告白
すみません。シリーズのようになってきてしまっています。多分、もう少しこの2人のこと書いていきます。「短いキス」「私達の関係」の続きです。
曖昧な関係。
仲のよい人たちも私達の関係は気がついていない。
私も、彼の気持ちがわからない。
彼も、私の気持ちを知らない・・・と思う。
岡田さんは部活が終わると、普通に私の部屋に来る。
大学はまだ春休みだが、運動部は休みに関係なく行われている。
「ただいま」
「おかえりなさい」
運動部の彼は私の部屋でシャワーを浴びて、体操着を洗濯機に入れて洗濯を始める。
「今日のご飯何?」
「今日は、野菜炒めとスープです」
岡田さんが私の部屋に通うようになって1週間。けど、紹介してくれた石田先輩にも知られていない。
二人でご飯を食べて、テレビを見てキスをして一度彼は部屋に帰り石田先輩の部屋に行く。私は30分ぐらい経ってから石田先輩の部屋に遊びに行き3人で宅飲み。
1週間前。
3人で買い物に行った帰りに、私の部屋でご飯を食べた。
夜中になり、2人が帰るとき石田先輩の後に出た岡田さんが石田先輩に聞こえないように、靴紐を直すフリをしながら
「明日、部活が終わった後遊びに来ても良い?」
小さい声で聞かれ、何も考えずに私はうなずいていた。
私は岡田さんにとって何なのか?どう思われているのか?嫌いなら遊ばないだろうけれど・・・。
「岡田、最近部活忙しいのか?」
「なんでよ?」
「帰りが遅いから。前よりも2時間ぐらい遅くないか?」
部活は忙しくないです。私の部屋に来てるから遅いんです・・・なんて言えないよね。
「まぁ、ボチボチな」
曖昧に岡田さんが石田先輩をかわす。
石田先輩もあえてそれ以上突っ込む事もなく、普段どおり宅飲みが始まる。
「相変わらず珠樹は酒強いよな」
しみじみ石田先輩に言われるがうれしくも何ともない。
「お酒は好きですよ。けど、強いと女として可愛くないから好きじゃない」
前の彼氏はめっぽうお酒が弱く、アルコールを体内に入れると直ぐに顔を赤らめていた。
酒の強い女は可愛くない、その時に思った。
そして、できれば彼氏はお酒の強い人が良いとも・・・。
石田先輩も岡田さんもお酒は強い。酔っぱらうけれども普通に強い人たちだ。
「いいじゃん、強くても十分可愛いよ」
岡田さんが急に私をほめる。
「ほめても何も出ませんよ」
そう言いながらも、ドキドキする。
人に可愛い、なんて面と向かって言われた事殆どない。
そういえば、前の彼氏も言ってくれた記憶がない・・・。
「そうだ、珠樹は十分かわいいぞ」
少し酔い始めた石田先輩も言う。
「今日は二人とも酔っ払いですね。襲われたら困るから今日は帰ります」
「もう少し、飲んでけよ」
石田先輩は言ってくれるが、目もトロンとし始めている。帰る潮時だ。
「夜中だし送っていくよ」
岡田さんがコートを着てくれる。
「大丈夫ですよ、5分ぐらいだし」
「いや、それでも何かあったら困るし」
「岡田が送ってくれるって言うんだから送ってもらえ」
石田先輩は、帰る準備をしている私達を横になりながら言う。
「じゃぁ・・・。お邪魔しました」
二人のお言葉通り素直に甘えさせてもらって岡田さんに送ってもらう事にした。
「明日、部活終わったら買物でもいこっか」
「いいですねぇ。もうそろそろ買物行きたかったですし。どこにします?石田先輩はどこがいいんですかね?」
「明日は石田は誘わずに二人で行かない?」
ドキッとした。
二人で出掛ける事なんて今まで一度もなかったから。
「二人で?」
「石田がいないと駄目?」
「いや、まさか」
「なら二人でもいい?」
「もちろん。楽しみにしています・・・、岡田さん、聞いてもいいですか?何で私を誘ってくれるんですか?私はうれしいんですけど・・・」
お酒の勢いと、二人で出かけられるといううれしさでテンションが上がってしまい、思わず口から出てしまった。
間接的に告白をしてしまった???
後から顔が熱くなる。
「何で珠樹ちゃんを誘うかって、俺が珠樹ちゃんの事、勿論好きだからだよ」
「・・・え?」
「もちろんでしょ。少しでも好きな人と一緒にいたいから部活の帰りに寄ったりするんだし、今だってこうやって送ってるんだよ」
そう言って手をつないでくれた。
「俺の事。嫌い?」
「まさか、嫌いだったら私だって・・・」
キスしたりしない、と言いたかったが恥ずかしくて言えない。
「俺の中では、珠樹ちゃんと付き合っていたつもりだったんだけど・・・」
ビックリ発言!!
「だって、岡田さん何にも私に言ってくれないから・・・。可愛がってくれているのは知っていたけれど・・・」
手をギュッと握って
「俺が好きじゃない人とキスすると思う?」
「それは・・・。けど石田さんに言ってないし・・・」
「だって、珠樹ちゃんを紹介してくれたの石田だけど、石田も珠樹ちゃんの事好きだから言いにくくって。それに、珠樹ちゃん何にも俺に言ってくれないし」
「だから、それは逆で・・・」
お互いに、気持ちがありながらも自分から1歩踏み出していなかったのだ。
私を送ってくれた岡田さんは、そのまま私の部屋に上がってきた。
「珠樹ちゃん、俺のこと好き?」
岡田さんに手招きされて、隣に座り、顔をのぞかれて聞かれた。
あまりにも恥ずかしくて、うなずくことしかできない。
「本当に?ちゃんと言って欲しいな。俺はさっき言ったんだけどなぁ」
そう言ってもう一度私の顔を覗き込む。
「・・・、好きです」
小さいけれどはっきりと言った。もう岡田さんの気持ちがわからないなんて不安になる事ないんだし。
「はぁ、よかった。安心した」
優しい笑顔でそっと私にキスをしてくれた。
この日、岡田さんは初めて私の部屋に泊まっていった。




