序章 誕生
二作目始めちゃいました。受験生なので終わるまで不定期。サーせん。
時は戦国の世、天文12年(1544)12月12日。三河国刈谷城で、つい半年ほど前に水野宗家の家督を継いだ、水野忠次の正室於凛が、出産を間近に控えて居た。
「奥方様。調子はどうですか。」
そばにいた侍女が聞く。
「今日は気分がいいのよ。でも、そろそろ生まれそうな気がするわ。」
冬の名物詩一面の雪景色を見つつ、於凛は微笑みながら言う。
「それはようございました。早く生まれるといいですね。」
侍女はフフッと笑いながら言う。
「どうせなら今日がいいわよね。」
於凛はそう言う。それに対して侍女は首をかしげる。
「だって今日は12月12日じゃない。今年は天文12年よ。12が三つ続いてなんかいいじゃない。」
機嫌が良さそうに言う。
「フフッ。さすがは奥方様ですね。くだらない。」
侍女は笑いながら言う。
「あっ!今何て言いました?お仕置きです。」
於凛はそう言い、立とうとしたがいきなり腹痛が襲ってきた。於凛は苦しそうに唸る。侍女は慌てて駆け寄る。
「奥方様!大丈夫ですか?早くこちらへ。」
侍女は慌てながらも、於凛を蒲団へ横たわせた。
「奥方様。陣痛です。お子様が産まれますよ。頑張ってください。」
於凛は唸り声をあげながら必死に耐えていた。
於凛が陣痛を起こしてから、4刻(約8時間)が経過したころ。
ドタドタドタ、と廊下で音がした。
「於凛!大丈夫か?!」
は走ってきたのは忠次であった。那古野城から刈谷城までの約6里の道のりを、馬で走破してきたのだった。
「於凛は!?大丈夫なのか?」
忠次は襖を勢いよく開け叫ぶ。
「お殿様。静かにしてくださいませ。もうすぐお生まれになりますので。」
側にいた侍女が柔らかく諫言する。それで我に返った忠次が、恥ずかしそうな顔をする。
「許せ。予が悪かった。」
忠次は謝る。
「いえいえ。私も差し出がましいことをして、申し訳ございませんでした。」
侍女は頭を下げて謝る。そのとき
「お殿様!御生まれになりました!男子です!」
「そうか!でかした!」
忠次は部屋の中へ駆け込む。
「於凛!大丈夫か?」
真っ先に於凛のことを心配する忠次。政略結婚だが、仲睦まじいのが良く分かる。
「大丈夫ですよ。ほらこの子ですよ。この子が水野家を継ぐんですね。初めが男子でよかったです。お家騒動にならずに済む。」
「真っ先に喜びたいところなんだが、真剣な話がある。」
忠次の顔が真顔になる。部屋の緊張感が高まる。
「水野家は今日から・・・織田家に付くことにした。」
部屋にいる全員が驚愕を表す。
「そしてその記念に俺の名を改名する。今日から俺は、水野下野守信元だ!そして俺の嫡男の幼名は・・・幸寿丸だ。」
天文12年12月12日。幸寿丸0歳。彼の知らないところで人生は変わり始めていた。