教えて!グリム先生!
授業の申請は終わったが、学校の方で生徒登録などの事務手続きに時間がかかるので暇をもてあましている
「まだ連絡来ないのー!?」
「本当にな。今日でちょうど10日だな」
実に暇だ
狼の肉が余っているので魔獣を探す必要も無いし、2人で出来るものはボードゲームくらいしかない
どのボードゲームでもグリムに勝てないと悟ったので、やる気が無くなってしまった
魔法の練習も続けているが、さすがに疲れてきた
「ううー...」
「また学校行ってみるか?」
「遠い...」
「なら空間転移の練習をしよう」
「もっと早く教えてよ!」
というわけで、ついに来ましたチート技!
これさえ使えれば朝はのんびりしていられるし、帰る時も疲れなくていい!
「もっと戦術的な使い方をしてほしいんだけどな」
戦うのは向いてない
いざというときに躊躇しない訓練は必要だけど、極力争いごとは避けたい
「だからそれ使って逃げるんだって」
「グリム天才!」
なるほどね、たしかに空間転移で逃げられてしまえば、普通の相手ではもう追跡出来なくなる
早速教えてもらおう!
「まずは空間転移が出来る次元に入るための、心構えの説明からな」
わっつ?
「ここが単一次元で出来てると思ってるのか?」
一次元、二次元、三次元というやつだろうか
「それは物質。必要なのは魔法の存在してる次元の認識だ」
ふむふむ
「魔法も多次元に存在していて、性質によって属している次元が違う」
「先生、質問です!魔法の次元はどうして物質の次元に干渉出来るんですか?逆はどうして出来ないんですか?」
「不可逆性があるからだ。魔法の次元と物質の次元自体は重なってる。魔法の次元の方がもともと存在していて、後から出来た物質の次元はそっちの方向に動くことが出来ない。例外はもちろんある。マナと呼ばれているエネルギーを動かすことが、物質の次元から魔法の次元に干渉出来る唯一の方法だ」
「幻獣は魔法の次元にのみ存在してるってこと?魔獣は物質としての性質が強いの?」
「鋭いな。その認識で合ってる」
なんとなくわかった気がする
「じゃあ話を戻すぞ」
空間転移の次元の話ですね!
「まず、空間・時間は原初のものだ。だから一番低い次元に存在している」
「干渉出来ないなら高次元なんじゃないの?」
「そういう見方もできるな。世界を支えてる次元だし、低い位置にあるって考えた方がいいと思ったけど、分かりやすいように解釈してくれればいい」
「地面ってこと?そっちの方が分かりやすい」
「そうだな、とにかく一番干渉しにくい場所にあるんだ」
その時点で詰んでるんじゃ...
「出来ないことを教えたりしないって。最初に教えた、サフィラが収納って呼んでるのが空間に干渉する魔法だよ」
最初のステップはクリアしてるってことなのか
「そうそう。自分の体をその中に入れるって想像出来る?」
無理だ!怖すぎる!
「その恐怖心が、一番厄介。原初の次元は何も無いからな、精神に強く影響される。入ったら粉々になるって思えば本当に粉々になっちゃうんだ」
そんなの無理じゃん...
どんな風になってるかなんて分からないうえに、想像したらその通りになるなんてヤバすぎる
悪い想像をしてしまう自信がある
「だから心構えって言ったんだ。精神を安定させるか、魔法が自動で発動するようにして気絶して飛ぶかだな」
「どっちが安全?」
「転移先で言えば精神を安定させる方。道中で言えば気絶する方が安全だ」
つまりどちらも危険があると
「100%安全だと思い込めばいい」
「グリムは失敗したこと無いんだよね?」
「無いよ」
「なら、グリムが一緒に居てくれれば大丈夫」
「分かった。一緒に練習しよう」
グリムを抱きしめ、魔方陣を描きだす
これに入り、出たい場所を想像しつつ逆の動作をする
やる事は簡単だ
「大丈夫」
よし、いける
もう一度グリムの体温を確かめて、魔方陣に入る
本当に何も無い
目を開けているかどうかも分からない
だけど、腕の中にはしっかりグリムがいる
大丈夫だ
魔方陣を描き、森にあった花畑をイメージする
あそこなら誰も居ないだろうしね
魔方陣を潜り抜けた途端、目に突き刺すような痛みが走る
「眩しい!」
「部屋の中から暗かったもんなー」
「どう?上手く出来た?」
「ばっちり!転移場所のイメージも完璧だし、もう大丈夫だな!」
良かった、思っていたより怖くなかった
「帰りもやってみる?」
うん、一度出来てしまえば平気だ
今度は自分の部屋をイメージして同じことをすればいいだけ
「きたくーっ!」
「よく出来ましたー」
ふふん、私はやれば出来る子なのだ!
「思ってたより度胸があるな。精神操作の魔法が必要だと思ったけど、使わなくていいなら今度はもっと難しいのやってみようか」
なんでも来い!今の私は出来ないことが無い気がする!
マルクスが扉を開けて部屋に入ってくる
「理事長から手紙預かって来たよ」
来ましたね!
「ありがとう、お兄さん!」
「で、カーテン閉めて何やってるの?」
「魔法の練習!」
「ふーん…」
変な顔して出て行った
マルクスが持って来てくれた理事長からの手紙を開ける
中身は生徒証明書と、受ける授業の書かれた紙と、入学を祝う旨が書かれた手紙だった
「これで明日から学校行けるね!」
「適当に頑張ろうな」
「楽しみだなー!」
「はじめは嫌がってたのにな」
「グリムが一緒に来てくれるなら、どこだって楽しいよ」
「そっか、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう!」
マリアンネさんの事が気がかりだが、学校に行かないとどうにもならない
今日は早く寝よう!
「いや早すぎ、まだ日も沈んでないし」
早く寝よう
「ちょっと」




