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疲れてるとよく思考が狂う

「こんな場所に旅館を立てた人、頭がおかしいだろ……」

 俺の隣で、S君が呆然と呟いた。

 その言葉を聞き、彼に対する罪悪感と、自分がこんなフラグ立ちまくりの場所に来たことに対する疑念がふつふつと湧き上がってくる。

 だが、それらの感情はつい最近まで繰り返されていた自宅での悪夢を思い起こすことで、一瞬で消滅してしまう。

 悪夢としか言えないほどの、無数のフラグが立ちまくる毎日。妹の悪質なストーカー行為は悪化の一途をたどるし、週に三回俺の部屋で行われる悪魔・超能力談義は――それだけでもふざけるなというほど多いのに――いつのまにか毎日行われるようになった。しかも、理由は不明だが最初敵対していたはずの生徒会長と妹が、ある日を境に急激に仲良くなった。それ自体は一見いいことのように思えるが、実態はかなりひどい。要するに、妹のストーカー行為が自立園学園ではほぼ黙認されるように――いや、推奨されるようなったということなのだから。俺が日々どれだけのストレスを受けてきたかは想像に難くないだろう。

 しかも生徒会長が俺の家によく遊びに来るようになったせいか、学校内では俺に対する意味不明な(一部真実を含む)噂がそこかしこから聞こえてくるようになった。

 そのせいで学校にも家にも居づらい状況が続いて……。

 だから、あの日Sが俺に持ち掛けてきた誘いは、これ以上ないほど魅力的な誘いだった――のだが、それだけでは俺のストレスは完全に消え去らなかった。当然のように妹はSの家を突き止めているし、学校に行けば確実に生徒会長が何かしら仕掛けてくる。それに頻度は少ないものの、姉の奇怪な行動が俺への負担として降りかかってくる。それに、いまもなお悪魔(?)からの嫌がらせは継続中のまま。

 だから俺は、少しの間でいいからこれらの雑事から解放された、平凡で退屈な日々を噛み締めたかった。そうしないといい加減気が狂って、俺まで変態どもの仲間入りを果たしそうだったから。

 そして思いついた旅行という手段。

 だがこれも、下手に俺好みの場所を選べばすぐに追跡され、せっかくの旅行も一瞬で台無しにされてしまう。ではどうしたらいいかと悩んでいたところ、たまたま俺の目に留まったのが鬼羅旅館だった。一般人は絶対に行かないだろうという立地に聳え立つその旅館は、まさに(死亡)フラグの宝庫。俺の性格を知っている妹なら、まず俺がそんな場所に行くとは思わないはずだ。加えて鬼羅旅館の立地。一本しかない吊り橋を崩落させてしまえば、仮に奴らが俺の行き先を突き止めても旅館にはやってこれない。

 そう、俺は今日から一瞬間煩わしい奴らとのかかわりを一切絶った夢の生活が送れるのだ!

 ………………………どこかで何かを間違えた気もするけど、たぶん大丈夫、だよな?

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