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夏休みにやりたいこと

「あ、××君。昨日は結局帰ってこなかったけど大丈夫だった? というか、あのちょっとやばそうな女の子は……」

「自分でも信じたくないけど、俺の妹なんだよ、あれ。この先もちょっかい出されると面倒だから、一晩かけて説得しといた。今後はもうあんな迷惑行為はかけてこないと思うから安心してくれ」

 そう答えるバッ君の目の下には濃いクマができている。嘘偽りなく、一晩かけて説得を行ったようだ。

 あまり深くはその話をしたくなさそうな雰囲気だったので、僕はそれ以上追及することなく話題を変えた。

「そういえば、あと少ししたら夏休みだね。××君は何かやりたいこととかある? どうせ僕は暇だから、何かやってみたいことや行ってみたい場所があるなら付き合うけど」

 バッ君は一瞬驚いた顔をした後、顎に手を当てながら真剣な表情で考え始める。

「そうだな……。居候の分際でこんなことを言うのは厚かましいと思うが、どこか山奥の田舎の方に旅行に行ってみたいな。犯罪やら事件とやらは全く無関係そうな、のどかな場所に。どうにもこの町にいると煩わしい出来事によく遭遇しそうだから」

「いいね、田舎に旅行! 気分をリフレッシュさせるにはもってこいじゃないかな。もちろん僕も一緒に行っていいんだよね?」

「ああ。本当に申し訳ないが、今の俺の財力だと一人で旅行に行くのは厳しいしね。ただでさえ生活費や食費を払ってもらっていて本当に厚かましいとは思うが。もちろん借りた金はいつか必ず返済するから」

「お金のことは気にしなくていいって。僕一人じゃ使い切れないくらい振り込まれてるし、それを僕がどう使おうが親にとやかく言われる筋合いはないしね。じゃ、家に帰ったらさっそくどこに旅行するのがいいか探してみようか。いや、先にテスト勉強を進めないといけないかな。あんまり点数悪くて補習になったら困るし」

「だな。取り敢えずテストが終わってから考えようか」

 お互いに軽く笑いながら頷きあう。

 人とは不思議なもので、今までほとんど話さなかったような相手でも、少し状況が変わればあっさりと話せるようになったりする。それこそ、今まで話してこなかったのが不思議なくらいに。

 それに親しく話せる人が増えるというのは、それだけでどこか高揚した気分にもさせてくれる。

 だからこの時の僕は、これからやってくる夏休みに、ただただ胸を躍らせているばかりだった。

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