バルクベアとの戦い
グリム視点
『』内は他人の心の声
挑発に乗ったバルクベアが飛びかかってくる
知能の低い獣は単純でいいな、やりやすい
「ギャアアアア!!」
振りかぶられた腕を躱し足を付け根から噛みちぎる
生暖かい血が顔にかかる
口元についたものを舐めとる
『うわあ、舌舐めずりとか悪役っぽい』
「そんなつもりじゃないのに、サフィラ酷い!」
『似合ってると思うよ、うん』
「ギィイ!?」
突然の耐えられないほどの痛みに、オレの前だということも忘れ無様に悶えている
甚振る趣味は無いが、親も誘き出したい
もう少し悲鳴をあげてもらおうか
頭を殴る
「ギッ、ギィィ」
困ったな、もっと叫んでくれないと親が気付かない
だが既に死にかけている
少し弱らせすぎたか
仕方ない、治癒魔法をかけてやる
これで叫ぶくらいは出来るだろう?
『わざわざ治してまで痛めつけるとか、加虐趣味でもあるのかな』
「違うって!親を誘い出すの!」
殺さない程度に加減して首を噛む
「ギィイイ!?」
よしよし、良い子だ
「ギュイイ!ギュイイイイイイイ!!」
ちゃんと助けを求めてくれている
上から殺気を感じる
崖から見ていたのか、気付かなかった
オレも鈍ったなぁ
「ゴアアアアアアア!!!」
怒ってんなー当たり前か
『来たよ、どうしよう』
「任せとけ!」
『めちゃくちゃ怒ってるよ!?』
サフィラは心配性だな
用は終わった
これ以上苦しませる理由も無い、首の骨を噛み砕き子供にトドメを刺す
『使い捨てか…容赦無いな』
「サフィラはオレをなんだと思ってるんだ…」
『捕食者?』
「間違ってないけどさ!」
「グオアアアアアアアアア!!!!!」
さらに怒るお母さま
すぐに愛しい子供に会わせてやるよ
駆け下りて来た母親の前足を払い、仰向けに押し倒し喉元に食らいつく
「ギャアア!!」
流石にデカイな、噛みちぎれなかった
「ヒュー、ヒュー…」
空気の漏れる音
よかった、気管までは届いてる
もう一度そこを狙って牙を突き立てる
ガリッと嫌な感触
やっぱ硬いなー
まあ良い、頸椎は砕けた
「…」
声は出せないようだが、体は立ち上がろうと動いている
凄まじい生命力だ
『まだ生きてる…』
「大丈夫、もうじき死ぬ」
動きが鈍くなり、ただ痙攣するだけになった
他にはもういないよなー?
念のため空間把握を使い、周りの様子を探る
10kmほど離れた茂みの中、巣穴らしき場所でオスのバルクベアが眠っている
バルクベアの縄張りは直径50kmほど
子育て中の母親が番ではないオスに近づくことはないし、父親だな
ずいぶん仲の良い番だったんだな
少し申し訳ない気持ちになるが、オレにも守らなきゃいけない相手がいる
報復される前にアイツも殺してしまおう
「父親がいるみたいだ。ソイツも殺してくる」
『そっちには襲われたわけじゃないし、わざわざこっちから行かなくても…』
「子供と妻が殺されれば、いずれ報復に来るだろう」
「分かった。私も一緒に行く」
「危ないぞ?」
「グリムがいるなら大丈夫」
信頼しすぎだろ、サフィラの将来がちょっと心配
「分かったよ」
サフィラが乗りやすいように寝そべる
「乗って」
『もっふもふ、もっふもふ!』
「ふわぁ…」
喜んでくれるのは嬉しいが、今から何するか忘れてないよな?
「行くぞー」
地面を蹴り、翼を広げる
体が重い…本当に鈍ったな…
反重力場を作り、無理矢理飛ぶ
魔法が使えなくなった時のために筋トレしないとな
「すごい!」
やめて!今かなり必死なの!褒めないで!
父親の眠っている巣穴に着いた
「ここにいるの?」
「そうだ。奥で眠ってる」
気配を消し、中に入る
サフィラも息を止めてオレにしがみついている
息なんて止めなくて良いのに、いちいち可愛いなぁ
「グォォ、グォォ」
イビキうるせえ!!!
わざわざ静かに近づかなくても起きなかったんじゃないかコイツ
空間を断絶し、首を撥ねとばす
向きが悪かったな…
血がこちらまで飛び散ってきた
「生々しい…」
「うわ、ごめん」
サフィラにまでかかっちゃった
父親の死体を咥え、母親と子供の死体がある場所まで戻る
「何してんだ!?」
あのロリコン!オレとサフィラの食料を燃やしてやがる!
「時間が経つと生き返っちゃうものもいるって聞くし、念のために燃やしてるんだ〜」
『ご飯が…』
ほら!サフィラもがっかりしてんじゃん!
「オレは魔獣しか食べられないんだ。次から置いといてくれるか?」
『魔獣を食べるなんて、バケモノか』
サフィラが聞いたらどんな反応するだろうな
「分かったよ、気をつけるね〜」
『父親の肉だけでも確保出来て良かった』
「他の人の前じゃ、魔獣の肉食べてるのは見せない方が良いな」
「やっぱり普通の人は食べないよね…」
ああああ!!
めっちゃ落ち込んでる!地雷踏んだ!
「マナを含んだものを食べられるニンゲンは少ないからな」
「そっか…」
ごめん、本当ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ
「グリムは美味しいと思う?」
「思うよ。美味しいから食べてる」
「そうだよね」
『グリムもそう思ってるならいいや』
良かった…
とりあえずロリコンどもにバレないように、何か考えないとな…




