表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を直す人  作者: だしまき
5/25

ドラゴンの本領

目が覚めて目の前にふわふわした暖かいものがあったら、とりあえず抱きしめて顔を埋めるよね

あー気持ちいい、いい匂いがする


うちにこんなぬいぐるみあったっけ?




「おはよー、サフィラ」

「オ、オハヨウゴザイマス」

グリムさんでしたね、ヤバイ!めっちゃ気まずい!

「日が昇ったし、朝ご飯探しに行こう!」


気にしてないみたい、よかった〜


グリムは器用に扉を開けて、階段を降りていく


「おはよう、グリムとサフィラ」

「おはよう、お母さん!」

「おはよーございまーす」


母は私の分の朝ご飯とお弁当を用意してくれていた


「今日は話したい事があるから、夕方には帰ってきてね」

「はーい!」


父と母が仕事に向かう前に朝食を食べ終えて、お弁当と水筒を持ちグリムと共に森に向かう





「もう一度昨日の花畑に行きたいなー」

「そうだな、バルクベアの肉に釣られて魔獣が集まってるかもしれないしな」

「魔獣じゃなくて花が見たいのー!」

「昨日の夜派手に暴れたし、怖がって逃げちゃってるんじゃないか?」

「花が逃げるの?」

「アイツらかなり臆病だぞ」




疑問を抱えつつ昨晩花畑だった場所に着くと、花畑どころか草の1本も無く地面が剥き出しになっていた

そうか、この世界では花って自力で動けるものなのか...




「お!予想通り!」


グリムが声を上げる

目線の先では、狼のような魔獣の群れが10匹ほどでバルクベアの死体に群がっている

近づくの怖いなぁ

「どうする?ここで待ってる?」

「安全な方がいい...」

「じゃあ一緒においで!」


腕を咥えられ、少し強引に連れて行かれる

グリムを信じよう、なんとかしてくれる、たぶん、おそらく、きっと...



魔獣の群れから10mも離れていない場所まで来た




「ぴいい!」


グリムの声に気付き、狼達が一斉にこちらを見る

非常に逃げ出したい


「ぴい」


私の前に立ち、構えるグリム

あんな数どうするつもりなんだろう



「オオーン!」


他のものより一回り大きいリーダーらしき個体が吠えた

それを合図に群れが私たちを囲い込む

見えない場所にも待機していたようで、ざっと見ただけで30匹はいそうだ



「昨日の雷撃カッコよかったな!ちょっと練習してみる!」


こんな時に何を言ってるんだコイツは

そもそもあれは魔方陣の刻まれたルーンが無いと使えないし、私もグリムもそんなもの持っていない

「そんなもの無くても魔法ぐらい使えるって!でも、これは初めてだし手加減できないかもなー。危ないからもっと近くにおいで」


離れろって言うんじゃないんだ...

大人しくグリムのそばに行き、抱き上げる

狼達がジリジリと近づいて来ている


「せい、やっ!」


気の抜けた掛け声と共に、全ての狼の真上に黄色に光る魔方陣が描かれる


「とおー!」

「きゃあ!?」


魔方陣が強い輝きを放ち、轟音が鳴り響く


「うまくいったな!オレ天才!」


頭だけを雷撃で撃ち抜かれ、狼の群れは1匹残らず絶命していた






「これどうするの?」

「全部食べるよ。これだけあれば半年は持ちそうだし。サフィラも食べる?」

「ちょっとだけ貰おうかな」

「分かった、血抜きしてくる!」


幸い川が近くにあったので、(グリムが)狼を運び、(グリムが)首を落として水にさらした

すごーい!ドラゴンって小さくても力持ちなんだね!

5歳の小娘が出来ることなんて何もありませんね!


「これでよし!」

「何か手伝える事ある?」

「食べられない部分って大体売れるし、洗ってくれると助かる。爪とか牙は鋭いから怪我しないようにな!」

「気をつけます!」


解体された狼の骨や爪を、小さく切りとった毛皮でゴシゴシと洗う

毛は硬く、持っている手がかなり痛い

擦り傷がたくさん出来てしまった

今度からはタワシを持ってこよう



「調子どうだー?」

「結構洗えたよ」

「傷だらけじゃん!?」


だって汚れ落ちないんだもん...

骨は肉が取れればいいけど、牙や爪はなかなかきれいにならなかった


「ごめん、強くこすりすぎちゃった?」

「とりあえず手出して、治すから」

「物の方じゃないの?」

「当たり前だろ!」


物の傷じゃなくて、私の手を心配してくれていたようだ


「治すってどうするの?」

「治癒魔法を知らないのか?」

「それって大魔導師様ぐらいしか使えないんじゃ...」

「ニンゲンはそうかもな」


グリムが私の手に翼をかざした

淡く緑に光る魔方陣が描かれ、手の傷が治っていく


「すごい!ありがとう!」

「治せるけど、怪我するなよ」

「気をつけます...」

「さっきもそう言ってた」


少し怒らせてしまった

これ以上無理に洗わない方がよさそうだ


「ちょっと休憩するね。グリムも一緒に休む?」

「おう!」


作業をやめた私を見て、安心してくれたようだ

大きめの岩に座り、お弁当箱を開く

グリムは私の膝に頭を乗せて寛いでいる


お弁当を食べ終わり、解体作業を再開したグリムを眺める

手際良いな、なんて思いながら見ていると日がかなり傾いてきた





「お母さん、話があるって言ってた!早く帰らなくちゃ!」

「すぐ片付ける」


白っぽい魔方陣が描かれ、捌かれた狼の肉や骨が魔方陣に吸い込まれるようにして消えてしまった


「今の魔法は?」

「空間に干渉する系の魔法!ニンゲンには馴染み無いと思うけど、簡単だしサフィラにも教えてやるよ」

「便利そう!ぜひお願いします!」



たわいのない話をしながら、私達は急いで家に帰った


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ