第一章四話 幸寿丸織田家へ行く後編
無事受験が終わりました。
第二志望でしたけど・・・。
1550年3月21日。
織田家出発当日。幸寿丸は於凛と二人で城内の木々を散策していた。両脇には桜の木があり、三月の下旬ということもあってか桜の蕾がはちきれそうにしていた。
「・・・遂に行くのですね。」
於凛は寂しげに言う。表情も落ち込んでいた。
「大丈夫ですよ母上。織田家とは同盟関係ですし、元気にやりますよ。しかも、あの織田家ですよ!いっぱい本が読めます!」
幸寿丸は嬉しそうに言う。それを見ながら於凛は少し笑顔になった。
「楽しんでくるのですよ。」
散策が終わるまでの間二人は終始無言であったが、それでも二人の間には春を告げる暖かいそよ風が吹いていた。
数時間後。
幸寿丸は刈谷城の正門の前に来ていた。刈谷城の城門には総勢300人の見送りが来ていた。
幸寿丸についていくのは
清水左京亮永重の子|亀丸8歳(小姓)
水野忠光(信元の弟)28歳
水野長勝18歳
側仕え二人の以上五名だ。
幸寿丸は信元の前に立ち
「では行って参ります。父上。」
幸寿丸は口元に笑みを浮かべながら、お辞儀をした。
「うむ、多くのことを学んできなさい。」
信元の話を聞き終わると幸寿丸は馬に跨り手振りをした。
幸寿丸以下六名はその合図とともに出発していった。
刈谷城から織田家の居城那古野城までは、二日かけての道のりだった。