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行き先決定

 少し予想外の出会いがあったものの、それ以降は特に何も起こらず無事自宅に到着。

 既に家の中にはバッ君がおり、古びた携帯を使って誰かにメールしているようだった。

 僕が帰ってきたことに気づくと、バッ君は携帯を閉じ、やや不安げな様子で聞いてきた。

「お帰り……。あのさ、ここに帰ってくるまでに何か変なことは起こらなかったか?」

「いや、特に起こってないよ。普通に本屋に行って旅行雑誌を買ってきただけで、変なことは何も」

 まあ生徒会長様に話しかけられるという驚きの事態はあったが、別に変なことではないだろう。名前を呼びかけられた時こそ驚いたものの、あの生徒会長様であれば全校生徒の顔と名前を憶えていても不思議ではないと思い直した。

 それに、よく考えてみれば生徒会長様はバッ君の話を僕に振ってきたわけでもない。つまり、バッ君と同居するようになったから生徒会長様が話しかけてきた、というわけでもないのだろう。

 そんなわけで、僕はこのことをバッ君には告げず、代わりに買ってきた旅行雑誌を手渡した。

「それより、テストも終わったことだし旅行の行き先を考えようよ。取り敢えずいくつかバッ君が行きたそうな場所はチェックしたから、まずはそこから見てみてよ」

 バッ君はいまだにどこか落ち着かない様子であったが、一度小さく息を吐くと素直に雑誌を受け取った。

 ――それにしてもやはり、旅行の行き先を考えるのって凄く楽しい。どこも自分の旅館やホテルに来てもらうために、とにかく魅力的な要素ばかりをアピールしてきている。実際に行ってみればいろいろと不便があったり、思っていたほど良い場所じゃなかったりするのだろうが、旅先への期待を膨らませるのには十分すぎる魅力を放っている。

 ついつい目的とはまるでかけ離れた旅館に見入ってしまい、無駄に時間を使うこともしばしば。

 だが、そんな僕とは違いバッ君の読む(選ぶ)スピードはとても速かった。というより、人気があって人が多そうな場所は片っ端からスルーしているようだ。しかし雑誌に載る旅館やホテルというものは、集客力に差があるとはいえ、基本的にどれもある程度の人気をもったものばかり。この調子だと、バッ君が気に入りそうな旅館はなかったかなと後悔していると、急にバッ君の手の動きが止まった。

 しばらくの間じっとそのページを見つめ、一度大きく頷く。そして、僕にもそのページを見るよう勧めてきた。

「ここ。俺としてはぜひとも行ってみたいんだが、どうかな?」

 果たして、バッ君が選んだ旅館は――


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