真の捕食者
何が起きたのか分からなかった
目を閉じていたからだと言いたいけれど、見ていたはずの両親も目の前で起きた事を理解出来ずに呆然としている
ゴリッと何かが砕ける音がして、目を開けると頭と胴体が離れ離れになったバルクベアの前に、返り血で染まったドラゴンが立っていた
「あなたが倒したの?」
「ぴい!」
嬉しそうに返事をしてくれるドラゴン
そのままバルクベアの頭を引きずって私の前に持ってきた
こういう時って受け取って褒めるのが良いんだよね
飼い猫とか、取ってきた獲物を分けてくれたりするし
「ありがとう!すごいね!」
「くるるるぅ♪」
褒められてご機嫌になったドラゴンを抱きしめる
血だらけになったけど我慢しよう、この子がバルクベアを倒してくれなきゃ私達は間違いなく死んでいた
ドラゴンからバルクベアの頭を受け取った私を見て、両親は考えることをやめたようだ
「...連れて帰ろうか」
「そうね、サフィラがいれば暴れないでしょうし...」
「いいの!?」
両親の発言に思わず喜んで返事をしてしまった
「その代わりちゃんとお世話するんだよ」
「それと、その子のご飯は私達じゃ用意できないから、森でサフィラがその子と一緒に探すのよ?わかった?」
2人は青褪めたまま、私がドラゴンを飼うことを許してくれた
「あなたの名前はなんていうのかなー?」
返り血で悲惨な事になったドラゴンとお風呂に入りながら、そんなことを聞いてみた
「オレの名前はグリムだよ」
「そっか、私はサフィラって言うんだ」
...!?
シャベッタアアアアアアアアアアア!!!!!
普通に返事しちゃったけど、この子今喋ったよ!?
「グリムって話せるの?」
「サフィラが番になってくれたから、サフィラとなら話してもいい」
「つがい?」
「夫婦って意味」
「夫婦になんてなってないよ!」
「エモノ受け取ってくれたのに!?」
詳しく聞いてみると、ドラゴンにとってエモノを渡すのはプロポーズで、それを受け取ってもらえると婚姻成立ということらしい
知らなかったとはいえ、受けてしまったものは仕方ないので受け入れよう
それにグリムめっちゃ強いし、この先の私の身の安全は保障されたようなものだし!
「...別れるの?」
「別れないよ」
「良かった!別れるつもりなら、あの2人殺してサフィラのこと攫おうと思ってたんだ!」
さらっと恐ろしい事を言われた
「あがったよー!」
「ああ、晩ご飯出来てるよ」
お風呂から出るとやけに豪華な食事が用意されていた
さっきグリムが倒したバルクベアの肉もテーブルの上に置いてある
「今日誕生日だっけ?」
「違うけれど、一応おめでたい日だから...」
どうやら両親はドラゴンの求婚方法を知っていたらしい
だから連れて帰ろうって言ったのか...
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
美味しいものをお腹いっぱい食べて、眠くなった私はグリムを抱えて自分の部屋に戻る
「オレはどこで寝ればいいんだ?」
「え、一緒に寝ないの?」
「一緒に寝る!」
グリムは魔獣しか食べられないみたいだし、明日は森に行かなくちゃなー
なんてのんきに考えつつ、私は眠りに落ちた