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星を直す人  作者: だしまき
23/25

魔獣の楽園 ドーリンの谷

あれから一夜明け、馬も落ち着いたので移動が再開した

それからも馬車の故障や馬の怪我、御者が体調を崩したりなどトラブルが続き、予定より大幅に遅れて漸くドーリンの谷へ到着した


「やっと着いたよ…」

先が思いやられる

「サフィラってトラブルメーカーなんじゃないのか?」

たしかに、前世でもなぜか私の周りでは事故がよく起きていた

何度病院に担ぎ込まれる人を見たか…

今回は死人が出るかもしれない

「冗談だって」




「キャンプを設営するから、サフィラちゃんも手伝ってほしいな〜」

「何をすれば良いでしょうか」

「魔獣が来ない場所を探してもらいたいんだ!」

「ここにそんな場所あるわけないだろ」

あまり来ない場所も無いの?

「来にくい場所ならあるけど、普通のニンゲンじゃ辿り着けないね」

詰んでる


「拠点を作らなきゃ、調査も出来ないよぉ…」

「この辺りにいる魔獣を狩り尽くす、とか?」

「良い案だな、ここをオレたちのナワバリにしちゃえばいいのか」

「そんなこと出来るの〜?」

「皆殺しにするだけだし、簡単だろ。じゃあ行くか」

よし行こう!すぐ行こう!まだ食べたことのない肉が私を待っている!





「流石に多いなー」

角の生えたウサギのコロニーを制圧する

これで3つ目だ

「どれぐらいの範囲を掃除すればいいの?」

「最低でも半径10kmくらいかな」

かなり広い…

「あんまり狭いと、すぐに侵略しようとするのが来るからなぁ」

グリムが木や地面に爪跡を付けていく

「これでナワバリって分かるの?」

「警戒してくれるようにはなるよ」

ウサギを片付け、次のコロニーへ

「次はフェルバードだな!美味しいぞ!」

「狼よりも!?」

「アレの3倍は美味しいかな」

「食べたい!」




見晴らしの良い草原、馬っぽい生き物が群れを作っている

「あれがフェルバード?」

「そうだよ。脚の付け根が特に美味しい」

どう見ても鳥に見えない

脚、4本あるじゃん

「走りやすいように進化したんだ。そのかわり翼が無い」

意外と理にかなっている

丸まった大きなクチバシで、目は小さいがくりっとしていてよくみると結構かわいい

「馬の代わりに出来ないかな」

「それなら、こっちより二足のランダーの方がオススメ」

「どうして?」

「ランダーは卵から育てればニンゲンにも慣れるからな」

「ここにもいる?」

「居るよ。あとで探しに行こう」

美味しいものがたくさんあるので、かなりやる気が出てきた

来てよかったなぁ、ドーリンの谷




フェルバードを一羽残らず捌いた後、私たちは抱卵中のランダーを探すことにした


「いないなぁ…」

「今は繁殖期だし、どこかに隠れてるんだろう」


拠点にする予定の場所からかなり離れてしまったが、みんなは大丈夫だろうか

「あの辺りの魔獣はほとんど狩り尽くしたし、大丈夫だって」

ならいいけど…




「あそこに居るかも!」

…滝?

「滝の裏側がちょっとした広場になってる。行こう!」

行こうって、どうs「ひゃああああああ!?」

言うや否や翼をたたみ、上空から急降下するグリム

その勢いのまま水の壁を突き破り、滝の裏にある空間に飛び降りた

「先に言ってよ…」

「ちょっとイタズラしたくなったの!それよりほら、居たぞ!」



周りをみると、やけにふさふさとした鳥が二羽ずつ座っている

「あれがランダー?」

「そうそう!大当たりだったな、みんな番だ」

触り心地良さそうだなぁ

「気に入った卵だけ取って、さっさと出るか」

「ここにいる大人のランダーは食べないの?」

「子育て中のやつまで食べちゃったら、次の世代が育たないじゃん」

「なるほど…」

「どれがいい?」

どれ、と言われても分からないなぁ…

「直感で良いんだって」

たくさんいる番の中で一際毛並みが良く、銀色に輝いているようなものがいる

「あの卵!あの子が良い!」

「よーし!」



「グルルルル」

番に近づき唸り声をあげる

「チュピィ!チュピィ!」

怯えたランダーは卵を抱くことを放棄して離れていった

二羽が居たところにしゃがみこみ、大きくて優しい温もりのある卵をそっと持ち上げる

盗むような真似してごめんね。大事に育てるから


「すぐに離れようか」


卵を落とさないように抱え、グリムの背に乗る


「どれくらいで産まれるの?」

「30〜40日ぐらいで産まれるはずだ」


どんな子が産まれてくるんだろう、楽しみだなぁ




拠点に戻り、ロレンスに報告する

「魔獣の掃討終わりました」

「ありがとう!サフィラちゃんは頼りになるな〜」

「いいえ、私だけでは何も出来ません。グリムのおかげです」

グリムが居なければただの子供だ

「謙遜しなくていいんだよ〜。グリム君が居なくたって、サフィラちゃんはすごいと思うよ〜」

「分かってるじゃないかロリコン」

「そのロリコンって言うのやめてよ…」

「事実だろ」

「俺がロリコンなら、君もロリコンでしょ!?」

「オレは手出すつもり無いし!」

分かってるけど、はっきり言われるとちょっと傷付く

「年齢的に…」

それぐらい分かってるもん!あと10年経ったらすっごい美少女になる予定なんだからな!


「おおお、俺だって無いよ!?」

かなり動揺している

え、もしかしてマジのロリコンだったの?キモイ

「あわよくば、とは思ってるだろ」

「…」


そこは否定してよ!

「…気持ち悪い」

おおっと思わず声が漏れた


「いや、ちが、そんなつもりじゃ」

「…サフィラ顔怖いぞ」

嫌悪感が顔に出てしまっていたようだ

「すみません」

「こっちこそ、その…」

「失礼します」

「え?あ、待って」

「失礼します!」

「サフィラちゃん!」



走って逃げる、2度目

もう顔を合わせたくない

「シルフィードのところ行くかー?」

「行きたい!」

「谷の端だし、ちょっと遠いけど大丈夫か?」

「私は平気だよ。グリムは?」

「さっきたくさん食べたから問題無いよ。行こう!」

再び地面を蹴り、空を舞う

日が傾き始めたせいだろうか

先ほどよりも空気が重い

「雨が降るかもな。急ぐぞ」

速度が上がり、翼の先が風を切り音を立てる

いつか、自分にも翼が欲しいな




その願いはそう遠くないうちに実現してしまうのだが、今の私には想像もつかない事だった


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