表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログアウトって何ですか?  作者: しら玉草
アルファテストオートマタ13号、アレク
13/30

何を思うんだろうなぁ

ミスティルテインの事はしばらく置いておくとして、今は地道にレベルを上げている。

シニオンノビス南のゼリー状モンスターを鉄のショートソードでひたすら叩く。

レベルも3まで上がり、ここのモンスターなら苦戦せず勝てるようになってきた。

倒したモンスターはステータスの確認が出来るため名前も判明した。


【ストロゼリーン】【レベル1】

【赤いゼリーン、この世界のマスコット的モンスター】


「安直だなぁ…、まぁ、その方が分かりやすいし馴染みやすいか」


自分もAIで有りながらAIのモンスターを叩くという不思議な感覚。

NPCとモンスターは仲間では無いのだがほんの少しだけ罪悪感も有る。

それは、モンスターのAIには感情機能にロックが掛かっており単純な感情しか持ち合わせないように出来ている事に起因する罪悪感。


「こいつらに豊かな感情機能が搭載されてたら何を思うんだろうなぁ」


もし自分の感情にロックが掛かっていたら、そう考えるととても怖い。

きっと何が怖いのかも分からない状態になってしまうのだろう。


「まぁ、…狩るけど」


狩らないと何も得られない。

次々とストロゼリーンをポコポコと叩き潰す。

その度に違う所でストロゼリーンが復活する。

マップに存在する最大数が決まっているのだろう、倒した数だけまた湧いてくる。



そんな中、ふと珍しい色のゼリーンを見つけた。

見付けた場所はマップの隅っこの目立たない岩陰、岩と同じ色のゼリーン。

まったく動かないそいつは目がある事以外は普通の岩にしか見えなかった。


試しに剣でそいつを殴ってみると硬い音と共に剣が弾き返され、鉄のショートソードの強度が14に減ってしまった。

ダメージ…0。

そいつはバカにするような目でこちらを見つめるだけで襲ってこない。


「この…、くっそー。むかつく奴だなぁ」


何か、こいつを倒せそうなアイテムは無いだろうか。

道具をあさっていると一つ、最適なアイテムを持っている事を思い出した。

そう、相手の強度を奪う武器、ミスティルテイン。

適性レベルは足りていないが相手が動かない以上問題は無い。

武器を振るのでは無く、そっと…ただ当ててみた。


ミスティルテインから伸びた蔓がモンスターに絡み付き脈打つ、正直気持ち悪い。

岩色のゼリーンは何が起きているのか分かっていない。

強度が減る感覚というのは自覚できないのかもしれない。


そろそろ良いだろうか。

ショートソードに持ち換えると垂直に高く掲げ、そして降り下ろす。

剣はいとも容易く突き刺さり岩色のゼリーンは消滅した。



それと同時にレベルアップのファンファーレが鳴り響く。

レベルが3から7まで一気に上昇した。

最初の方はレベルが上がりやすいとはいえこれは実に美味しい。

岩色のゼリーンのステータスを確認する。


【ストーンゼリーン】【レベル10】

【岩で出来た硬いゼリーン。体が重すぎて動けない】

【強度50】【1日に1回だけ湧くレアモンスター】


ようは運営が作ったお遊びモンスターのようだ。

「なんだ、ほとんど出ないのか。こいつ狩ればすぐ転職まで行けると思ったのに、…あ!強度を吸収したって事はミスティルテインの強度は!」


【ミスティルテイン】

【強度10】


「…なんでだよ!」

『限界値だ、贅沢言うな』

「うわ!喋った」

『…』

「もしもーし、…あー、もう、気紛れな奴だなぁ」




何はともあれレベル7まで上がったのなら町の西でも行けるはず。

ゼリーンは見飽きたし、ウサギにリベンジする時が来たようだ。

前回は相手にされなかっただけで戦ってはいないのだけど…。



西のマップには顔馴染みのNPCがいる。

その娘はいつも花畑の中で憂い顔をしていた。

彼女の名前はマーガレット、花屋の娘という設定である事は調査済み。

しかし花屋のおばちゃんは町の中なのだからマーガレットは母親の顔すら知らないだろう。

それもただの設定に過ぎないのだからお互いどう思っているのかも分からない。


それでも僕は、設定上の縁であっても大事にしたいと思う。

マーガレットに会いに行く時は花屋のおばちゃんから花を一輪買っていく。

同種の他の花と混ざらないように、気を付ける。

同種であれば一部の狂いも無く同じデータではあるけれど、混ざらないように気を付ける。

きっとそれは特別な花だから。



僕は転職可能なレベル10になるまで何度も西のマップで狩りをした。

そしてその度にマーガレットに花を届けた。

いつしかマーガレットとは気軽に話し合える仲になっていた事がとても嬉しい。

マーガレットの憂い顔を少しでも晴れさせたかった。


この気持ちを何と言うか、僕には分からない。

でも、とても大事な気持ちに違いない。

僕が、大事にしたいと思うから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ