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星を直す人  作者: だしまき
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捕食者

太陽が真上から傾き始める

お昼が過ぎ、そろそろ母の帰ってくる時間だ




玄関の扉が開き、母が部屋に入ってくる


「ただいまー...サフィラ!?そのドラゴンは何処から連れてきたの!」


やっぱりドラゴンで合ってたんだ


ドラゴンを抱いている私を見て、母はかなり慌てた様子だ


「家の裏にいたの。ちゃんとお世話するし、この子とっても良い子だから、飼ってもいい?」

「...よく聞いて、サフィラ。ドラゴンはね、とても凶暴な生き物なの。今は良い子でも大人になったらサフィラの事を食べてしまうかもしれないわ。お父さんが帰ってきたら、森に連れて行きましょう」

「でも、」

「だめよ。お母さんを困らせないで」

「...わかった」

「良い子ね」


母は安心したように優しく私の頭を撫でた


くそう、反対されてしまった

本当に大人しいんだけどなぁ

森ならこっそり会いに行けるし、まあいいか...


極上の手触りが名残惜しい私は、父が帰ってくるまでドラゴンを撫で続けた

ドラゴンは何か考え事をしているような真剣な顔で、私にされるがままになっている

撫で回されるのは嫌なのかと思ったが、逃げないのでやめなかった





空が赤く染まり、父が帰ってきた

母から話を聞いて驚いていたが、すぐに森へ向かう準備を始めた


「森は危ないからね、お父さんとお母さんだけで行ってくるよ」

「サフィラは良い子で待ってるのよ」

「はーい...」

「ドラゴンをお父さんに渡してくれる?」

「わかった」


手を離し、ドラゴンを父に渡そうとする...が渡せなかった


「ぴいい!」


がっちりと爪を立て、私の腕にしがみついている

かわいい!こんなことされたら余計に離れがたくなるじゃないか!


「やっぱり飼っちゃだめ?」

「だめよ」


静かな口調で母に諌められた

こんなに可愛いのに!


父が私からドラゴンを取り上げようとするが、離れてくれない


「ぴいい!ぴいいいい!」

「サフィラから離れたくないみたいだね...森まで一緒に行こうか」

「森でも離れなかったらどうするの?」

「少し荒っぽいけれど、雷撃で驚かせれば逃げて行ってくれると思うんだ」

「魔導銃を使うの?」

「ドラゴンには魔法が効かないはずだし、そのつもりだよ」

「そう...」


母は少し不安なようだが、父はすでに準備を終わらせている

私から取り上げようとした事が気に入らなかったのか、ドラゴンは父に威嚇している

仕方ないんだってば、私だって離れたくないよ、なんて思いつつ2人に連れられて、森に向かった





日が沈んだ後の森はかなり怖かった


きゃあきゃあと女性の悲鳴のような声で鳴く鳥や、赤ん坊ほどの大きさのナメクジにヒル、目が4つある鹿や、毛のない猿のようなものが至る所にいる

朝は居なかったのに一体どこに隠れていたんだ、ぶっちゃけキモイ



「相変わらず妙な生き物が多いわね」

「あまり人が来ないから、森の手前まで出てきてしまっているんだろう」


父と母に挟まれ、さらに奥へと向かう



夜なのに色とりどりの花が咲き乱れ、噎せるほどの甘い匂いが充満している場所に着いた

昼ならもっと綺麗なんだろうなー

道は覚えたし、また来てみよう


「この辺りでいいかな。サフィラ、ドラゴンを置いてくれる?」


ドラゴンを地面に置こうとしたが、やっぱり私にしがみついてしまう


「ぴいい!」


なんだかこの子、怒っている気がする


「サフィラにくっついたままじゃ、撃てないわ」

「とりあえず上に撃ってみよう。音で驚いてくれるかもしれない」


父が魔導銃を構えて上に向け、引き金に指をかけたその瞬間




「ギャアアアアアアア!」



朝の奴だ!

熊のような体に虎のような頭が付いている

尻尾は長く、鱗が生えているのか、月の光に反射してヌルヌルと光っている


「どうしてこんな場所にバルクベアが!?」


父はそのまま、魔導銃をバルクベアと呼ばれた生き物へと向けて撃った



「ゴアアアアアアア!!!!」


顔に命中し、少し怯んだがあまり効果は無さそうだ


暗くて分かりにくいが、左前脚に何かに引き裂かれたような大きな傷がある

塞がっていないようで血が滲んでいる

雷撃ではこんな傷はつかない、今の銃で撃たれたものではないようだ


「お父さん!あの魔獣、左手に傷がある!」

「わかった!」


バルクベアが走り出す!

蛇行しながら、かなりの速度でこちらに向かってくる

父は何度も銃を撃つが当たらない

このままでは全員殺されてしまう

思わず目を閉じ、母とドラゴンを強く抱きしめる


せっかく美少女に産まれたのに、子供のうちに死んでしまうなんて...

なんて不運なんだ!




「くくっ」




腕の中にいたドラゴンが嗤った気がした





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