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月明かりに照らされて  作者: セルリアンブルー
第一章
3/6

獣の血

 「あの…ここは…?」

 少女、大和遥香は自分のベッドの近くに立つ少女……と椅子に座る女性におずおずと話しかけた。女性が答える。

 「イングランドのどっか。」

 (なんてアバウト…。)

 「大丈夫?」

 少女……が話しかけてきた。

 「え、あ…はい、一応…。でも、一体、私、どうなって…!?」

 つい身を乗り出して問う。

 「お、落ち着いて…。今から説明するから。そうだね、見てもらったほうが早いかな。」

 はい。と手渡されたのはシンプルな黒い手鏡だった。

 鏡……?なんでこんなの、と思ったが、鏡をよく見ることでその考えは一変した。

 自分の顔は大して変わってないことがはっきり見えた。平凡な顔、焦げ茶のショートヘア。黒縁の眼鏡はかけていなかった。私って結構目が悪かったはずなのにな、なんて疑問が些細なものに思えるほど、もう一度頭の方に目を向けた時の衝撃はとてつもなく大きかった。

 自分の髪の毛が二ヶ所、不自然に盛り上がっている。なんだろ、寝ぐせかな……などと思ってよく見てみた“それ”は“あるもの”に酷似していた。

 三角に尖り、ピコピコ動く。これは………どう見ても…………アレだ。

 「な…なに、これ………!?耳……!?」

 そう、耳。動物の耳だ。

 「ど…どうなってるの…?これ、あなたたちが?」

 「うん、まぁ…そういうことだ。すまない。」

 「君の体を変えてしまったみたいなんだ、本当に申し訳ないよ。」

 「これ、治るの…?」

 頭を深く下げ謝罪する彼らを尻目に、私は頭のうえの耳を触りつつ聞いた。

 「あぁ、まぁできるよ。コバルト、あれ持ってきて。」

 コバルトと言われた少女………はウエストポーチからなにかを取り出した。じゃらりと音を出して女性に渡したのは…銀色の鎖であった。

 「え?」

 私が困惑している間に、女性は素早く私の右手を取り、巻き付けた。

 「え、え!?」

 女性は目を閉じて、なにか唱え始める。瞬間、鎖が青白く輝き出す。

 「猫の足音、女の髭、岩の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾液。全てをここに集え、彼の暴虐の獣をここに封じ込めよ。」

 光はさらに輝きを増し、鎖を構成する輪の一つ一つが分解を始める。たくさんの輪が複雑に腕の周りを回転しだす。

 「貪り喰うもの《グレイプニール》!」

 直後、腕の先端から輪が徐々に連結し、しっかりと腕に巻き付けられた。ひときわ強く輝いた後、仄かに光る鎖は空気に溶けるように薄くなり、消滅した。

 「…………」

 あまりの出来事に私が呆然としていると。

 「ええっと……だいじょうぶ?」

 「びっくりするのも仕方ないな…。」

 「ま、魔法……?」

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