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ログアウトって何ですか?  作者: しら玉草
アルファテストオートマタ13号、アレク
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スローイングエッジ!

「二人はどこで狩りする予定だったの?」


僕はシニオンノビスの西マップを更に西に移動していた。

高い木々が疎らに生えたマップが見えてきたところで二人に聞いてみる。

二人、それはアコライトのモモとウォーリアーのハル。

僕にとっては初のパーティプレイだった。

モモは楽しそうに先頭を歩く、ヒーラーが先行して大丈夫だろうか。


僕の質問に答えてくれたのはハルだった。

「このまま西に行くとゴブリンが出るんだよ」

「ゴブリン!?いきなり強そうな感じ…」

「ああ、大丈夫。集落まで行かなければ弱いはぐれゴブリンしか出ないから」

「二人はもうゴブリンと戦った事あるの?」

「あるよー。負けたけどネ」

「へー…、って、ええ!?」

「今度は三人、リベンジマッチってやつよ!」

「は、ははは。大丈夫かな…」

「大丈夫よ。私がゴブリンと殺りあうから、アレクは援護して。後はモモのMPが尽きる前に倒しきれるかどうかの勝負よ!」


ハルはおとなしそうに見えて意外と好戦的なようだった。

というか、だいぶ残念な脳筋思考だった。

なるほど、モモとは良いコンビなのかもしれない。

そんな少し失礼な事を考えている間に林の様な地形のマップに到着した。

視界は悪くない、奥に行くほど木々が密集していくようだ。


先頭を歩いていたモモが踵を返す。

「さあ!着いたよ!ここがゴブリンマップの端っこあたり!はぐれて来た単体のゴブリンがターゲットだよ。だから二体以上出たら撤退すること!良いね?」


「あ、はい」

「まぁ、前回は単体でも負けたし、分かったよ」

モモの逃げ腰な案にハルは渋々承諾していた。



「で?どれくらい待てばゴブリンはぐれて来るの?」

「うーん…、あ!待つ必要は無さそうだよ。ほら」

木々の隙間からこちらへ走ってくる子供サイズの人形モンスター。

手には錆びたダガーを持っていた。


「ゴブリンきたぁ!っしゃぁ!」

走って来たゴブリンに対して走っていくハル。

戦いが始まるとまるで別人のようだった。

ハルの手には巨大な青銅の両手剣。

ウォーリアーとその上位職だけが使える両手持ちの武器、それは他の武器を圧倒する攻撃力を誇る変わりにとても重く、小回りが利かない。


ハルは巨大な剣を振り回すが身軽なゴブリンは全て避けてしまう。

一方的に攻撃されて、それをモモが回復するという何とも残念な構図。

なるほど、前回はこれで負けたのか。しかし今は僕がいる。これはパーティに誘ってもらえた恩返しとしては良い初陣となりそうだ。


シーフとなり素早さにボーナスの入った僕はゴブリンよりも早い、…少しだけだけど。

ハルの攻撃を避けたゴブリンに僕が追撃を入れる。

小さなダメージだけど確実にゴブリンを追い込んでいく。

弱ったゴブリンは動きが悪くなり、とうとうハルの大剣の餌食となった。

ゴブリンは倒れたまま動かず、光となって消え去る。


ハルは降り下ろした大剣を見つめたまま固まっていたが、ふと僕の方に視線を移した。

「…勝った?え?勝ったの?…やったぁ!アレクありがとう!」

「ハルが先陣切ってくれたおかげだよ」

その時、突然ハルが嬉しそうに高く手を上げる。

「え?」

「ハイタッチでしょ、ほら手を上げて」


「こらー!私も混ぜろー!」

そこにモモが駆け寄ってきて三人でハイタッチを交わした。

…二人とも、元気で明るい。

このパーティは今だけなのだろうか、また二人と…。




「ん?あれ何だろ?」

最初にソレに気付いたのはモモだった。

こちらに走ってくる…、大型で恰幅の良い人形の…。

手には大きな斧、豚の様な顔…。


ソレの正体に気付いたのはハルだった。

「オーク!?なんで!?ゴブリンマップよりもずっと西のモンスターでしょ!?」

「撤退!撤退するよ!せっかくゴブリン倒したのに経験値ロストは痛いよ」


三人でゴブリンマップから遠ざかる、本来ならこれで逃げ切れる。

モンスターには縄張りがあるからだ。

しかし三人とも失念していた。

あのオークはそもそも縄張りを越えてやってきていた事を。


「追ってくるよ!追い付かれるよ!」

好戦的なハルも流石に逃げる。

「あれって強いの?」

「たぶん一撃で殺られるよ!」

しかし逃げ切れそうには無かった。

なんとかしないと、せっかくパーティに入れてもらえたんだから、僕が奴を…。


「あ、スキル、修得できる」

さっきのゴブリン戦でスキルポイントを入手していたようだ。

「付け焼き刃でスキル使ったってどうにもならないよ!」

確かに、普通ならそうだろう。しかし僕には…。


僕は足を止めるとオークと向き合う、まだ距離がある、いける。

アイテムの中からミスティルテインを取り出し、槍投げの要領で構える。

「頼むよ、ミスティルテイン」


「…スローイングエッジ!」


僕の手から放たれたミスティルテインは真っ直ぐオークに向かって飛んでいく。

それは無慈悲な暴力となってオークを襲った。

ミスティルテインはオークの体に深々と突き刺さる。

しかしそれだけでは終わらなかった。

寄生木の剣であるミスティルテインから伸びた無数の蔓が更にオークに突き刺さり、引き裂き、瞬く間にオークを解体してしまったのだ。

オークの体は光となって消えていった…。


そしてミスティルテインから生えてきた蔓のうち一本が僕の方に伸び、腕に絡み付く。

「わ、わ」

『呼び戻せ』

「あ、戻れ!」

蔓を掴むとミスティルテインが手元に帰ってきた。

「…ふぅ」


その光景を見ていたモモとハルは何が起きたのか分からず、三人同時に鳴ったレベルアップのファンファーレだけが間抜けに鳴り響いていた。


「あ、えーと…。勝ったよ?ハイタッチする?」

放心した様子のハルに近付いてみる。

「…今の何?」

うん、ごもっとも。

「偶然手に入れたユニーク装備だよ」

事実だし、それ以外に説明できなかった。

「え…、すっご…。どこにあったの?まだある?」

「いや、流石に無いと思う」

「…アレクいればもっと強い敵倒せるんじゃ」

「え?どうだろう…、先制攻撃できれば…」


そこにモモが割り込んできた。

「ハル、そういうの良く無いよ。仲間利用するみたいで嫌だな」

「僕は構わないよ?」

「うーん…、じゃあお言葉に甘えようかな!フレンド登録しよう、また一緒に狩り手伝って欲しいな。何時くらいにログインしてる?」

「あ、えーと、声掛けてくれればだいたいいる…かも」

流石に毎日24時間いる、なんて言うのは不味い気がした。

「?。あー…」

あ、たぶん働いて無い人かなんかだと思われたかもしれない。

それでもNPCだとバレるよりはマシ…なのかな。



MP=マジックポイント

魔法を使う時はAPとMP両方使うので、いくらMPがあっても魔法の乱発はできません。

あとMPの自然回復はAPに比べだいぶ遅い仕様です。

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