方針変更
「ごめんね、サタン君。かなりみっともない姿を見せちゃったかな。自分でもかなり過激なことをしてるのは分かってるんだけど、あの姉に関わるとすぐに理性が崩壊して……」
「……うん。まあ××君の言いたいことは分かるから気にしないで。というか、あんな姉を持ったら家出の一つや二つしたくなるのも当然だろうね……」
S君は憐れむような目で俺を見つめてくる。
そんな風に見つめられると、今までの散々な体験が思い起こされてきて泣きたくなってしまう。それにしても、流石は俺の姉と言ったところか。曲がりなりにも一般的に見たらかなりの非常事態なのに、いつもと全く変わらぬ平常運行。もし本気でこの旅館の中に皆殺しを計画している殺人鬼がいたらどうするつもりなのだろうか?
いや、この点で姉を責めるのは良くないか。どうしてそんなに落ち着いていられるのかという点では、俺も十分に異常と言えるのだろうから。
「そうだ、さっき言ったことを翻すようで申し訳ないんだけど、一度部屋から出てリビングの方に行ってみない? このまま部屋にいると、また厄介な人がやってきそうだし」
「僕は全然構わないけど、いいの? リビングに行ったら行ったで変な人に出会いそうな気もするけど」
「まあもうそれは仕方ないでしょ。いっそのこと今のうちにこの旅館にいる人全員と面識を持っといたほうがいいかもしれないし。受け身で誰かやってくるのを待ち続けるのは、精神的にきついものがあるからさ」
どちらにしろ、ずっとこのまま待機というのはよくよく考えたら現実的ではないだろう。部屋から出ない、というか旅館にいる人に関わらないというのが最善のように思えたが、一週間も旅館に滞在し続ける必要があるのだ。それもこの状況を最大限に楽しもうとしている変人多数つきで。
じっとしてたらしてたで後々どんな目に遭うのか分かったものじゃない。こっちから積極的に介入して、できるだけ話の方向性を誘導していったが方が都合がいいかもしれない。
とはいえ、ここ最近の俺の考えは裏目に出続けている。この選択が余計なフラグを生み出すことに繋がっていなければいいが。




