、私今日は疲れちゃったからお風呂に入ったらすぐ寝るね」
「晩ご飯は要らないの?」
「うん、大丈夫」
「分かったわ」
さっさとお風呂からあがり、部屋に戻る
グリムが何か言いたげだったが、私に枕にされて大人しくなった
明日が憂うつだ...