1/5
特別な人間
わたしは、たしかに特別な人間だった。
特別だったわたしには、
世間に伝えたいことがたくさんあった。
特別だったわたしには、
世間に訴えたいことがたくさんあった。
だから書いた。
だから描いた。
だから歌った。
だから語った。
だけど、いつの間にか
なくなってしまった。
伝えたいことも、訴えたいことも
なくなってしまった。
なくなってしまった。
わたしは、たしかに特別な人間だったのだ。
わたしという人間の人生において、
けれど、きっと誰にとっても。
確かに特別な、10代だった。
それだけだ。
けれど、たしかに、わたしは特別な人間だったのだ。