エピローグ
「ふわぁあ〜〜〜〜あ・・・・」
春の暖かい日差しに思わず欠伸が出てしまった。
背中のカバンを背負いなおして、僕は歩く。
玄関先ではおばあさんが僕を見送ってくれていた。
「それじゃあまた、いつでもいらしてね、アキヤさん」
「はい、それじゃあまた近い内にお邪魔しますね」
桜が舞い散る庭園を僕らは手を振って別れた。
東京の下町にその屋敷はあった。
僕の親友、リュウジの実家であり、僕がいつかもう一度訪れようと思っていた場所だ。
そこに僕は三泊もし、散々これからのことをおばあさんに言って聞かせた。
僕が死んでから三年も経つ。
「おっこいしょ」
重い荷物を背負って歩き始めた。
都心から僕らの町までは電車で数時間かかる。
だから僕は電車に乗って、それからゆっくりと伸びをしてお茶を飲んだ。
流れていく景色を眺めながら、いつかと同じように思い出す。
「ありゃ痛かったな」
僕が死んでから、三度目の春がやってきた。
⇒エピローグ
「うおーい、生きてるかー」
「・・・・・・・・・・・っててて・・・・・」
上下左右が反転でもしたのか、足元に月が見えた。
傾斜をまっさかさまに転がり落ちて、頭まで打ったらしい。
血を流しすぎてぐらつく視界の中、はっきりと映るのは目の前のルミアさんの顔だけだ。
「・・・・・・・・・ルミアさん・・・」
「おー、よく生きてたなあ」
「はあ・・・・カナタは?」
「ん?今、上で佐々木が説得中だ」
「・・・・・・・・・そうですか」
よっこらせ、と体を正しい重力方向に直して激痛が走る腕を抑えた。
ドクドク血が流れていて既に感覚がなくなり始めている。
これはまずい、と思った僕は上着を抜いてナイフで裂いたそれを腕に巻きつけた。
コートを脱いだ下にはずっしりとした厚みのある防弾チョッキが着込まれていた。
「それでもいったあ・・・・・」
「当たり前だろ。それにしてもセコいこと考えたな、自分だけちゃっかり防具アリとは」
「仕方ないでしょう、僕死にたくないですもん」
へらへら笑うルミアさんに肩を借り手僕は山を降りた。
その後僕はルミアさんに連れられて県外の病院に入院した。
そこで腕やらなにやらの治療を受け、なんと全治半年!という結果になった。
僕は半年間そこに缶詰を食らうことになった。
その間僕もルミアさんもカナタにそのことを話すことはしなかった。
「・・・・・・・・・なんかそれ、せこくないですか?」
僕の計画を話したとき、ツバキちゃんはそんなことを言った。
カナタを追いかける直前、コタツを四人で囲んでいた僕ら。
作戦はこうだった。僕らは必死に殺しあう・・・フリをする。
カナタには武器を渡して僕を殺した気になってもらう。
んで僕は防弾チョッキ・・・こんなんどこで手に入れた・・・を着て、やられたフリ。
あとは佐々木さんとルミアさんがうまいことやってくれると、そういうことだった。
ツバキちゃんだけは納得がいかないのかふてくされた顔をしている。
「カナタさんかわいそうじゃないですかー」
「でもそれくらいしなきゃ、やり直しが聞かないと思うんだ」
「そりゃ・・・・・まあ・・・・・・・・」
「それに僕自身、もう少し色々考える時間がほしい」
僕を殺すことで彼女はいい方向に進めるだろうか?
だとしたらそれを僕は祝福しよう。
だめだったら、また何か考えるさ。
僕らはもう一度離れ離れになってお互いのことを考えるべきだと思う。
そうすることで間違いを正していけると思うから。
それがどれくらい時間がかかるかはわからない。
ただ僕自身が納得のいくだけの答えが見つかったら、
彼女を迎えにいこうと思う。
「だからそれまで、みんなともお別れだ」
何よりもツバキちゃんはそれが納得いかなかったらしい。
最後は泣き出しちゃって、ずいぶんこまった。
半年の入院生活を終えると、僕は佐々木さんの紹介で他県で暮らし始めた。
両親には定期的に連絡を取って、自分が引っ越したことも伝えた。
僕は両親以外の誰にも知られることなく、こっそり引越しに成功した。
いくつかのバイトをこなしながら僕はなんとか生活していた。
そのうちひとつのバイトをずっと続けられるようになった。
それはなにか、僕の中で変化が起こったからなのかもしれない。
「やあ、元気かい?」
そんな僕に佐々木さんはよく会いに来てくれた。
僕らはお互いの事を報告し合って、僕はよくカナタの話を聞いた。
カナタが落ち込んでいるという話を聞くたびにすぐにでも駆けつけたい気持ちでいっぱいになった。
けれどそれはなんだか違う気がした。
僕らはお互いに胸を張って相手を好きだといえる日まで、離れているべきなんだろう。
ちゃんと自分ひとりの力で。
残酷かもしれないけど、厳しいかもしれないけど、それでも答えを出さなければならないから。
カナタやツバキちゃん、ルミアさんや佐々木さんのことを考えながら毎日過ごした。
そうしている内にやっぱり僕はあそこでの生活が幸せだったことに気づいた。
そんな当たり前のことに気づくのにずいぶん時間がかかった。
それからリュウジのことや、殺してしまった名前も知らない誰かのことを考えた。
考えて考えて、考え続けた。
僕のこと。カナタのこと、リュウジのこと。
僕らはただ努力することをためらっていただけにすぎなかった。
三年が経つ頃、僕は意を決しておばあさんのところに向かった。
おばあさんは僕を喜んで歓迎してくれた。
それからおばあさんに、僕は土下座して謝った。
とにかくそうしなきゃ気がすまなかった。それが僕なりのけじめだった。
おばあさんは笑って、それから本気で僕の顔をぶったたいた。
僕は罪滅ぼしとして、おばあさんに毎年会いに行くことを約束させられた。
彼女は警察に通報することもしなかった。
僕はまた彼女に会いに行く。
そうだ、今度はカナタも連れて行こう。
いや、全員でいってもいいだろうな。
きっと楽しいに違いない。
電車に揺られること数時間。僕は懐かしいあの町に戻ってきていた。
桜の花びらが舞い散る駅前を歩いて、懐かしい空気に心を弾ませる。
今見ればその世界の全てが美しく、色鮮やかに感じる。
「・・・・・・・・・あ」
ぼろアパートに帰ってきた僕は腕を組んで立ち尽くしてしまった。
桜の木に手をついて泣いている人がいるからだ。
まあ遠巻きに見ても誰なのかは明らかなんだけど。
それにしてもきれいになったもんだ。
あいつ、なんで泣いてんだか。
これ全部ドッキリでしたーっていったら、あいつ、きっと怒るだろうな。
長い黒髪も、華奢な体も、何もかもが今思えば愛おしい。
涙に濡れたその表情さえ、僕には美しく見える。
さてと。
「カナタ」
どんな事から言うべきだろうか?
まずはネタバレといこうか。
それから、僕がこの三年間過ごしてきたことを話そう。
バイト先のことや、何気ない日常のことを話そう。
そしたら今度は、僕の知らないカナタの三年間について聞こう。
きっと言いたい事も文句もいっくらでもあるだろうから。
そしたら、みんなで一気に騒ごう。
僕たちは間違った。けれど終わってなんかいない。
罪は残る。誰にも許してもらえない。
僕らはその罪を背負って生きていかなくてはならない。
正当化せず自暴自棄にならず逃げ出さず、正面から受け止めていかなくてはならない。
いつか裁かれるその日まで。
だからそうなってしまう前に、彼女に伝えたいことは全部伝えよう。
体中で、言葉で、出来る限りの表現で。
涙に濡れた瞳を開いて彼女が振り返る。
僕は駆け寄って思いっきり抱きしめた。
きょとんとしている彼女の耳元で、僕は囁いた。
「ただいま」
さてと、まずは怒られなきゃな。
手の届かないものなんか、本当はない。
手が届かなくても、僕は手を伸ばすことを諦めたりしない。
久遠の月へ。
何度でも、何度でも。
そうして生きている限り、僕たちが続く限り、
きっとすべては、終わらないのだから。
完結です。
ここまで呼んでくださった方・・・がいるのかどうか微妙なところですがありがとうございました。
かなりダッシュで終わらせたのでかなりねむいです。現在朝の六時ですよ。もうだれか助けてくださいって感じです。明日は休みなんで思いっきり寝ようと思います。
さて、過去と現在がいったりきたり、一人称がかわりまくりで果たして読者置いてきぼりなままどこまで続くのかと思いきや、なんかバトって終わった意味不明な完結ですが、まあ少しでも楽しんでもらえたらそれで幸いです。
はあ、ねむ。
では感想評価イジメなどお待ちしております。
それではさようなら。
と思ってたんですがあまりに起きてみて誤字が多いわなにやらでちょっと追記。
やっべー眠い中やるもんじゃねえな・・・と本気で思った。
ちょっと個人的にこの小説を振り返ってみることにします。
とりあえず『僕』って単語が多すぎる気がする。
誰が〜とかそういうのはあったほうがわかりやすいと思うんだけどちょっとくどいなこれ・・・・何も考えずに書くとこうなります。
俺プロットとか書く才能ないので。
結局作中では三日・・・?四日かな。しか経ってません。
連載期間はたぶんえーと・・・十二日。あ、別になんの関係もなかったねごめんね。
このサイトを見つめて「何か一個でっちあげるか」ととりあえずそれっぽいタイトルだけ考えて、それから中身を作ったくらいの作品でした。
なのでかなりてきとーに作ってある気も・・・いやいや一生懸命やったよ俺!
大体執筆スピードは二時間で()でくくられた話一個が完成するくらい。
四時間くらいヒマがあれば二話分くらい更新してました。
仕事やらなにやらで忙しい日は書けなかったりしたもんですが、まあよくちゃんと完結・・・ちゃんと・・・?したもんだと思う今日この頃です。
このシナリオには特に伏線と呼べるものが存在しません。
ぶっちゃけ「ただ書いた」だけなので、「ただ読む」ことしか出来ないと思います。
結局のところシナリオとしては三年前の部分が一番大きいわけで、現代よりも回想シーンのほうが多くなってたりしてますね。
長期連載ならもうちょっと色々出来たんでしょうが、最初から『まあ電○とかの文庫本くらいの厚さになればいいかなあ・・・』とか思っていたのであっさり終了しました。
ただ人が死んだり殺したりしてるだけの話なので、そんなだらだら続けるもんでもねーだろうなーってかんじで。
そんなわけで完結しました。
アクセスログ見るとまあ、誰も見てなかったってことはないようなので、足しげくこんなどうでもいい作品に通ってくれたことを感謝したいと思います。
ありがとうございました。
小説を書くのは非常にいい暇つぶしになるので、また何か考えたいと思います。
それではいずれお会いしましょう。
それまで見捨てないでね!
や、約束よ!べ、べつに・・・あんたに見てもらいたいわけじゃないんだからっ!!
だめだこんなところでツンデレすると失礼に値するな、うん。
ほいじゃありがとうございました。かしこ。