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ログアウトって何ですか?  作者: しら玉草
アルファテストオートマタ13号、アレク
9/30

はぁー、楽しいなぁ

始まりの町、シニオンノビスの北に広がる大森林。

俺の種はそこにひっそりと植えられた。

この世界の神を殺す為。


俺を見つけし者に力を、神を殺しうる力を。


それがまさか…、よりにもよって…。

いや、これも因果というものに違いない。

あるいは必然だと言えよう。




────────────────────



……

僕に与えられた時間はこの世界が続くまでは無限だ。

一日24時間、寝る必要すら無い。

この世界で冒険する事、それが僕の役割。

運営が戯れに導入した最後の遺物。


アルファテストオートマタ13号、名前はアレク。


実際に人間を迎え入れたベータテストよりも前の時代。

AIの実験も兼ねてNPCの冒険者が導入されたアルファテスト時代がある。

最初は一人、調整を重ねて二人、三人とNPCの冒険者が増えていく。


しかし、13人目である僕の順番が来る事は無かった。

12人の時点でアルファテストは十分と判断されたからだ。

そしてベータテストも終わり、フェイトマイルオンラインは正式にリリースされた。


僕はその正式版に導入されることとなった。

NPCである事を隠して、プレイヤーに混ざって冒険する事が僕の仕事となった。

冒険者にNPCが混ざっているという噂を流す事で宣伝効果を得る為、と聞いている。


僕に細かい任務は与えられていない。

運営もせっかく作ったAIだからと戯れに導入したに違いない。


斯くして僕はこの世界に降り立つ事になったのだ。


しかし、しかしまさか、早々にあんな事になるなんて…。



──────────



「あの、すみません」

シニオンノビスの町を歩く一人の女性に声を掛ける。

長いスカートを履いた優しそうなお姉さん。

「はい、なんでしょうか?」

「僕、この世界に来たばかりで、まずは何をしたら良いのですか?」

「何をしても自由ですよ。犯罪行為は出来ない仕様ですからね」

お姉さんは笑ってそう答えた。


「そんな事しませんよー。そういう事じゃなくてですね」

「ふふふ、分かってますよ。まずはこの町の南に向かうと良いですよ。始めたばかりの方でも倒せるモンスターが居ますので」

「ありがとうございます、さっそく行ってきます!」

「はい、お気を付け……あ!」


僕は走り出した。……………北に。

方角を間違えた事に気付いたのは後の話だ。



北の門を抜けるとそこに広がっていたのはまるで迷路の様な大森林。

他の冒険者の姿は見当たらない。


この大森林は迷いやすいうえに通る利点が無い事で冒険者に人気が無い場所だと知ったのも、これまただいぶ後の話だ。


僕は迷いなく迷いやすい木々の中へと意気揚々と足を踏み入れた。

ただのデータとして凍結されていた僕が広い世界を自由に歩けるという事だけで気が逸る。

モンスターらしいモンスターに会う事も無くどんどん奥へと進んだ。

いや、 実際にはモンスターは居たのだが、所々で見掛けたそれがモンスターだと気付いたのはたった今の事だったりする。


丸い緑色の体につぶらな瞳。短い根っこのような足。

そして上部に向かって生える長く大きな芽。

可愛らしい植物系モンスターがそこに居た。


「…歩く植物だと思ってたけど、もしかしてこれがモンスター?」

僕はビギナーズパックで手に入れた鉄の剣を構えてモンスターと向き合う。

お姉さんは初心者でも勝てると言っていた、僕にも勝てるはず。


モンスターに剣を降り下ろすと一瞬怯んだ後此方を睨み反撃してきた。

長く大きな芽を鞭の様にしならせ叩いてくる。

驚いたのはそのダメージ、一撃で僕の耐久値の半分以上を削り飛ばす。


「…無理じゃん!次喰らったら死ぬじゃん!」

僕は次の攻撃が来る前にその場から逃げ出す。

モンスターはある程度付いて来たがしばらくして姿が見えなくなった。

走るのにアクションゲージを使いきりその場に座り込む。

上を見上げると木々が風に揺れていた。


「ふふ、あははははははは、はぁー、楽しいなぁ」


ゲームを楽しむという人間の心理はよく分からない。

僕にとってはここが世界であり、世界を走り回れる事が堪らなく楽しかった。



はい、アレクもNPCでした。

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