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思ったよりも

 鬼羅旅館の内装は思ったよりも清潔感があり、過ごしやすい空間となっていた。

 外観の古ぼけた様相や、異常なまでに辺鄙な場所に建てられていることを除けば、十分楽しむことができそうな旅館。最初こそこんな場所に一週間も止まるのかと憂鬱な気持ちになったものの、いくらそれっぽい雰囲気だからと言って殺人事件なんて起こらないだろうし、これはこれですごく楽しめるのではないかと思い始めていた。

 ただ、少し気になるのはバッ君が何やら暗い表情をしていることについてだ。

 鬼羅旅館に入る直前まではどこか晴れ晴れとした表情だったのに、旅館に入って知り合いらしき二人の女性と話して以降、めっきり元気がなくなってしまった。まあバッ君が旅行に行きたいと言ったのは、知り合いのいない場所に行きたいという思いがあってのことだったようだし、それも仕方ないのかもしれないけど。

 でも、すでに旅行には来てしまったのだ。今更後悔をしても遅い。どうせなら前向きに楽しむべきだと考え、僕は暗い表情のバッ君に言った。

「お、思ったより鬼羅旅館っていい所だね。値段の割にはお部屋も広くて過ごしやすそうだし、こんな秘境にあるとは思えないくらい内装も綺麗でしっかりしてる。荷物を置いたらさっそく旅館の中を回ってみようよ。結構でかいお風呂とか、卓球台や将棋盤が置かれた遊戯室もあるんだって。一週間なんてぼやぼやしてたらあっという間に過ぎるんだから、遠慮しないでどんどん楽しまないと」

「一週間なんてあっという間に過ぎる……か。そうだな、そんな長い話じゃないんだし、きっと大丈夫だよな。よし! じゃあ旅館の探検に行くか!」

 少しだけ表情が明るくなったバッ君は、大きな声を出しながら部屋の外へと向かって行く。

 僕はその後ろを、同じように楽しげな声を上げながらついていった。

 ――それにしても、さっき会った二人の女性。黒魔術がどうとか話してたけど一体何のことだったんだろうか? そもそも、こんな場所でたまたま知り合いに出くわすなんてまず無いと思うのに。とはいえ実際こうして出会ったのだから、そういう偶然も起こりうることだって話なんだろう。

 いくら現実的に起こらなそうなことでも、起こってしまったのならそれは起こりえるに足る十分な要素を持っていたってことだろうから。

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