新しい未来
僕があの時、その手を取っていたならば君は今もここに居てくれたのだろうか?
君と出会って、遠く離れた長い月日はお互いを知り尽くしていた僕たちを変えた。
根本的な部分は何一つ変わっていない君だったけれど、その心には闇と閉ざされた想いがあった。
僕があの時、君をちゃんと見ていたならば君は今も笑っていてくれただろうか?
君が他人に何かを求める姿なんて、一度としてみたことはなかったけれど、その心はずっと必死に助けを求めていたのに…どうして一番近くにいたはずの僕は気づいてあげることが出来なかったのだろう。
そんな後悔ばかりが過ぎた日々を曇らせていく。
今更そんなこと思っても遅いと、もう戻ってはこない手遅れなのだと思い知らされるだけかもしれないけれど。
僕は君の傍にずっと居たいと今も思うんだ。
これは僕の我侭なのかな?
それでも願う想いは消えてくれないんだ。
暗い気持ちはもやもやと僕自身を包み込んで、だめにしていく。
脆い境界線に立って、遠くを見つめて、甘い理想を掲げて、それを人に押し付ける。
それが正しいと、どうして僕は思っていられたのだろう。
君と笑って、ふざけ合えた過去が懐かしい。
明るい未来なんていらない。
暗い未来もいらない。
…未来なんて、僕には必要ない。
背負う重荷は僕への戒めで、君を苛立たせる。
足枷をなくした兵器は暴走を始める。
それは僕にとっての君だった。
苦しむ僕の姿に気づいて、差し伸べてくれた優しい手と、慈愛のこもった微笑み。
君は僕が必要だと、真摯に言ってくれた。
僕は未来なんて欲しなかったから、その手を振り払う。
そして、何度も傷つけて遠ざけようとするのに、離れてくれない。
いつから、君が傍に居ることが当たり前になっていたのだろう。
それでも、やっぱり気づかなかった。
己の想いにすら気づかずに、君の想いにも気づけずに。
お互い言葉なんて必要としないくらいに、繋がっていると思っていた。
その愚かな糸が生んだ結果…。
人は喪った瞬間にその想いに気づく。
如何にその人が大切だったかを改めて認識する。
大きな代償を払った代わりに得たものはあまりにも悲しく、虚しい。
僕の心を占めていた大きい存在は消え失せた。
どこか遠くへ、僕の手が届かない場所に。
誰の手も届かない場所に、溶けて移り行く。
いつか、まだ遠い空で同じになるであろうか。
その想いを受け止められるだろうか。
取り除くことの出来なかった闇から、君はいつか解放されて笑ってくれるだろうか。
どうかそのときまで、安らかな眠りを…。
悲しい存在の君へ。
優しい光の君へ。
愛しい笑顔の君へ。
この眠りは誰にも知られることなく、せめて夢の中では世界が暖かくあるように。
君が目覚めるそのときまで、僕はいつまでも待っている。
その眠りを護ることを、傍にずっと居ることを、寂しがり屋の君に誓います。
今度その手が差し伸べられたのなら、僕は迷うことなくその暖かい手を選ぶことを。




