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雨が降ってきて橋も落ちた

 バッ君と旅館を見まわったのはいいものの、旅館の中はそこまで広くなく、三十分後には探検は終了してしまった。

 せっかくだから遊戯室で卓球でもやろうと誘ったまではいいのだが、遊戯室にはバッ君の天敵が存在した。

 黒いローブを羽織り、いかにも怪しげな雰囲気をまとった髪の長い女性と、おかっぱで眼鏡をかけた最近では見ないタイプの少女。二人の姿を視認した途端、再び気分が悪くなってきたのか、「部屋で休む」とだけ言い残してバッ君は遊戯室を飛び出してしまった。

 さてどうしようと思い僕が立ち止まっていると、おかっぱ眼鏡少女がこちらに近づいてきた。

「どうも、××君のお友達のサタンさんですね。初めまして、自立園学園生徒会で書記を担当しているトマトと申します。本日から一週間ほどよろしくお願いします」

 てっきり中学生くらいの子かと思ってしまったが、僕と同じ自立園学園の生徒だったとは。少しだけ申し訳なく思いつつ、僕は挨拶を返すと同時に疑問を投げかけた。

「どうも、こちらこそ一週間宜しくお願いします。で、その、何で僕の名前を知ってたんですか? それに僕たちの滞在期間が一週間だってことも?」

「別に難しいことではありません。黒魔術を用いた未来予知の結果、あなたの名前がサタンでありここに一週間ほど滞在するのだと知っていただけのことです」

「は、はあ、そうですか。それは凄いですね……」

 これは……バッ君が避ける気持ちも分かる。まさか初対面の相手に対し黒魔術を用いた予知で――などと言う話を吹っかけてくる人と友達になりたくはない。冗談かと思ってその先の言葉を待ってみるものの、全く感情が伴っていない無表情のまま微動だにせずこちらを見つめてくる。

 このまま僕も部屋に戻りたくなったが、どうやら彼女たちも一週間ここに滞在するようである。多少は仲良くなっていたほうがいいかと思い、僕は即興の作り笑いを浮かべた。

「しかし黒魔術を使うと未来予知までできるんですね。もしできたらなんですけど、この旅館が無事に終わるかどうか予知してみてくれませんか?」

 あくまで社交辞令。本気で知りたいわけでもないし、そもそも彼女の言葉を信じているわけでもない。だから本当に世間話の要領で聞いただけのつもりだったのだが――

「今からあと一時間もすれば雨が降り出し、さらにその数時間後にはこの地を外界と繋ぎ止めている唯一の橋も落ちるだろう」

 黒ローブの女性はそんな不吉な言葉を発し、僕とトマトさんの間に入り込んできた。

 もちろん「この女ヤバイ。絶対関わらないほうがいいな」と思っただけで、僕は彼女の言葉を信じずに笑って受け流した。

 けど、それから一時間後。彼女の予言(?)通り本当に雨が降り始め、さらにその数時間後には地鳴りの音とともに橋が崩れ落ちていった。

 ……いくら現実的に起こらなそうなことでも、実際に起こったのなら起こりうるに足る十分な要素を持っていたという事? 

 いやいやいや、そんな馬鹿なことが――

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