攻撃力バグってない?
間が空いて申し訳ないです。
今回武器の説明回となっております。
ミスティルテインが使い物にならないと知った僕は独り町中を歩いていた。
どれだけ強かろうと扱えないのでは話にならない。
代わりになりそうな武器は売っていないか、武器屋さんに向かっているところだ。
その途中で、知ってる顔を見付け立ち止まる。
「あ、さっきは有難うございます。せっかく教えてもらったのに間違えて北に行ってしまいましたよぉ。あはは」
そこに居たのは長いスカートを履いた優しそうなお姉さん。
初心者は南に行くと良いと教えてくれた人だ。
「北の森は迷いやすいので冒険者さん達はあまり使わないんです。西から迂回するか、船を使って北の町まで移動するかですね。転送魔法もありますが高価な魔石を消費するので船の方が人気です」
「あ、これはどうもご丁寧に…、ん?冒険者さん達?あなたはNPCですか?」
「申し遅れましたね、私は町娘Cのシーナ。NPCです」
「これはまた…安直な名前で…」
「うふふ、覚えてもらえやすいので私は気に入ってますよ」
「…NPCのAIって良く出来てますよね、普通に会話できてびっくりです」
自分はバレていないだろうか、少し反応を見てみる。
「良く出来すぎてるのでAI機能に人間の脳が使われてる。なーんて噂もありますよ」
「それは…怖いですね」
いや、ほんとに。しかし自分はバレてはいないようで安心した。
NPCとプレイヤー、その見た目の違いは固有アバター。
NPCには固有のアバターが有りプレイヤーは使う事が出来ない。
つまりNPCの見た目は変わらないので一度分かってしまえば見分けは付きやすい。
もっとも、冒険者として作られた僕は例外的にプレイヤーと同じアバターなのでNPCから見ても僕は普通のプレイヤーに見えているはずだ。
あとはボロを出さない限りはNPCだとは思われないだろう。
それほどまでにこのゲームのAIは良く出来ている。
「あ、そうだ。今から武器買いに行こうと思ってまして、お勧めあります?」
「うーん、その防具ってビギナーズパックの皮鎧ですよね?では鉄のショートソードがあるのでは?」
「あれってそんなに優秀なんですか?」
「はい、レベル制限無しで使える剣の中では一番強い剣です。転職まではそれで行けるかと、その後でならお勧めの武器を紹介できますよ」
なんと、あの質素な剣がそんなに良いものだったとは。
流石初心者応援用のビギナーズパック、有り難い。
鉄のショートソードのステータスを確認してみる。
【ショートソード】【鉄】
【攻撃力015】【ワンハンドソード】
【重量4】【リーチ02】
【強度15】【適性レベル不問】
「なるほど、有難うございます!」
「いえいえ、困りましたらまた私に聞いてもらえると嬉しいです。情報だけなら持ってますので、いつでも話し掛けてください」
立ち去る時シーナさんはスカートを両手で軽く摘みあげてとても優雅だった。
ふと、ミスティルテインのステータスを思い出す。
そういえば攻撃力の数値に違和感があった気がするのだ。
【ミスティルテイン】【寄生木】
【攻撃力FFF】【バスタードソード】
【重量5】【リーチ03】
【強度10】【適性レベル90】
…これは、違和感どころでは無い、バグっている?
目立たないよう建物の裏側へと隠れるとミスティルテインに話し掛けた。
「ミスティルテイン、起きてる?」
『俺は寝ない、…どうした?』
「攻撃力バグってない?FFFって書いてあるんだけど?」
『…大丈夫だ、問題無い。設定が3桁までだったからな、まぁ、気にするな』
「それにしても、強度10て…、適性レベル90なのに低すぎない?」
攻撃時や攻撃を受けた際に、相手側との強度の差が低い方の強度が更に低下する。
鉄のショートソードが強度15だから打ち合えばミスティルテインの強度が落ちていく。
そして0になると破損扱いとなり直すまでの間は使用出来なくなるのだ。
『素材が木だからな。まぁ…それも気にするな。特殊能力も読んでおけ』
「うーん…、実は微妙な武器なんじゃ」
とりあえず言われた通りミスティルテインのステータス項目を読み進む。
【他のオブジェクトから強度を吸い上げ自己修復する】
【所有者の手元に呼び戻す事が出来る】
「とりあえず強度の問題は分かったよ。最初から強度が高ければいらない能力だけどね」
『…転職出来るレベルになったらシーフになると良い』
「え?ナイトかウォーリアーじゃなくて!?」
『…』
それ以降ミスティルテインは黙ってしまった。
「おーい…、もう…、拗ねたのか?」
『…』
「分かったよ、信じるよ。シーフ目指せば良いんだろ?まったく」
攻撃力FFF。はい、隠す事でも無いし分かっちゃうと思うので言っておくと16進数です。
数値弄れるならもっと使いやすくしろよって話ですが彼は彼で事情があるので許してください。




