ちがう 2
※2026/02/24 役者を俳優に改稿しました なにかほかのよい呼び方を思いついて直そう としたまま 思い出せませんでした
ほぼ同時期、同じマンションのことが書かれたと思われる手紙がもう一通、届いていた
「友達がマンションを相続したって言うことだったんですね。なんだか…遠い親戚か何かで相続人がいないからって…本人はそんな人、まるで知らないって言うんですけど…貰えるってんなら貰っておこうって…最初はみんな、羨ましがっていたんです」
そう、当時のことを語ってくれるTさん(仮)は、それまでにもいくつか、奇妙な体験をしてきたのだと言う
「同じ大学の友人の話ですね。就職して何年か経って、もうそろそろってな時にそんな話が舞い込んできたんで…じゃあってことでそれで転職して、そこに住み始めたんです。ところが一か月もしないうちに、部屋が変なんだよ、みんな助けてくれよって言いだして。とにかく一度、来てくれよって…ああ、こいつ、自慢したいんだな。みんなそう思って、冷やかしがてら休日に、遊びに行くことになったんです」
Tさんの友人が相続したというマンション。奇しくもその住所も、もう一通の手紙に書かれていたものと同じだった
「みんなで行くはずだったんですが…予定が合わなかったりなんやりして、結局、当日に行ったのは僕ひとりだけだったんです。本当に後悔しています」
友人の部屋は4階。県境の川沿いに建てられたマンションの外は拓けた河川敷。見晴らしは素晴らしかったと言う
「まあ入ってくれよ…皆来れればよかったのに……」
友人がそれほど落ち込んでいないことに安心したTさん。部屋に入ると…異臭がしたと言う
「部屋に入った時、明らかに煙臭いって言うか、煤臭い臭いがしたんです。きれいなマンションなのに…変だなって。それが一番最初の印象でした」
「きれいなところじゃん」
「まあな…座ってくれよ。いま…コーヒー淹れるから」
「ああ、サンキュ。それにしてもいいよなあ。オレもこんなとこ、住んでみてーよ」
「でも大変なんだぜ? 周りの人たちってのは…ご夫婦とか年行った人たちばっかでよ。若い奴があんま、入ってねーから、なんだかんだ言って、引っ張り出されるんだよ。掃除とか集まりとかさ……」
「ふーん…もしかして今日もだったんじゃねーの?」
「バレたか…友達が来るってんで外してもらったんだよ。なんだか…人付き合いがめんどくさくってよ……」
大学時代、誰とも仲良くなったと言う友人のそんな変化に戸惑いつつも、話に夢中になったTさんたち。いつの間にか煙臭いことも忘れてしまっていた
「じゃ、家具から何から全部ついてたってことか? ここ? こんなでっかいテレビも?」
「そうなんだよ、それだけじゃなくてさ…ほらこれ」
「プロジェクター? そんなのも付いてたのかよ…スゲーな」
部屋にはその他、高級時計や自動車、そういったものも相続の対象であったという。それらを見て回る二人。その部屋も2LDKだった
「何か変わってるってとこなんてねーじゃん」
「昼間っからあるかよ、あったらここ売っぱらって金に換えてるって……」
でもそうできない理由があったそうだ
「なんでも…最低一年間は住まないといけない決まりになっていたんだそうです。だから友人はあんなところでも我慢して住んでいたんです」
「あっ、ひっでー、覚えてろよ」
「やーい…引っかかってやんの」
「てめーこのー…待てっ」
暇を持て余したTさんたちはゲームで遊び、プロジェクターで映画を見て、夕方になるとそのまま酒盛りを始めた
「みんな来ると思って、肉、買ってたんだけど…余っちまうな」
「いいじゃねーか…みんなの分も食っちまおうぜ」
「おう…ビールもまだあっからじゃんじゃん、飲んでくれよ」
久しぶりの友人との食事につい、Tさんも友人も飲み過ぎてしまったのだと言う
「友人が先に酔いつぶれて…ソファでぐったり寝始めたんですね。友人はもともとそんなに酒に強い方じゃなかったんで…みんなが来てくれるからって張り切ってたんでしょうね。それで僕もつぶれちゃったんです」
どれぐらい寝ていたのか? Tさんは火災報知器のサイレンの音で目が覚めた
「なんか煩いなあ…って起きると部屋に煙が漂ってて…うわっ、火事だって…飛び起きたんです」
「………おいっ、起きろっ、火事だ。起きろって」
「えっ? なんでっ? 家か? マジかよ」
慌てて部屋の中を探すも…火事の気配はない。Tさんたちはベランダに出てどこが火元なのか、確かめたのだと言う
「おかしいですよね? 普通なら真っ先に玄関から逃げ出しているのに…でもその時はなんだか、どこなのか確認しないといけないような気がしたんです。部屋に煙が入ってきてるのにですよ? いま考えてもなんでそんなことをしたのか…はっきりわからないんですよ」
「真上だっ、真上の部屋が火事だ」
「嘘だろ? マジかよ」
出火元、それは頭の上の部屋、なにかが割れる音と共に、ベランダから噴き出す炎が見えた
「真上の部屋が火事だったんです。火の粉が降ってきてて…こりゃあヤバいってことになって……」
「逃げるぞ、おい」
「ああ…おいっ、人がいる! 上に…上のベランダに人がいるっ」
「なんだって?」
「すぐ上のベランダに…ひとがもたれかかっていたんです。煙か何かで動けないみたいで…そう思ってると……」
「ダメだっ、そんなことしちゃダメだっ」
「うわぁーっ」
上の階の住人がベランダを乗り越えて飛び降りた
人が目の前を落下していく。それにTさんも友人も迷わず、手を伸ばした
「できないですよね、でもその時はそうしなくちゃって……」
一瞬遅く、その手の先、上の階の住人は落下していった。Tさんたちはベランダから見送るしかなかった
「あと少しってところで…手が届かなくて。そのまま地面に…駐輪場の屋根にぶつかったんです。ものすごい嫌な音がして…最期、悲鳴と言うかうめき声と言うかそんなのが聞こえて…それっきり何の音も聞こえなくなりました」
「おいっ、逃げるぞ、早くしろよっ、Tっ」
「あっ…ああ……」
「なんか悔しくて…でもこっちも危ないってそのまま玄関から外へと飛び出たんです」
ところが……
「外へ出ると…静かなんですよ。警報装置の音もなくて…普通なら火事なら人のざわめきって言うかそう言うのが聞こえてくるはずでしょう? それさえもないんです」
あまりに静かなマンション。その静けさにTさんも友人も不思議に思ったのだと言う
「火事ですよ? 全部燃えちゃうんですよ? それなのに…でもそれはさすがにおかしいってんで、廊下から上の階を覗き見たり、周りを確認しに行ったりして……」
「おいっ? どうなってる?」
「わかんないけど…燃えてない。どこも何ともなってない」
「なんだよそれ……」
慌てて部屋へと帰る二人。先ほどまであった煙もサイレンの音もなにもなかった
「おかしいですよね? 煙もないし…火災報知器も鳴ってないんです。もう消したのかな? そんなこと…そう思ってベランダに出てみたんです…後悔しました」
開けっ放しの窓。そこからベランダへと出る。上を見ても…火事は起きていない
「なんなんだよ…そう思って部屋に帰ろうとして…そしたら不意にベランダの手すりに人がぶら下がっていることに気がついたんです」
真っ暗な中、ベランダの手すりにしがみつく誰かの手。それが徐々に這い上がってきたのだと言う
「いや…まさかって…そんなことないじゃないですか。火事もないし…ついさっき、下に落下していったのを見ちゃったんですよ? ここにいるはずなんてないじゃないですか…でも……」
這い上がって来る真っ黒に焦げた人物。それが手すりを乗り越えると、ベランダへと滑り降りた
「あああああああああああ」
聞こえ来る…うめき声
「おっおいっ、助けなくちゃダメだろう!」
「あ、ああ……」
そう友人に言われて、手助けしようとする友人。しかし、Tさんはそこで踏みとどまった
「いや、おかしいって…そう思ったんです。これなんか違うって、助けちゃいけない奴だって……」
手を伸ばし、助けを求める人物。それに手を貸そうとする友人をTさんは引き留めた。肩をゆすって諭すと…友人の目に生気が戻った
ふたりへと近づいてくる嫌な気配。それに先に友人が腰を抜かした
「うわーっ、わっわっわっ来るなっ、来るなっっ!」
「あああああああああああああああ」
「はあっ、ああ、はっはっはっはっ……」
「はあああああああああああああああああ」
気を失うように伸びる友人。Tさんだけがそこに残された
「でも…僕も腰が抜けちゃって立てないんですよ。呼吸もできなくて…やめてくれ、やめてくれ、やめてくれって心の中で叫んでました」
焦げ臭い臭いが漂う中、這いつくばって来る何者かの爪が擦れて、嫌な音をたてた。徐々にきつくなっていく臭い
「ううううううううううううう」
「その時、思いました。ああ、助けたい、とか思うんじゃなかったって…できるできないじゃなくて…そう思うだけで相手が助けてくれるって、来ちゃうんだって…そう思いました」
ゆっくり、ゆっくり近づいてくる人物。やがて、Tさんの目の前までくると上半身を起こした
白い、目だけが白く残る、髪の長い女性。それが……
「ちがう」
Tさんを見つめて、そう言ったのだという。そこでTさんは気を失った
翌日、ベランダで目を覚ましたTさんはすぐに友人を部屋へと引き入れて、窓を閉めた。窓を閉めるとよくわかったのだと言う。やはり、何かが燃えたような煤臭い臭いが部屋に残っていた
「もう…翌日は最悪でしたね。夢であろうが現実だろうが…もう二度とあんな目には会いたくない、そう思いました」
しかし、その後の友人との会話。そこでTさんはさらにその悪い影響が残っていることを知った
「頭いてー、呑みすぎだぁ、気持ちわりー」
「おう起きたか…大丈夫かよ。それより、昨日のアレ、ヤバかったな」
「アレ? ああ、やっぱりあったのか…そうだろ? なんか一晩中、居間ん中、誰かが歩き回ってただろ? 気持ち悪くてさー…ヤベッ、ほんとに吐きそうだ……」
目覚めた友人は昨夜の一件のことを一切、覚えていなかったのだと言う
「びっくりしました…何言ってんだ? こいつ…ってなりましたね。あんなことあったのに…何も覚えてないなんておかしいじゃないですか。それなのに……。ただずいぶん呑んでたし。そのせいで記憶が飛んだんだな。そう思うことにしました」
早々にマンションを後にしたTさん。二度とこのマンションには行かなかった
「行かなかったって言うより…いけなかったんです。その友人…部屋で倒れているところを発見されて…そのまま入院したんです。でも治りというか…病状が良くならなくて…実家の近くの病院に移されることになったんです。そしてそのまま、音信不通です。スマホに電話しても出ないし、家族に連絡しても要領を得なくて…一度みんなでその病院に見舞いに行こうって言って車で行ったんですよね。そしたら教えてもらった病院にはもういないって…ちょっと前に退院したって言うんです。実家ってところに行ってもいないんですよ…違うんです。家族全員いないんです…近所の人に聞くと、息子の病状が悪いからいいところの病院に連れて行くんだって…そう言っていたそうなんですが…それがどこなのかわからないんです。それ以降は悪いとは思いますが…連絡は取っていません。友人がどうなったのか…心配ですが、正直、関わり合いになりたくないっていう方が大きいですね」
「あとから少しだけ調べてみたんですが…あのマンションってところ。以前、火事を起こして住人が亡くなっているそうなんですね。なんでも…風呂でキャンドルを焚いていて、それで気を失って、フツウなら消えそうなものを、カーテンだか何だかが体に巻き付いてしまった状態で燃えたみたいで…全身火傷で亡くなっているんだそうです。僕が見たのはそれだったのかなって…本当のところはわかんないですけどね」
友人が行方不明になった原因。それはその住人の怨念のせいなのであろうか?
「ちがう」
『○○○○さん死亡
昨夜●●時すぎ、東京都●●区にあるマンションの地下駐車場で、バスから出火と消防に通報があり、消し止めた車内から、同乗していた俳優○○○○さん(当時31歳)が遺体で発見された。当時、マンションでは撮影が行われており、○○さんは休憩をする、としてバスへと向かい、火事に巻き込まれた模様。警察は事故、事件の両面から調べを進める方針』
『○○○○さん不審死の可能性
死亡した○○○○さん(当時31歳)が亡くなった事件で、○○さんは当時、後部座席で座った状態で焼死していたことが判明。○○さんの周囲が最も燃えており、警察は火元は○○さんが座っていた後部座席付近であると断定。争った形跡や抵抗した痕跡がないことから、○○さんは意識がない状態で火事に巻き込まれたとみて、慎重に調べを進めている』
「ちがう」
『無理心中か? 白骨遺体、見つかる
●●県▲▲市■■に住む一家と連絡がつかないと通報があり、警察が駆け付けたところ、居間で5名の遺体を発見した。遺体はどれも白骨化しており、死後、数年が経過、警察は事件、事故の両面から調べを進める方針』
『白骨遺体は住人 不明の住人はどこへ?
●●県▲▲市■■で発見された遺体で、警察はこの家に住む○○さん家族であると発表した。死亡したのは無職○○さん(71)とその妻◯◯さん(68)、性別不明の3人。長男と長女、その娘の3人と連絡がつかなくなっており、死亡したのはこの3人であると見ている。発見の数週間前まで、家族の親戚と名乗る人物たちが家に住み、暮らしていたことが判明。警察はこの人物たちが何らかの事情を知っているものとして、行方を追っている』
「ちがう」
※この話しには元ネタがあります そんないいマンションのことではありません
アパートの一階に住んでいたとき 夜、上からドン、と何かが落下する音がして、それから、助けてくださ~い、火事で~す、助けてくださ~い、って声がしてきた 慌てて窓を開けるとそこに上に住んでいる住人が誰かほかの人の車の屋根をへこませて、ヘタっていた 窓から飛び降りたらしい どうも煙草の不始末で、しかも玄関で出火して、逃げ道が無くなったその人は、咄嗟に窓から、アイキャンフラーイ…ってやったらしい 玄関の鍵が開いてなくて、部屋に備え付けてあった消火器でドアを壊して、周りの人と協力してなんとか火事は鎮火 住人はルーフの上に何とか着地したけど足を骨折、しかもその車ってのが高級車…ベ〇ツで上の人はそのあとも大変なことになったらしい そのときは同人原稿をやっていて…もちろんエロの方でアナログで…それがダメになる方が怖かった 今ではいい思い出です
ちがうってのはそういった意味のことではありません




